付録・番外編「孤独の城砦グルメ飯」 序
飽く迄番外編です。
軽い感じでお読みクダサイ。
人智の外なる荒野において、
人に仇なす異形の者共と。
日々夜な夜なに切り結ぶ城砦騎士団の
頭脳というべき、中央城砦本城中央塔。
その中央塔に併設された叡智の殿堂。
すなわち付属参謀部では、遍く森羅万象を
数値を以て再定義する特殊な才「軍師の目」
を有する異数の賢者「城砦軍師」らにより
昼夜を問わず様々な事象の研究が
おこなわれている。
結果得られた様々の数値は、とかく娯楽に
乏しい城砦での暮らしを少しでも彩る一助に
なればと公式ランキングという形で定期的に
発表されている。
ここで好まれるのは戦向きの数値ではなく
人同士の関係性に関わる事柄である事が多い。
例えばイケメンランキングだの上司にしたい
ランキングだの。理と知で全てを割り切り
断じて憚らぬ城砦軍師的には、まるで
益体もない内容ほど好評だ。
およそ人の嗜好は不確かに過ぎ、これに
優劣を付けるなぞ無意味の窮みではある。
だが、かくいう軍師にだって好みはあるし
たまにはどこの誰がどうしただの、えー
うっそやだほんとに? だなどと、下世話
なネタに耽りたい、そんな時もないではない。
特におよそ城砦騎士団構成員全てにとり
最大の娯楽の一つである「食」。これは
決して外せないマストなネタである。
ならばこれについて持てる才の全てを発揮し
分析し広報して感興の具とする。この事に
は強い使命感すら感じるものだ。
要するに、端的に、一言で言うなら、
うまいものが食べたいという事である。
幸い城砦騎士団は西方諸国連合による全面的な
支援による実に潤沢な物資の提供を受けており
糧秣に関しては平原一の環境にある。
また飢狼どもの胃袋を満たし居眠り猫に変えて
しまうほどの魔術的な料理の腕を有する超一流
の職人らが平原全土より多数招聘され、日々
各所の厨房で腕を振るいまくっているのだ。
つまり中央城砦は平原の人の世の食の縮図。
世界の果てに孤独に佇む古今東西悲喜交々の
美食の殿堂であるともいえよう。
なればこれらの全てを網羅的に分析し
紹介する事は城砦騎士団のみならず平原全土の
人々の日々の暮らしを豊かにする一大事業と
成り得よう。所謂一つのボナペティーなのだ。
大層前置きが長くなってしまった事については
それが軍師というものなのでご勘弁頂きたい。
では満を持して始めるとしよう。その名も
~☆~ 孤独の城砦グルメ飯 ~☆~
初回はルール説明だ。何事にもルールは必要だ。
人に守らせ自分はズルする快感は甘美である。
いや今のは聞かなかった事にして頂きたい。
とまれルールというか方針だ。
本企画は中央城砦の各所に設けられた厨房の
供する様々な料理を、その施設の特色やその
厨房ならではの個性を交えて実食と供に紹介
するのを主眼とする。
筆者の拠点が中央塔付属参謀部であるため
まずはここから始めて然るべきだがここは
敢えて否やを申したい。理由は明白。
筆者が食べ飽きているからだ。
まだ見ぬ美食のためならば、七つの海を
股に掛け世界の果てまで馳せ参じる。
それが人というものだ。
よってここは遠方から順に回り、ここを
最後にするのがローテーションとして正しい。
そうに決まっているのである。ちなみに
二の丸とビフレストは遠過ぎでノーカンである。
ゆえに手始めは人でありながら人でなし。
いや悪党という意味ではなくガタイ的に最早
人の域を超越しつつある超高密度筋肉生命体。
マッスルエリート、マッチョレギオンたる
第一戦隊の拠点とする城砦内郭北東区画に
赴いて、彼らの底なしの胃袋を日夜を問わず
満たし続ける超弩級巨大食堂「ヴァルハラ」
を取材、食い倒れる事とする。
噂ではヴァルハラにおける一食とは並の
人の子の丸一日分の食事量より多いという。
しかも彼らはそれを日に四度、おかわりも
交え喰らうのだという。
質はともかく量的に、筆者の胃袋が
耐え切れそうにない。食い倒れどころか
そのまま食材にされる可能性すらあろう。
新連載が二回目で打ち切りとなってしまう
リスクを避けるには、適宜矢面に立たせる
ゲストを呼んでおくのが良いだろう。
折角なので恒例としよう。
よってゆく先々の食堂では現地に縁のある
著名人をお招きし、その施設の魅力などを
併せて伺う方針とする。
とまれかくまれそんな感じで
城砦何でもランキング番外企画。
「孤独の城砦グルメ飯」。始まり始まり。




