勝手に話が進んでいた件
竜神族の民に揉みくちゃにされ、現在、そこの村長の家にいる。家は赤系統の色レンガで作られ、三階建ての立派な一軒家だ。
村長は農民から村長に就任した黒龍のおじいさん。纏う空気が暖かく、優しい男性のようだ。
「私の記憶では、ここに来たことはないんだが…?」
「本当に…本当に、覚えておいででない?」
私は一回頷いた。私は彼から何度も問われて少し飽きていた。
「そうなんだね、俺も驚きだよ」
ゼーダはあははと愛想笑いする。村長はゼーダを睨む。
「ゼーダ王子、人ごとのように言わないでいただきたいですなぁ。
…それで、なぜヒュズドラ王国にいらっしゃるはずの姫が、この国に?」
「あぁ、そのことね。
実は、俺が地上に降りた時に彼女は絶対絶命のピンチだったわけ。それで彼女を助けたんだ。
ついでにちょうど良かったから連れてきた。実際、俺は彼女に記憶を取り戻させたくって、この国に招く予定でいたんだ」
ゼーダの言っていることが私にはよくわからない。特に最後の『この国に招く予定でいた』という所だ。現国王から、一切その話はされていない。
「そうでございますか。
それは良かった。そうと決まれば、宴の準備をしなければいけませんな」
「宴…?」
「はい。その名の通り、宴です。
私竜神族はみんなで騒いだり踊ったりするのが好みで、祝いたいときは必ず宴を開いています。
…もちろん、皆もそうであろう?」
キランと村長の目が光る。ゼーダが頷く。周りの人たちも、ゼーダに賛同するかのように頷く。
ゼーダは、ガシッと村長の手を握る。
「おしっ、金の方は俺が出すから、準備を方をよろしく頼むぞ‼︎」
ゼーダは堂々と宣言した。そのお金って、税金からでは…?
大柄な男性が声を上げる。
「はい、お任せください!
我々一同、全力で姫をお迎えします!
おしっ、みんな気合い入れて行くぞぉ‼︎」
「「「おぉぉぉッッ‼︎」」」
なぜかよくわからないが、村全体が一致団結して、祭りの準備に取り掛かる。村長を先頭に家を出て行った。
「…この団結力には勝てない」
「逃げたいのはわかるけど…。諦めな、ルーリ。
俺の国では、決めたことは最後までやり通すのが主義なんだ。元々この国の民は決心を捻じ曲げたりしないタチのやつが多いからな。…まぁ、少しは楽しんで行けよな?」
ゼーダは私の肩をポンポンと叩いて、村長たちの跡を追って行った。そこに残された私はため息を吐いて、彼らを見守るしかできなかった。