街散策
「…さぁ、着いたよ。見てごらん?」
私はゆっくりと目を開ける。そこは活気に満ちていた。黒や灰色、茶色の髪が目立ち、各個人に羽や鱗の尾、さらにツノまでもあった。彼らは【竜神族】。その名の通り、龍や竜の能力を引き継いだ一族である。
周りには、竜神族のみ。あぁ、やはり、ここは竜神族の国なんだ…。けど、私には彼らが、あまり私たち【人族】と変わらない生活をしているように見える。
黒や灰色、茶色の髪を持つ彼らは、一般市民なのだろうか?と疑問に思い、ゼーダに聞いた。
「彼らは一般市民なのか?」
「そうだよ、よく分かったね。
他にも紫、青、緑、赤、黄色、そして俺みたいな金の髪を持つ奴らがいるんだ。
まぁ、それは後で話せばいいかな?」
私の予想は当たっていた。
…というか。話されてる間、ずっとお姫様抱っこ状態だったことを忘れていた。
「…さっさと降ろしてくれないか?」
「ん、あぁ、ごめんごめん!
今下ろすよ、っと…」
彼はそっと私を降ろす。すると、周りの竜神族の人々が私たちの周りに、ドッと集まって来た。私のような人族よりも、やはり竜神族の方が力が強い。揉みくちゃにされそうになる。
「あれ、ゼーダ王子?」「本当っ⁈」「ゼーダ王子だ‼︎」「きゃー、王子ぃ‼︎」「おかえりなさいませ、王子‼︎」
「あ…あぁ、ただいま、みんな」
「王子、その人族の娘は誰っすか?」
ギロリと1人の男が私を睨んで来た。髪と瞳が黒色で、黒い鱗の尻尾が1本とツノが2本生えている。もしかして、私、消される…?
そんな心配を物ともせず、ゼーダは笑顔で堂々と宣言する。
「彼女は俺の妻になる子だよ!」
…え、何言ってるのこいつ?そんな話聞いてないんだけど⁉︎
私が周りの竜神族に否定する前に、ゼーダの言葉を聞いた竜神族の男が、ガシッと私の両肩を掴む。
「ということは、あの【戦の舞姫】か、あんた?」
「あ、あぁ。…そうだ」
返事をすると、彼はボロボロと涙を流し始めた。突然泣き出したので驚く。状況整理が追いつかない。
「そうか…、そうか。
おかえりなさい。よく、帰って来たね」
「…えッ、ちょっと待て‼︎
おかえりなさいってどういうことだ…ですかッ⁈」
周りにいた竜神族の者たちも『おかえりなさい』と言って涙を流す。
外側にいるゼーダに助けを求めるが、親指を上に立てて、グッとポーズをする。
『頑張れ』ってか?ふざけんな、さっさと助けろっ!
結局私は、彼らに揉みくちゃにされるしか助かる方法はなかった。