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サイアスの千日物語  作者: Iz
第一楽章 荒野の学び舎
272/1317

サイアスの千日物語 三十九日目 その六

「そうですね…… やや脱線することになりますが、

 良い機会ですので『技能値』とその数値が意味するところについて、

 戦闘技能を中心にお話ししておきましょうか」


ルジヌは冊子から目を離してそう言った。


「『技能値』とはその者の備えた諸々の技能を

『軍師の目』によって観測し、再評価したものです。

 軍師の目を経た評価であるという点において、平原で一般的に

 用いられる語句としての技能値とはやや乖離かいりしている

 向きもありますが、この評価は明瞭かつ使い勝手が良いために、

 平原でも徐々に軍師風の技能評価が広まりつつあります。

 実際に軍師の目で算定されているかは別問題となりますが。

 

 ともあれ技能値とは、その者の習得している技能の

 出来栄えを数値化し、1から10の範囲で評価したものです。

 特別な才能を持たない、ごく一般的な

 平原で暮らす人が到達し得る上限値は5であり、

 これは平均的な身的能力の持ち主がその技能を用いた場合、

 どのような状況下でもほぼ確実に成功を収めるであろう値を

 その基準としています。もっとも戦には相手がありますから、

 自分の側が成功したからといって、結果まで出せるとは限らない

 ことには注意してください。以下では1から順に

 寸評を付けていくことにいたしましょう」



「まず技能値1からです。基礎を一通り覚えた水準とされます。

 技能、もしくは技術というものは、センスや素養に関わらず、

 時間と労力さえ費やせば誰でも習得できるように編集された

 知識と要領の体系ですので、どんな者であれ時間さえ費やせば

 1には到達することになります。技能値1は道場や学校等の

 専門の機関で概ね1か月から2か月程度の集中的な訓練を

 受けた程度の能力です。一般人の場合は、通いで習って

 一年程度という所でしょうか。

 

 その技能に関する基礎知識は十分に持ち合わせているものの、

 それを自分の動作として実際に行えるかは保証されない

 状態ですので、ここで終えずにさらなる高みを目指し

 訓練を継続すべきでしょう」



「次に技能値2です。これは習い覚えた基礎を一通り実際に

 使える水準であり、習い事であれば当初の目標をひとまず

 達成した状態であるということもできます。もっとも

 実践できることが実戦での結果に直結することはありません。

 正確に技を出せても競り負けたり、恐怖に呑まれて精度を欠いたり、

 運足が満足にできなかったり、といったことは極普通に起きます。

 それゆえ基礎訓練を終えて出来が良かった程度、と

 見なしておくのが安全だと言えるでしょう。


 技能値3はこれを一段進めた状態を指します。

 戦場等、強烈な精神的負荷のかかった状況において、

 習得した技能を遺憾なく発揮できる状態であり、

 その技能を用いるのに不自由ない状態、言い換えれば

『ものになった』状態だと言えるでしょう。

 その技能を職分とする場合は、この技能値3が

 最低水準であると考えるべきです」



「技能値4は実戦において特に秀でた活躍を成しうる

 程の連達、すなわち一流と呼ぶべき腕前を指します。

 ここまで来ると基本のみならず、実戦的ではないとされるような

 高難度の技や、習い覚えた技を昇華させ自分流にアレンジした

 ものまで、実に多彩な攻め手を見せることになります。

 前線で職分を果たすのに相応しい技能値と言えるでしょう。

 何度も例に出して恐縮ではありますが、サイアスさんの

 剣術技能がこの値に該当し、さらに剣聖剣技を習得している

 ことから、こちらにも+1の補正が加わることになりますね。


 さて続いて技能値5ですが、これは超一流、もしくは

 トップレベルとでも呼ぶべきもので、特段の素養のない一般人が

 訓練して辿り着ける技能の上限でもあります。ここまで来ると

 平原では、現役時代は精鋭部隊の一員として、また引退してからは

 技能の師範として後進の指導にあたることもある水準です」

 


「具体的にどの程度の効果となるのかを雑観的に検証します。

 またしてもサイアスさんの剣術技能を例に挙げると、

 身的能力のうち命中に関わる項目である、膂力13、器用14の

 合計27に、剣術技能4と補正値1の合計である5をかけた

 135が剣撃の命中率の基礎値となります。

 

 ここにさらに、武器による補正や身体状況等からくる

 修正が入るのですが、少なくとも剣を用いる場合、

 サイアスさんの攻撃は百発百中を超えている、ということができます。


 もっともこれは攻撃側のみの数値であり、実戦においては

 防御側の数値を踏まえて最終的に算定がなされることになりますが、

 その技能をほぼ確実に成功させるに足る水準という、技能値5とは

 どういったものか、理解する良い例になっていると

 いえるのではないでしょうか」

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