表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目玉は蜘蛛に抱かれて  作者: 西希
1/4

1

青年は視覚が弱かった。


瓶底のようなメガネをしてやっと薄ぼんやりと世界が見え、それでも色の判別はほとんど出来なかった。

そんな色のないすりガラスの世界で生きる青年は、そんな世界だからこそ、

声豚だった。


視覚のない彼にとって見た目など二の次。

聴覚からの情報こそが全てであった。


声優の声で目覚め、声優の声を聞きながら眠る。


それだけが至福であり、人生であった。


今日も青年は声優の声に包まれながら一日を終える。


明日は目の調子が良くいつもより良く見えることを祈って。




んあ・・・音が止まってる・・・パソコン落ちたかな・・・


目を覚ましてもささやき続けているはずの音がない違和感で目が覚める。


くっっそ・・・えらく今日は眩しい・・・目が痛いな・・・


入ってくる光の眩しさに目を開けきることができない。

こんなことはめったにない。

むしろ初めての経験である。


目覚めたてでうまく働かない頭も呼吸を繰り返す度にクリアと成り、違和感はどんどん膨らんでいく。


光が分かる?目が見えてる?あれ?


少しずつ開いていく瞼。


モノクロのすりガラスしか映さなかった瞳に写った初めての風景は

見知った天井でもなければそもそも家ですらない


ど、どこだよここ・・・・


広がるのは薄ぼんやりと光る湖と上から360℃囲まれている土の壁

まるで地底湖のような風景


綺麗だ


その感情だけが次から次へと彼を埋め尽くし、次の考えを始めるまで1時間ほどの時間を有した。


さて・・・というかあれ?体動かない?


たっぷりと風景に見とれた後、自分の視点がえらく低いことに気づいた。

横になっているからなのかとも思ったがどうやら違うようだ。


体が動かない。

というよりもあるはずの四肢を動かせる気がしない。


まるで最初からそんなものがないように

動かし方がわからない


こんの!こんんんの!!


どうにかして動こうとアチラコチラに適当に力を入れ少しずつ跳ねるように、

転がるようにしながら湖の方へ近づいていく


ぐんぬっ・・・はぁはぁ・・なにがどうなっているんだよ・・・


体を動かすことはこんなにも大変だっただろうか


そんな微妙に的はずれな考えを浮かべながらやっとのことで水面に自分の姿を移して、そこで初めて自身に起きている異常に気づくのだから、彼の精神はなかなか異質なのであろう。


目玉・・・何だこれ・・・目玉に羽・・・・おいおい


水面に写ったのは青年男性の顔でも体でもなく


雫を逆さまにした形

大きさはバスケットボール程だろう

その左右に申し訳程度についている蝙蝠にも似た小さな羽

そしてそのシルエットの9割近くを占める大きな一つの目玉


なんというか、小物の悪魔感がにじみ出る見た目である。

人外、化物、魔物そういった類であろう。


(あぁ・・・これは夢かでなければこの前ラジオで言っていた今話題の異世界転生か・・・

それにしてもこの手の状況になるには、神様の手違いとかで死んで、真っ白な世界で転生の有無を聞かれてついでにチートとか女神様とかもらって俺TUEEEするのではないのか・・・?


神様どころか、死んでもいないはずなのだが・・・)


いつもどおり自分の部屋で、声優ラジオ垂れ流しながらニヤニヤして眠っただけのはず

突発的に死ぬような持病も無いはずだし、寝てる間に殺されでもしたのだろうか


(まぁ、それならそれで痛みもなくサクッとやってくれたようだしいいか)


やはり彼の精神はすこしおかしいようだ


(それより見ればみるほど目玉だ。しかし目玉とは、神様だかなんだかわからないけどなかなか良い趣向だ。)


口も無ければ耳も鼻もない。瞳のみ。


それでも水の音は聞こえるのはご都合主義だろうか

もっとも声は出せないようであるが


まぁ人間でないことは置いておこう。

人間であることにこだわりはないし。

むしろいいではないか人外


目が見えることが重要なのである


(うーむ、見えるのはいいけど動けない・・・もしも異世界転生なら魔物的なものもいるだろうし、そもそも自分が魔物だし。動かないと・・・)


足も手もないが羽はある

ならやることは一つ


(動けー動けー羽ばたけー、お前は飛べるお前は飛べる)


水面からこちらを覗く羽つき目玉に囁くように見つめ返しながら暗示をかける。


(お、いいよいいよ、動いてきたよ、いけるいけるよぉー)


最初は痙攣のような動きであったがその動きは少しずつ大きくなっていく


(よしよしよしよし・・・せーので行くぞ?せーのっ!)


気合とともに力を込める。

羽と、目玉に

その2つしか力を入れる部分がないわけで

もしも効果音があったらまさしくカッッ!といった音だろう


大きく動く羽

少し浮く体

見開かれる瞳

視界に被るように出た文字



名前:

種族:羽つき目玉


称号:異世界から来た目玉

   魔眼所有者(鑑定)

   超銀河級健康体



(おぉう・・・浮けたけどついでになんか出たわ)

とりあえずこの微妙に浮く体勢は維持できそうだ。

改めて全体図を見るとなんとも弱そうで笑ってしまう。


文字は読める


人間の頃も、きっと叩きつけても割れないのではないかというレベルの瓶底眼鏡を装備することでなんとか字は判別できたのだ

とはいえ、目を凝らさないと見えないので小説などを読むことはできなかったが

動画サイトのタイトルを読むくらいはなんとか出来ていたのだ


(これは噂のステータス画面か・・・ゲームやったことないから初めて見たが・・・、情報量ってこんなものなのか・・・)


とりあえず少ないながらも分かる部分だけを見てみる。

じっと文字を見つめてるとそれぞれの詳しい説明が浮き上がってきた


(なんというご都合主義。ありがとうございます。)


(名前は・・・まぁ空白だしいいとして、種族は羽つき目玉って・・・ゴブリンとかオークとかそういったやつじゃないの・・・これ見た目の感想やん・・・。称号もなんかひどいな適当というかなんというか・・・)


‘異世界から来た目玉’

進化・成長の可能性大

「たくさん殺して頑張って成長しましょう」


’魔眼所有者’

各種様々な魔眼所有可能

現在の所有魔眼

鑑定眼

「たくさん殺して頑張って集めましょう」


‘超銀河級健康体’

各種耐性特大

回復力特大

「痛くても我慢すれば治ります。頑張りましょう」


(誰のコメントなんだよ・・・語彙弱すぎだろ・・・)


とりあえず魔物かなにかを殺すなりすれば成長して、魔眼を手に入れることが出来るようだ

それにこのコメントしてる誰かはとりあえず殺しを勧めたいらしい


(人間の頃ならためらうけど、魔物だしな・・・うむ、せっかくなら俺TUEEしたいしな)


やることは決まった

自分のこともだいたい把握した


(んで、ここはどこよ・・・)


ピピピピピッと細かく羽を動かしながら周りを見渡していく


ダンジョン:魔素の迷宮(中層)


(説明文出たわ、便利だなコレ。もっと詳しい説明かもん)


ぐぬぬぬと眼力を込めるもののこれ以上の情報は出てこないようだ


(訂正、あんま使えないわこれ)


熱い手のひら返しである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ