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サイアスの千日物語  作者: Iz
付録集
1307/1317

第一部用語集 タ

「第一戦隊」

中央城砦における防衛任務の主体となる部隊であり、

戦闘員400名が所属する。最も既存の軍隊に近く夜間を中心とした

規則正しい勤務形態を持つ。戦隊員はいずれも謹厳実直で守備に秀で、

また任務の特性上身体能力も高く、日々訓練に励み有事に備えている。


主装備は全身を覆う金属鎧に大盾。これらを装備できるように、

第一戦隊員には最低でも15の膂力が要求されている。

武器は手槍もしくは大盾を持つ。


戦闘技能は盾技能をはじめとするあらゆる防御技能を重視し、

精鋭ともなると硬気功と呼ばれる特殊な技法で自身の身体そのものを

硬化することができ、気合一つで敵の攻撃を無効化することもある。


戦隊長は騎士長オッピドゥス・マグナラウタス。

騎士長オッピドゥスは魔の一撃に耐えうる程の強靭さを持つ。

特殊部隊として教導隊と精鋭兵部隊が存在し、日夜城砦を守備し

平原の平和に貢献している。



「第三戦隊」

戦闘を含むあらゆる「支援」に特化した部隊であり、城砦の運営面を

一手に担う「城砦の店員」である。員数200のうち半数以上が

医局や工房、菜園等で非戦闘任務に当たっている。また城砦内の

各地で警邏に当たったり、訓練課程にある補充兵を監督するのも

この隊の役目。城砦には主にアウクシリウムから派遣された非戦闘員も

多数いるが、これらと第三戦隊員との違いは戦闘義務の有無に集約される。

第三戦隊員はあくまで戦闘員であるため、宴等の戦時においては

主に遠隔武器を用いて戦列に加わり、城砦の防衛に貢献することになる。


戦隊長は騎士クラニール・ブーク。

城砦きっての良識派であり知識人。上下非対称の長弓、

和弓の名手であり、城砦の経営面を配下と共に一手に担い

1000を超す脳筋どもを一手に支える「城砦の母」である。

特殊部隊としては教導隊の存在が確認されている。



「第二戦隊」

城砦での戦闘において、攻撃面を一手に担う先鋭的な戦隊。

員数300と第一戦隊に次ぐ数を誇り、城砦近辺の巡回を含む

諸任務に参加、城砦における敵撃破の7割はこの戦隊による。

盾役のつくった隙に両手武器で必殺の一撃を叩き込む強襲戦術を基本とし、

戦隊単独で動く場合は奇襲を中心として攻める。

城砦周辺の巡回に際しては、第一戦隊から盾役を借りてくることも多い。


盾を担う第一戦隊と矛を担う第二戦隊は城砦の戦術上、

切っても切れない関係にあるが、こと死傷者に関しては

軽装で防御を重視しない第二戦隊が圧倒的に多い。そのため補充兵の

配属先としてはもっとも多く選択されることとなる。


戦隊長は騎士長にして史上異数の剣聖、ローディス。

ローディスは魔剣使いでもあり、単騎で一個戦隊分の戦力を有する。

そのため第二戦隊は実質員数600名と見なされることもある。

特殊部隊としては驚異的な俊敏さを誇る伝令部隊と

ローディス自ら手塩にかけて育てた抜刀隊が挙げられる。



「第四戦隊」

騎士団長直下の特務部隊として、およそ10年前に設立された

歴史の浅い部隊。構成員は基本的に他戦隊で経験を積んだ猛者から

選抜され、員数こそ50名と少ないものの、総合的な戦闘能力は

他戦隊より頭一つ抜けている。第四戦隊は構成員の全てが

他戦隊の兵士長以上であり、他戦隊に派遣されて指揮を代行することも

あるため、他戦隊から第四戦隊へと配属された者は、階級を1つ下げて

扱われることになる。結果として同じ階級であれば第四戦隊が

他戦隊より1つ上となり、指揮系統の齟齬を減らす機能を果たしている。


他戦隊と異なり騎兵が重視されており、カエリア王立騎士団に迫るほどに

馬術の達者が多い。もっともこれは個人技としての馬術であり、

騎馬軍団としては遠く及ばぬところとなっている。


また、一般的な城砦兵士が戦力指数1とされるのに対し、

第四戦隊の兵士は最低でも5とされ、中には7~8といった

準騎士とでもいうべき強者も多い。そのためこの戦隊に限っては

単独もしくは少数で敵と相対することも多い。

特殊な技能を具えた兵も多く在籍しており、中でもサイアスの名は

広く平原にも知られはじめている。


戦隊長は戦死により不在であり、

現在は副長である騎士ベオルクが代行している。

ベオルクは魔剣使いとして内外に広くしられる黒衣黒馬の歴戦の騎士。

また、この部隊そのものが特務部隊であるため、長らく内部に

特務部隊は存在しなかったが、現在では特殊技能に秀でたサイアス小隊が

発足し、実戦に備えその技量を磨いていると専らの噂となっている。



「大漁旗」

東方諸国、及びフェルモリア南部をはじめとする沿海地域において、

漁の成功を願うために掲げられるとてもおめでたい旗。海より上がる

旭日と大波、または魚をモチーフとしたものが多く、

遠くからもよく目立つ。


城砦北部の戦闘において使用され、未知の眷属がこれを奪取。

その後自らの旗として最期の最期まで守り抜いてみせたため、

撃破したローディスと第二戦隊がこれを意気に感じ、戦隊旗として

採用した。以降第二戦隊の営舎と城砦北門にはこの旗のレプリカが

誇らしげに掲げられている。



「チェルニー・フェルモリア」

7年の長きに渡り城砦騎士団長を務めるフェルモリア王国の王弟殿下。

当初の任期は2年であり、余程城砦が気に入ったのか、以降5年、

本国からの帰還命令を無視して居座り続けている超大型お困り様。

連合軍とほぼ対等の立場や諸国家の派遣部隊に命を下す統制上の

事由により、城砦騎士団長は王族であることが必須要件とされているため、

王位継承権は返上していないという爆弾付き。そのため

フェルモリアとしては継承権上位者が最激戦地で粘り続けるという

頭の痛いことになっている。もっとも他国の王族は手間が省けて

非常に喜んでいるため、長らく誰も強制的に連れ戻そうとはしなかった。


しかし7年間に渡り実家に戻らぬ不品行に激怒した妻である王女が

「戻らねば軍を率いて城砦へ攻め込む」と軍勢の編成を始めたため、

慌ててアウクシリウムで面会に及んだ。面会後チェルニーは

げっそりやつれていたという。


性格は立場に似合わずお調子者でいたずら好き。堅苦しいのが大嫌いで、

すぐ実戦に参加したがる現場大好き人間。とはいえ腕は確かであり、

実力で城砦騎士を拝命している。漆黒の鎧と銀髪が印象的な

城砦を代表する不良中年おっさんの一人。



「駐留騎士団」

連合諸国のうち常備軍を持つ国家が兵士提供義務の代わりに

城砦へと派遣する部隊を指す。員数としては50名だがこれは

城砦に常駐する戦闘員のみに絞った数であり、実際には数百人

規模でアウクシリウムと城砦の間での輸送を中心とした諸任務に当たる。


人と魔や眷属との戦いが常態化した現在において、人同士の

争いは減る傾向にあり、特に連合諸国間では相互不可侵条約から

軍備は最小限に縮小されており、城砦への派遣に足る常備軍を

有する国家は平原中央部の三大国家を始めとする幾つかに限られている。


駐留騎士団として著名なのはカエリア王国のカエリア王立騎士団、

トリクティアの機動大隊、フェルモリアの各種兵団などである。

駐留騎士団はいずれも統率力に優れ、平原の軍隊ながら

高い戦力指数を誇っている。


派遣期間は概ね数か月。駐留騎士団は王族が率いている

ことも多く、カエリア王自ら率いるカエリア王立騎士団は

その顕著な例。とはいえ流石に国家元首自ら荒野に来る例は他にない。



「ディード」

第四戦隊に所属する城砦兵士にしてサイアス個人に仕える従者。

元は第二戦隊兵士長であり、入砦以降3年に渡り戦い生き抜いた勇士。

ゆくゆくは騎士にと嘱望されていたが、北往路の戦いにて瀕死の重症を

負い、サイアスの決死の活躍により救助された。その際実家の社から

持ち出した御神体である繚星をサイアスに託し、隻腕となって復帰後は

戦場での約束通り、サイアスに仕える道を選んだ。

冷静で理知的だが気位が高く、すこぶる頑固で一旦嫌うと容赦がない。

ベオルク並みにめんどくさいとはローディスの言。



「デレク」

第四戦隊に所属する城砦騎士。元は第二戦隊兵士長であり、

第四戦隊の新設後に抜擢された、若手騎士の筆頭である。

第四戦隊では兵士と騎士の戦力差が少ないこともあって、

歳若いデレクは兵士たちに恐ろしく馴染み懐かれ遊ばれている。

フェルモリアの武器商の子として生まれ、幼少時より武器の

インストラクターとして父について平原中を旅してまわった経歴を持つ。

そのため武器の扱いは若くして達人の域であり、

通常であれば剣術、槍術と分けて習得する戦闘技能を

「全武器」として、総合した状態で保有する。その技能値は7。

馬術にもすぐれ、軍師の目まで持ち、経理も可能、と

異数の器用人であり稀有な芸達者として知られている。


平時は間延びした鷹揚な口調で話すが、その目は決して笑っておらず、

親しい者ならばこれが仮面であることはすぐ気付く。

内実は頗る冷静であり、その心情は滅多なことでは明かされない。

これは幼少時から武器のインストラクターとして活躍した際に

身に付いた営業用の知恵であり、極親しいものに対しては

年齢相応のやんちゃ振りを見せることもある。



「東方諸国」

平原の東部に位置する小国家群の総称。魔の脅威から遠く離れて

いるために、未だ人同士の諍いが絶えず、日々戦乱に明け暮れる。

トリクティアやフェルモリアの膨張主義にも徹底抗戦しているが、

どうも戦うこと自体が目的化している節があり、勝とうが負けようが

常に戦乱の火種を絶やさない。また戦に明け暮れる一方で

日々の暮らしや芸術も重視する矛盾した独自の文化を持っており、

その奇異な思想は西方の人間を惹きつけもし、敬遠もさせている。

現状トリクティアとの境にあった東西の窓口的な街、ロンデミオンが

陥落してトリクティア領となったため、トリクティアとの戦端が

開かれつつある。


西方諸国連合に加盟していないため、物資ならびに兵士提供義務を持たず、

トリクティアやフェルモリアにとっては侵攻対象でもある。

そのため何度も大国と戦闘に及んでいるが、そうした事情にも拘わらず

毎年多くの志願兵を輩出しており、請われれば戦闘中の敵の呼びかけで

あっても平然と物資を送り、救援に赴く。そうした独特の価値観は

西方の諸国家にとって脅威にして恐怖であり、風雅の民、傾奇者集団、

または戦闘民族などと様々な呼称で呼ばれ畏れられている。



「トリクティア」

平原の中部に東西に長く広がる、広大な版図を持つ大国家。

トリクティアとは古語で「麦の穂」を意味し、その名の通り

麦を中心とした農耕で安定した繁栄を築いている。

元は平原中央部にかつて存在した古代王朝の荘園だったといい、

農業を元に国力を蓄え、やがて20を超える州を持つ

平原の6割を席巻する超大国にまでのし上がった。


連合軍が結成されて暫くの時期までは帝政を取っていた。

が、他国との諍いから、連合軍の中心国家でありながら

物資並びに兵士提供義務を拒否する暴挙に出たため、

当時建造中の中央城砦が壊滅的な打撃を受けて一からの再建を

余儀なくされ、平原最西端の名もなき都市国家が滅ぼされてしまう

という人の存亡に関わる大事件を起こした。


そのため連合軍をはじめ膨張主義に頭を抱えていた周辺の諸国家

並びにトリクティア内部の穏健派が結束して打倒帝国の機運が高まり、

トリクティア政府は辺境領土の連合軍への割譲、他国の国境領域からの

軍の撤退、そして何より帝政を廃止し共和制へ移行、といった

国そのものを根底からひっくり返す改革案をまとめ、

全面戦争の危機を回避した。なおこの事件の切っ掛けを

作った最期の皇帝は国家の恥として、名前はおろか事跡全ての

存在を否定される、名誉を重んじる王皇貴族にとっては最大の屈辱である

記録抹消刑ダムナティオメモリアエ」に処されることになった。


前述の件以降、元老院の統制する共和制に移行してからは、

連合軍に対して最大限の惜しみない協力をおこなう第一の国家へと

様変わりした。また所領の3割を失ったことで経済状態はむしろ好転し

さらなる発展をなしとげたが、基本方針である膨張主義は捨てておらず、

連合軍に所属していない主に東方圏の国家に対し、

相変わらずちょっかいをかけている。


現在トリクティアは東方域との境界の街ロンデミオンや、

グウィディオンと私掠兵団の悪行により荒廃し自ら併合を望んだ多くの

村々や集落、街を加えて再編された12の州を持ち、各州都には州軍を

置いて外敵に備え、元皇族や貴族で構成された元老院の監督の下、

安定した統治を実現している。また連合軍への協力を行う特務軍として

機動大隊を設立し、物資並びに兵士提供義務の履行に精を出している。



「貪隴男爵」

荒野の、そして世界の支配者である魔の一柱にして男爵の爵位を以て

敬し呼ばれる大いなる存在。顕現した際には四本の角を持つ巨獣の姿をとる。

灰と橙の合わさった外皮と頭頂部から尾の先まで一直線に生えそろった鬣、

さらに体毛の少ない皮膚に浮かび上がる曲線的な紋様に似た模様が印象的。

多くの創世神話に記述のある大いなる獣とはこの魔のことである。

極めて高い膂力を以て大地を割り、そのぶちかましは

家屋数軒分の厚みがある中央城砦の防壁すら崩す程。

ガチガチの猪突な戦闘スタイルに反して理知的であり、

自身と敵たる騎士たちとの戦いを一個の作品とみている節がある。

その容貌は貪婪なまでに猛々しく、その一方で玲瓏なまでに美々しい。

ゆえに人は貪隴と呼びこれを畏れる。推定戦力指数115。

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