【1】 OK わかった、説明も求
アニメに出てくる『主人公』って羨ましいなといつも思う。どうして、主人公達はあんな普通なのに持てるのだろう。見た目が普通な主人公が持てるなら俺のほうがもっと持てるだろう。
カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ
ネットの掲示板に主人公に対する愚痴を書く。書いたところでどうにもならないことはわかっている。しかし、書かないと気が済まない。俺と同じ、引きこもりが主人公となると、「なんで俺は持てないんだ」とか「こいつより俺のほうがイケメンなんですけど」という愚痴が出る
ピロロロロロロロ ピロロロロロロロ
部屋に響き渡るスマホの着信音。スマホ画面を見るとそこには、不明の文字と『0』で並んだ番号があった。
「あぁ?悪戯か?それとも…友達?いや、ないないない」
昔から友達と呼べる奴はいなかったし、親なら不明の文字にはならないはずだ。
俺は、恐る恐る電話に出た。
「・・・・・・・・」
・・・やはり、イタ電か?と思い切ろうとした瞬間
「おはようございます。いい朝ですね。」
と陽気な男の声が聞こえた。
「おはよう…って、まだ12時だぞ。」
「単刀直入に言いましょう。あなたは選ばれました。」
俺のツッコミを無視して、話を進めた。
「選ばれた?」
「そう、選ばれたのです。『異世界の主人公』に」
まさに、開いた口が塞がらない状態にあった。
「主人公?俺が!?いやいやいや、冗談はやめろ。」
異世界の主人公に憧れた。しかし、よくよく考えてみると笑い話にもならない。
「そんなデマはやめろ。大体、どうやって行くっていうんだよ。」
「簡単な話ですよ。『寝ればいいんです。』」
電話の主は寝ればいいというが、12時に寝ろと…
「ちなみに、異世界に行きたくないというのなら6時まで起きていればいい。」
異世界に行きたいか、行きたくないかの選択肢があるならば、迷わず行くを選択するのだが、この時間に寝るのはちょっとあれだ。
「寝れば、そこが異世界なんだろう。」
「さっきからそう言ってますよね。」
いくつか質問をしてみた。
「服装はどうなる?」
「そのまま転送されるので、お好きな服に着替えてからでもいいですよ。」
「異世界に着いたら、ログボ的なものはもらえるのか」
「もらえません」
「俺をもう少し、イケメンに…」
「できません」
その、即答で軽くキレた
「なにも・・・
・・・できねーじゃねーかー!!!!!」
机を力強くたたき怒りを口にした。
「しょうがないですね。異世界へ行くにあたって、願いを一つ叶えましょう」
電話の主は、呆れたように言った。
「それじゃあ、どうしようかな?」
迷う、迷う、迷う。叶えられるのは一つだけ。どんな願いにしよう。
「…そ、それじゃあ 『ロボット・プログラム』ていう能力が欲しい」
「『ロボット・プログラム』とは?」
「えぇー、人をパソコンとかの様に制御できるようにしたい!」
「…っぷ プッハッハッハ、良いでしょう、良いでしょう。」
電話の主は笑い出した。
「よろしい!よろしい!よろしい!強欲なあなたに幸があらんことを!」
そういうと、電話は切れた。
時間を見ると12時半。急いで着替えて寝ることにした。
「・・・きて・・・さい。」
(んん?誰だ?)
「お…てく・・・さい。」
(この声…聞き覚えがある。)
「起きてください。獅子野神 守様」
「っは!なんだなんだ。」
そこは、真っ白な世界。どこを見渡しても白、白、白。最初に目に留まるのは、シルクハットを被った少々幼いようにも見える少年だった。そこを見まわして大体は理解した。
「おはようございます。いい夢は見れましたか?それにしても、着替えてきたはずなのに、そのファッションセンス…ップ」
そいつは俺の服装を見るなり、笑い出した。
「っはっはっはークスクス、なんで、キャラものハハハハハ」
「笑いすぎだ!てか、あんたは何者なんだよ。」
「そうですねー私は、『アルモノ』といいます」
アルモノと名乗ったそいつは俺が反応するよりも早くこの世界のことを説明した。
「この世界は、カナエギという球体のハマヌという場所です。地球のアメリカみたいなもんですね。そしてカナエギは、地球の十倍の大きさです。剣などの武器を持っていても銃刀法違反で捕まるみたいなことはありません。しかし、現実世界と同じようにルールを守って生活をしてください。銃刀法にはならなくても、窃盗は罪になりますゆえ。しかし、一夫多妻制というところは現実とは違いますね。そして…」
「待った、簡潔に頼む!」
俺の脳内は異世界に連れてこられて、その異世界について長々説明されて、頭がついては来なかった。
「現実世界と同じように暮らせば、法律には引っ掛かりません。戦士になるならば、モンスターを倒して金を稼ぎ生活してください。そして、この世界では魔法が使えるため、楽しんでくださいね。あ、そうそう。言い忘れていました。あっちの言葉、文字を理解できるように脳を組み替えましたので…」
アルモノはそんなことを言って、俺に一礼した後、
ボオォォォーン
突然、爆発のように煙が広がり、視界を奪う。だんだん、アルモノの姿が見えなくなった。しかし、声だけは聞こえた。
「もし、困ったことがあるならば 金貨を一枚天空に放ってください。いつでも、何処でも、駆け付けますゆえに…」
煙が薄くなり、視界が開けた。そこで、目に飛び込んだものはさっきまでいた場所とは違う場所。洋風の建物に、二足歩行の動物、やたら耳の長い人間など、いろいろな種族の生き物が歩いていた。そして、『チャリーン』という音を立てて、金貨が一枚転がった。
ここから、俺の新しい異世界生活が始まった。
色々