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サイアスの千日物語  作者: Iz
第一楽章 荒野の学び舎
273/1317

サイアスの千日物語 三十九日目 その七

「さて、6以上の技能値は

 これまでとは一線を画するものとなっています。

 平原でこれ以上の数値に達するものは極稀であり、一部の才人か

 老境に至るまでひたすら修行を続けた者か、あるいは

 修羅場を何度も潜り抜けた猛者のみであるとされています。

 

 ただし魔や眷属という圧倒的な存在と渡り合う荒野において

 技能を磨いた城砦兵士や騎士には、6以上に至る例も多く、

 何らかの技能で6や7に達する者は数百名に上っています。

 各戦隊において特殊部隊や精鋭部隊に所属する猛者であれば、

 該当技能はまずこの値に達しています。


 平原と荒野との間での、こうした違いをもたらす最たる要因は

 得られる経験の質です。質に限界がある平原では、

 5から6に進むのに必要な経験を得るには

 それこそ10年単位の膨大な期間をかけ専心する必要がありますが、

 荒野ではものの10戦も勝ち抜けば同様の経験を得られるからです。

 もっとも、無事にその10戦を勝ち抜けるかは、

 また別の問題ではありますが。


 ともあれ技能値6というのは、平原であれば道場主であったり

 訓練機関の教官であったりするような、場合によっては流派

 を興起せしめる程の水準を表します。概ね村や町に

 一人居るか居ないかといったところです」



「続いて技能値7ですが、これは既にお話したように、

 その分野において話す際、まず名前が挙がる程の名人の域

 を指しています。戦の盛んな東方諸国などでは時折

『槍の○○』などと言った呼称で呼ばれる者が現れますが、

 そうした異名の付く水準が技能値7だと考えるといいでしょう。

 

 平原においては都市、または国家に一人居るか居ないか

 といった王家や軍の指南役級の稀有な腕前ではありますが、

 平原中から人の集まる当城砦においてはそれなりの数がおり、

 例えば第二戦隊の抜刀隊のような、技能値7を超えることが

 入隊条件となっている部隊も存在します。


 次いで技能値8ですが、その道を究めた達人と呼ばれる境地を

 指しており、一時代を代表する存在として歴史に名を残す

 水準であると言えます。平原ではほぼ皆無であり、

 当城砦においては特定の技能の専門家が稀にこの水準に

 至っている他、騎士長級は皆、少なくとも得意技能が

 この値に達しています。

 

 当代において平原でこの値に達している人物としては、

 馬術と指揮の二つにおいて技能値8を持つ、カエリア王国国王

 アルノーグ・カエリア陛下その人の名が広く世に知られています」



「次に技能値9ですが、ここからは非常の領域です。

 元々センスや素養がある者が、ひたすら修練を重ねて到達できる

 可能性の世界であり、天才のみが努力して辿り着ける神仙の境地です。

 

 ほぼ例外なく何等かの異名を持っており、広く内外に知られ、

 場合によっては碑文に記され詩に吟じられ、英雄物語の

 主人公として、後世に名を残すことすらあります。

 

 当城砦においてはこの神域に達した者がわずかながら実在し、

 そのうち実に2名がサイアスさんの配下におられます。

 また引退して今は平原に居られるサイアスさんの伯父君、

 「閃剣」グラドゥス様は、城砦騎士としての現役時代に

 剣術と回避が共に9であったとの記録が残っていますね。

 

 時代を超えて称賛される程の神技の使い手たる技能値9

 ではありますが、同様に一時代に数名しか居ない

 騎士長級の方であれば、この数値を持つことも珍しくありません。

 しかしながら、おそるべきことに当代の騎士長たる方々は

 さらに上をいっています」



「さて、いよいよ技能値10です。

 これは言わば『人智の境界』を意味します。

 森羅万象を数値化し観測する軍師の目を経た評価において、

 その極限であると見なされる領域なのです。

 あくまで理論上の存在であり、もとより実在を

 前提とした評価ではないのですが、当城砦には

 特定技能がこの値に達している、すなわち我々にとって

 認識の限界値にまでその技を究められた方が

 数名おられます。その名を技能を挙げていくと、

 第一戦隊長オッピドゥス・マグナラウタス閣下の盾技能、

 第三戦隊長クラニール・ブーク閣下の弓技能、

 第四戦隊副長ベオルク閣下の魔剣技能、

 第四戦隊騎士マナサ様の暗殺技能、

 そして参謀長セラエノの観測技能です。

 

 技能値の評価は軍師の目によってなされますから、

 軍師の目の運用に関わる観測技能の値が算定の上限となります。

 そのためこうした技能値10の方の評価をできるのは、

 人の中でただ一人、セラエノ参謀長のみとなっております。


 さて、1から10の範囲で算定され評価される技能値ですが、

 この範疇に収まらぬ例が一つだけ存在します。

 それは第二戦隊長にして騎士長、さらには史上異数の剣聖である

 ローディス閣下の剣術技能です。ローディス閣下の剣はもはや

 観測し得る域になく、神をも畏れぬ至高の極みに至っています。

 ゆえに軍師の目と観測技能では測定不能であり、

 そのゆえを以て技能値11と定義されています。

 これは10の次だから11であるという意味ではなく、

 もはや人智の境界を越え神魔の領域すら凌駕するという意味になります。

 記録の残る限り、史上この域にある方はローディス閣下ただ一人であり、

 技能値11とは剣聖ローディス閣下のためだけに存在する評価なのです」

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