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サイアスの千日物語  作者: Iz
第一楽章 荒野の学び舎
132/1317

サイアスの千日物語 三十三日目 その六

「さて、沿革については概ね理解できたかと思います。

 また関連法規についても概略は伝わったことでしょう。

 お渡しした資料に成文化されたものは全て記載されています。

 適宜目を通しておいてください。

 それでは残りの時間は当城砦の連合軍における位置付けと

 兵制について見ていくことにします」


小休止のつもりか、ルジヌはやや間をおいて講義を続けた。



「資料の表に記載の通り、

 各国騎士団駐留部隊を含む当城砦の構成員はすべて、

 西方諸国連合軍隷下の『城砦騎士団』に属しています。

 各国騎士団駐留部隊については任務中のみ一時的に統帥権を

 委譲される特殊な形式となっておりますが、

 詳細は明日以降に持ち越すことといたします。 


 また、西域守護城砦は3城ありますが、平原にある南北の2城

 については『城砦騎士団』ではなく連合軍の軍団兵が

 管理運営しており、中央城砦のみが独立した軍団となっています」



「城砦騎士団は騎士団長を頂点とする4つの戦隊で構成され、

 概ね1000名の戦闘員を有しています。これは平原の人口や

 連合軍の総兵数に比して極めて小さい数字ではありますが、

 内実は比肩しようのない水準の戦闘力を維持しており、

 城砦騎士団における最下層の『兵士』ですら

 平原各国軍における兵士10人分以上の戦力を個人で有しています。

 逆説的にそうした者しか城砦騎士団には所属できないため、

 一度に揃う人員は1000がやっと、と言うこともできます。


 また、戦力ではなく権能に着目して平原各国の兵と比較する場合、

 最も分かりやすいのがトリクティア正規軍との比較です。

 トリクティア正規軍は10人隊長、100人隊長、1000人隊長

 といった各階級ごとの指揮官を有していますが、

 城砦兵士は丁度10人隊長、城砦兵士長は100人隊長にあたると

 考えれば遠からずといったところです。


 トリクティア正規軍風に言えば、本講義を受講している貴方がたは

 訓練課程終了後即10人隊長となり、100人隊長の

 元で兵卒を束ねるのだ、ということになるわけです」



「城砦における兵士の階級は、『兵士』及び『兵士長』の二つです。

 ただしこの下に員数外の『見習い』及び『新兵』が存在しています。

 どちらも兵士提供義務で集められ訓練課程を終えたばかりの存在であり、

 この時点では戦力として算定されることはありません。


 こうした事情の最たる理由は、城砦兵士が荒野で戦う相手の

 特異性によるものです。魔や眷属といった存在は最末端の眷属である

『羽牙』ですら、1体で平原の村一つを滅ぼし得る強さをもっています。

 羽牙は常に三体一組で攻めてきますが、仮に1体だけであれ、

 並みの城砦兵士と同格以上の相手です。人間同士の戦闘における

 技術や経験、戦術や知識が通用する相手ではないため、

 一度実戦を経て勝ち抜いた強靭な心身の持ち主にしか、

 戦力としての適正を見いだせないのです」



強者への畏怖は容易に身体を竦ませ、

未知への恐怖は容易に意識を現実から遠ざけようとする。

魔や眷属といった超常の相手を目の当たりにした者は、

そこで初めて自らの在り様を試される。

そしてそこで抗うことを選択をし、

萎えた意識を奮い立たせ、震える手で剣を掴み

勝利を得た者だけが城砦兵士となれるのだった。



「『兵士長』は兵士としては最高位の階級であり、

 士官として実戦で部隊を率いることになります。

 誤解を招き易いところですが、城砦騎士及び騎士長は

 兵士とは別の枠組みで扱われる存在で、

 各国軍でいえば将校に相当する存在となっています。

 また軍師についても階級のみ共有する別の枠組みの存在として、

 兵士の員数には含まないのが一般的です。

 軍師は騎士団長直下の参謀部に所属する城砦兵士であり、

 特務部隊である第四戦隊同様、内実は1階級上として扱われます。

 つまり元兵士である軍師の階級は兵士長ということになります」



「さて、これまでの内容を踏まえて、

 城砦騎士団における兵制を兵士に限定して

 階級順に並べたものが図4となっています。


 すなわち上から第四戦隊兵士長。

 これは騎士とほぼ同等の権限を持った最高位の現場指揮官です。

 騎士の数が不足している場合はその役割をも代行します。


 ついで第四戦隊兵士。

 これは第四戦隊が単独で動く際には一兵士として、

 他戦隊構成員を召集する場合にはそれらの指揮官として

 機能する士官兼任兵士です。


 その次が第一から第三の各戦隊における兵士長。

 統制上第四戦隊兵士に準ずることになりますが、

 戦隊内の単独任務においては士官兼任兵士となります。


 次が前述3戦隊の兵士で、言わば下士官兼任兵士です。

 兵士としては最下位となりますが、実際はさらにこの下に

 員数外の新兵を伴って任務にあたる、といった具合になります」

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