城砦騎士団小隊戦術要綱抜粋 班戦闘 その2
・後衛
前衛の後方、敵の近接攻撃が届かぬ位置に陣取り、
機を見ての突撃や支援行動を担当する戦闘様式。
攻撃役と補助役に大別され、それぞれに小分類がある。
*攻撃役
@斬り込み
攻撃を担う後衛のうち専ら近接武器を用いる戦闘様式の総称。
前衛が身を挺して見出した隙を活かし、一気に間合いを詰めて
研ぎ澄まされた必殺の一撃を放ち、勝負を決める。大抵防具は
軽装であり、その分重量のある両手用の武器を複数携え、
適宜取り替え任務を果たす。敏捷と膂力、そしてチャンスを
確実にモノにする高い技量と判断力が求められ、普段からひたすら
攻撃のための修練のみを行う。防御に関しては完全に前衛任せであり、
飛び出して放った必殺の一撃を躱されたり仕留めきれなかった
場合には、前衛が庇い切れず一撃で葬り去られることも多い。
@飛兵
攻撃を担う後衛のうち弓などの遠隔武器を用いる戦闘様式の総称。
斬り込みのような飛び出しによる突出をおこなわないためリスクを
軽減できる反面、安全圏から静止状態で撃つ通常の弓兵らとは
異なり、敵近傍かつ動き回る前衛の背後から流動的な精密射撃を
成し得る高い練度が要求される。飛兵の代表格は弓使いだが、
実際のところ大抵は斬り込みが手槍や手斧を用いて副次的に担い、
近接武器を放棄して弓のみで勝負する真なる弓使いは稀である。
*補助役
@影法師
前衛の直近後方に控え影のごとくこれに追従し、攻防に渡り
適切な支援を提供する戦闘様式。前衛が防御態勢を取れば
その穴を埋め、攻撃にまわれば追撃を行う。ときには
前衛の代わりに一時盾を担う場合すらある。
攻防に渡る高い意欲と何より献身性が問われるロールであり、
優秀な影法師は前衛の能力を2倍にも3倍にもすると言われる。
ロール名は古代語「tamquam umbra secuitur:影の様につき従う」から。
前衛には理想的な相方だが、他の後衛に直接影響を与えることはない。
@軸
前衛と後衛の中間に陣取り、両者の調整や連携を引き受ける
支援特化の戦闘様式。影法師と異なり後衛にも影響を与え、
班全体の戦闘能力を底上げする。通例支援内容は攻防共に物理的な
ものが主体となるが、指揮官がこのロールに着く場合は戦術的な
内容も伴うこととなる。軍師が前線に出る場合臨時で担うことも。
単純な技量よりも経験やバランス感覚が強く問われるロール。
*特殊
@工兵
機を見て柵や盾を設置したり罠を仕掛けたりと資材機材を
用いた支援行動によって戦況を補い、あるいは兵器を用いた
遠距離射撃等を担う戦闘様式。大抵別働隊として行動するが、
中には後衛として敵に近接し小規模な機械を用いて戦闘や
支援にあたる例もある。機材や兵器の運用に関わる技能や
知識が必要となる特殊なロール。
@衛生兵
後衛よりもさらに後方に位置し、直接の戦闘行為には携わらず
携行する薬品や知識によって味方の負傷や心身の疲労の軽減を行う
ロール。平原と異なり、自身に戦闘の意志がなくとも敵次第では
真っ先に狙われることになるため、役目には相応の危険と強度を伴う。
衛生兵の有無は班や隊全体の生存率に如実に影響を及ぼすため、
どの隊においても重宝されるが優秀な衛生兵程前線に頻出するため
損耗し、結果多くの隊では衛生兵を伴わぬ戦闘を強いられる。
治療技術の特に発達した城砦においては神仏以上に頼られることも。
@歌姫もしくは歌騎士
「誓いの歌姫」サイアス・ラインドルフのみが担う特殊ロール。
前線で指揮や戦闘を行いながら歌唱によって味方を鼓舞し敵を憤らせ、
天地を動かし鬼神をも泣かして戦局を一変させる可能性を秘めている。
通例部隊後方にて軍鼓や喇叭が担う役目を遥かな高次元で最前線にて
行うため、高い戦闘技能と歌唱力、加えて舞台度胸と呼ぶには余りに
非常識な決死を超える精神力が要求される。城砦史上後にも先にも
例のない特別な戦闘様式として参考記載。




