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(うーむ、ダンジョンなのも問題だけど、もっと不味いのは中層なことか)
普通に考えてダンジョンは下層に行けばいくだけ魔物の強さも変わるだろう
中層ということは冒険もなかば、そこそこ強くて手強い魔物もいるはずだし中ボス的なもののいるだろう。
それに対して我羽つき目玉には攻撃手段無し
レベル的には1以下である。
ゴブリンやスライムにすら勝てる気はしない。
(それにここ・・・無駄に広いし、湖ってなんかでかい魔物いそう)
悪い妄想は時に現実となる。
世間ではフラグとも言われる。
(フラグ回収は勘弁だからな・・・ダンジョンと言うからには上か下に行く通路もあるだろ、とりあえず上に行こ。下はダメ。目指すは上)
そうと決まればいち早くここを立ち去ろう。
(さて・・・うーむやっぱ結構広いわここ)
上か下かどちらに続いてるかは分からないが通路はある
しかし、今の位置からはだいぶ距離があるようだ
はぁ、と外に出ることはないため息を心の中で吐いてから出口に向かう
ふわふわふわと、ゆっくり移動する
(・・・おっそ!移動おっそ!)
力を入れてもふわふわと漂うようにしか移動しない目玉
中頃を過ぎた頃だろうか、フラグの回収は唐突に現れる
ゴゴゴッと低く響く振動
浮いていても目玉が振動する
(oh・・・来てしまったか・・・移動のおっそい我が目玉が恨めしい)
この速度では逃げることは不可能だろう
なんせ普通に歩くより遅いのだから
(さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。一体何が来るんだい?)
諦めの境地である
ピピピッと旋回して湖を眺める
近づく振動
(来るか来るか!、せっかくだし良く見てやるぞ!!)
この状況を楽しみ始めているのだからこの目玉救いようがない
水面が盛り上がり、なにかが地上に姿を現す
しかし、目玉の視界に入ってきたのはファンタジー溢れる魔物ではなく
壁のように迫ってくる溢れんばかりの水
(あぁ・・・そりゃ大きな魔物勢い良く出てくれば津波起こるよね・・・)
しかも目玉の視点は高くない
大きな魔物の姿を確認することもなく目玉は水に流されていく
(息がッ!お、溺れ・・・・ん?そういや口も鼻もないし・・・呼吸・・・してたっけ?)
水に流されながらも考えて見れば、口も鼻もないのだ呼吸のしようがない
(人外バンザイ、ありがとう目玉)
ついでにこの目玉、ゴーグルなしでも水の中がよく見える
(見えるけど!ちょくちょく当たる石が非常に痛い!すごく痛い!)
それでも気絶もせずすごく痛いで留まっているのは超銀河級健康体のおかげか
(コレ、水のなかじゃ全く動けない・・・)
浮かぶのがやっとな小さな羽である
さもありなん
(んー?これ水位上がってるな?)
最初は流されるだけであったが勢いが弱まっても水が引く気配がない
それどころかどんどん天井に近づいている気すらしてくる
(これが日常かどうかは知らないけど、どうりであの広い空間にも関わらず地上に何もいなかったわけだ)
もしも定期的に空間が水で満たされるのであれば普通の陸上生物は生活できないだろう
(水場で地上に生き物の危険はない・・・視界も開けている・・・性格の悪い罠だなコレ)
きっと冒険者的な人たちがいたのならここでキャンプするだろう
油断してるところへの水攻め
冒険者ら普通の人間は全滅
そんなことをつらつらと考えていると目線の先、水の奥の方にこの惨事を起こしたであろうシルエットが近づいてくるのに気がついた
とはいえ目玉にやれることは逃げることでも迎撃することでもなく
無表情にあぁ、来るなぁと思いながら見ることしか出来ない
種族:水竜
称号:湖の主
大きく長い顎にゴツゴツした皮膚
短い手足
ワニである
とても大きなワニである。
(ふ、ふおぉぉぉぉぉぉ!かっちょいいぃ!なんだこれ!)
爬虫類は男のロマンである
しかもそのロマンの塊は大型トラックほどの大きさなのだ
目玉が興奮するのも致し方あるまい
ガバリと縦に開いた顎は、漂う小さな目玉の存在など気づくこともなく
天井に向けて勢いよくブレスを放つ
(癇癪だろうか・・・なんにしろ迷惑だな)
ワニの口から放たれたブレスは天井付近を漂っていた目玉を巻き込んで天井を吹き飛ばす
湧いた温泉のごとく意図せず目玉は上の階層に無事?辿りつくことに成功したのである
(い、痛いけど死んでない・・・が、我慢我慢)
無理やり上の階層に押し上げられた目玉は体中の痛みにびったんびったんと
打ち上げられた魚のように成りながら回復するのを待った
癇癪を起こした張本人はブレスを放って満足したのかそれ以上の行動は起こさなかったようだ
ほんとそのまま一緒に上に来なくてよかった
しばらくびったんびったんした後痛みはスーッと消えていった
(便利だなこの目玉・・・ありがとう水竜、かっこよかったよ、もう会いたくはないけど)
気を取り直して少し浮く
周りを見渡せばソレはもう地獄絵図であった
(oh・・・スプラッタ・・・血の赤は鮮やかなのな・・・)
もとがなんであったのかわからない肉片祭り
地面は真っ赤に染まり内臓なのか肉片なのか骨格なのか甲殻なのか
もはや判別できない塊がびっちり壁に張り付いてぽとりぽとりと重力に従って落ちてくる
(嗅覚なくてよかった。穴から離れよう)
拡大したら困るので上がってきた穴から離れるように周りを探索していく
(お?おぉ?なんだなんだなんだ?)
壁に張り付いたひとつの塊に近づいた時である
目玉が近寄ると塊からすうっと淡く光が漏れ出し目玉に吸収されていく
(んー、なんかわからんけどちょっと体が暖かくなったな。こう、じんわりと)
目玉は近場の別の塊に近づく
するとまたしても光が漏れ出し目玉に吸収されていく
5つほどの塊から光を吸収した頃にゾクリとないはずの背筋が震えたような感覚を感じた。
(うぉぉおう・・・ぞくぞくした。なんだなんだ?)
首がないので自分を確認出来ないが、確認しようとすると目の前にステータスの文字だけが浮かび上がってくる
名前:
種族:羽つき目玉
称号:異世界から来た目玉
魔眼所有者(鑑定、麻痺)
超銀河級健康体
(あ、魔眼増えたわ)
光が経験値と呼ばれるものに近しいものであることを目玉は理解した
(そうとわかれば、話は早い)
話は早いが動きは遅い
目玉はふよふよと片っ端から肉片の塊に近づいていく
(一通り終わったかな?近づいても光の出ない塊も多かったな・・・)
気の長くなるような時間をかけて回りきった目玉
結果ステータスはこのように変わった
名前:
種族:羽つき目玉
称号:異世界から来た目玉
魔眼所有者(鑑定、麻痺、回復)
超銀河級健康体
(うわぁ一つしか変わらない。俺TUEEものってこの手の最初のチュートリアルで一気に強くなるんじゃないのか?しかも、増えた魔眼が麻痺と回復って後衛のサポート要員かな?攻撃手段ないんですけど)
哀れな目玉である。




