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孔子人物論

作者: スー・ミン

十八史略全編を読破し、やはり中国の歴史は面白いと思った

春秋戦国時代の中国の国というか、文化性、システムは現代に似たものも感じた


やはり一番の見所は、孔子の登場

乱世の真っ只中で、生真面目に仕事をして、信念に生きる孔子

その孔子を師と仰ぎ慕う弟子たちの生き様は、長い歴史の中でも色濃い印象を残してくれる

孔子の説く「仁」は、孔子の一貫した人生観そのものである


当時の中国には既に神々の神話が伝えられていたが、孔子は目に見えぬ森羅万象の奥に潜む巨大な時のうねり、力のようなものを「神」に位置つけず、「天」と称した

この孔子の「天」という価値観は、中国の宇宙観の根底のようなものに感じる

彼は神々の世界ではなく、遠く空の彼方から働きかけるなにかを、天と定めた

人間の人知に及ばない力、宇宙の流れ

それを感じ取っていた孔子の人生は、面白い


長い政治生活、苦難の放浪の先に、孔子は七十を過ぎた

心身は衰え、世界を達観していた孔子は、残りの人生をどう過ごすか悩んでいた

そんな時、自然に囲まれた森の中である隠者(世捨て人)と出逢う


隠者は言った

「俗世間でいくら正しいことを行っても、人の力は巨大な時のうねりに飲み込まれ、儚く消えていくもの

そんなことに人生を費やすよりも、あるがまま、本来の動物的人間としての生を歩むことが、本当に正しい人生であり、あるべき姿とは思わんかね」


自然と共に生き、自然と共に死す

隠者の言葉はある種の真理性を感じてならなかった

孔子はその言葉に惹かれて、一年ほど隠者のもとで心身を癒していく

このまま、私は自然と一体化して死んでいく

孔子の宇宙観、「天命」の価値観はこの時に完成したのかもしれない

しかし、孔子は隠者のもとを離れる決意をする

引き止めようとする隠者に孔子はこういった


「俗世間から離れたこの一年は確かに安らかなものであった

だが、やはり私には動物のようにも、自然と共に死んでいくこともできない

私は例え、俗世間と理想の狭間で苦しむことにあろうとも、人々と共に泣き、人々と共に怒り、人々と共に苦しみ、人々と共に笑い合っていたい

私は、人間を愛している

私は人間として、人々と共に生きて死んでいきたいのだ」


孔子の一貫した人生観

「仁」とは、人々の中へ、人間の中へという考え方だった

人間への信頼、人間への愛情

彼はどこまでも、人間の中で生きる偉大な人間だった

孔子は隠者と別れ、人生の最終章を五経の編纂と、教育に注いだ

人間教育と学問の樹立が、彼の理想の集大成だったのだ

一説には、この隠者とは自然主義の道教の始祖、老子であったという

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