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目玉は蜘蛛に抱かれて  作者: 西希
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3

(凹んでいても仕方ないか・・・一つ階層上がったけどまだ中層のようだし、進もうか)


ふよふよふよふよ

血なまぐさいこの空間は匂いの分からない目玉にしても長く滞在して気分の良いものではない。

となれば早々に移動するべきだろう


(血の匂いに惹かれて別の魔物が寄ってきたりしても困るしねー)


(そういや、下からブレスで吹き飛ばされたけど特に怪我はないな?)


普通に考えれば水圧なりで目玉もぺしゃんこか、パンッと破裂していてもおかしくはない

というかソレが普通であろう。


(目玉の体自体が丈夫なのか、称号の健康体のせいなのか・・・調べたい、けど痛いのは嫌だし・・・まぁ、そのうち分かるか)


実際のところ、それら両方が原因なのだが、詳しくは今後瀕死になった際説明役の誰かが教えてくれるであろう


(薄暗い、なんというか普通の洞窟だな)


ふよふよ移動するこの空間は至って普通の洞窟のようであまりファンタジー感はない


(もっと壁から光る水晶が生えてるとか、光る苔が点々と道を照らすとかそういうのが見たかったな)


ファンタジー感が薄い

あるのは、ちょっとおどろおどろしい色をしたキノコだとか

浮かぶ目玉の下を走り抜けていく真っ赤なネズミだとか

そのネズミより大きいミミズだとか


なんにしろ今のところ中途半端に空中移動している目玉に害を及ぼす生き物には出会っていない。


(こう、魔物らしい魔物に出会わないとなるとダンジョンの中層って大したことないのかな?でもいっこした階層にはあのでっかい水竜もいたし・・・?)


はじめはただふよふよと移動していたがいつまで経っても変わらぬ景色にも飽きてくる

もっとも景色が変わらないのは、目玉の移動速度が遅すぎるためであるわけだが


(うーむ、新しい魔眼試そうか、ちょうどあっちこっちにネズミもいるしマウス実験だ)


回復は、傷を負った相手じゃないと試せない

しかし目玉には傷を負わせることは出来ない

回復は断念


となれば試すべきは麻痺であろう


(どうやって使うのだろうか、鑑定と同じで見つめる?)


とりあえず下にいるネズミを見つめてみる


種族:レッドマウス

危険度:C


ステータスが表示されるだけである


(なんか、危険度項目が増えたな・・・危険度の判定基準はわからないしCがどの程度なのかも分からないから全く使えない情報な気もするけど)


見つめるだけではだめ

ならば次は念じてみる


(麻痺―麻痺―痺れろー痺れろーしびしびー)


念じながら見つめる

視線の先にいた5匹のレッドマウスはビクッと静電気に触れたような反応をしたのちに

全員が倒れ激しくピクリピクリと痙攣しながら動かなくなる


(おぉ、できたできた。視界の中にいるもの全部に効くのか?個別には使えない?)


目玉は麻痺させたネズミ一行の上を通り過ぎて次なる実験体を探す

無慈悲?いやだって解除の仕方わからないし


上を通り過ぎたあたりで麻痺したネズミ一向にはミミズが集ってきてたよ

どうやらこの世界のミミズは食欲旺盛なようだ


その後試したところ視界にさえ入っていれば効果は個別にかけられることが確認できた

サポート役なのに視界全部に無条件だったら味方を全滅させかねないから良かったよ


3パーティほどネズミを麻痺させたあたりだろうか


ヒタヒタビチャビチャと前方から湿り気を帯びた足音が近づいてくる


(わー・・ついにネズミとミミズ以外が来そう。足音的に二足歩行だし不味いな・・・)


二足歩行の生き物なら確実に空中を漂う目玉に攻撃できるし移動速度も早いだろう


いまいる通路は一本道

引き返したり隠れたりするにも目玉の速度では絶対に間に合わない

エンカウントは避けられない


近づく足音

諦める目玉


目玉の視界に現れた二足歩行の生き物は、小学生くらいの体に頭は魚、手には粗末な槍といった昔のサイエンス雑誌のイラストに載っていそう魚人


種族:マーマン

危険度:C


(うっわ、きっもい)


さすがの目玉も少し引く見た目である


「グッ?グゲゲ?」


なんだお前はとでも言いたそうな鳴き声をかけてくる

見た目が弱そうなので油断しているのだろう、槍を構えたりはしていない


(愚かなり、見た目で敵を侮るとは。食らうが良い我が必殺の麻痺ビームを!)


殺られる前に殺る(殺れない)

問答無用の麻痺眼ビーム(エフェクトなし)


「グゲッ!?ゲ、ゲゲゲゲ」


マーマンもネズミと同じ反応の後前のめりで倒れていく


(うむうむ、ネズミ以外にも効くな。よし、撤退)


小刻みに痙攣する魚人の上を通り過ぎる


(これ麻痺が解けたら追ってくるよな・・・どうかずっと麻痺しててください)


とりあえず目玉が魚人からやっと見えなくなる距離になっても追いかけてくる様子はない

魚人のいた方から咀嚼する音が聞こえる気もしなくはないが結果オーライ


(麻痺の効果時間の確認も可及的速やかに行う必要があるな・・・)


ダンジョン内は弱肉強食

いかに強い魔物であっても好きあらば格下に殺される世紀末である

そんなダンジョン内に麻痺して動かなくなった生き物がいれば効果時間確認する前に他の生き物に食われるわけだが


(そのうち確認しよ)


お気楽な目玉は気づかない


その後も何回かマーマンに出会ったけれど出会い頭に問答無用の麻痺眼ビームを叩きつけて目玉は進む


どれくらい進んだだろうか

目玉には空腹も疲労もないのか、無心で休憩を挟まず進むが

それでもおなじみの移動速度である

実際距離的にはそんなに進んでいないのかもしれないが


体感では半日ほど移動を続けていた


変わらぬ景色に本格的に無心になり始めた頃

目玉の進む先に今までにない気配を感じられた


(なんか、争ってる?結構な数いそうだし、喧嘩中かな)


ここは相も変わらず一本道

戻っても分岐はない


(進むしかないかーやだなぁー)


進んだ先には少し開けた空間

息はしないが空間が広くなったことで目玉の息苦しさは少し解消された


そんな心地よい開放感を味わうことが出来たのは一瞬であった。


(マーマンとあれは、蜘蛛?)


視界の先には8匹のマーマンに囲まれた

満身創痍の大きな蜘蛛


目玉が初めて出会った蜘蛛は半分くらいマーマンに齧られていました。


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