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サイアスの千日物語  作者: Iz
付録集
1305/1317

第一部用語集 ア~カ

「アウクシリウム」

平原の最西端に位置する街。城砦への物資集積所が巨大化したもの。

人口4万人程度で、うち3割以上が城砦に関係した職に従事しており、

そのため街自体に対する物資並びに兵士提供義務は免除されている。

長期休暇を得た城砦兵士や連合軍の首脳が訪れることもあるため、

大国並みの施設が揃っており、現状平原でもっとも活発な街と言える。


なお平原の辺境諸国連合では人口に応じた呼称の規定を設けており、

1~100は集落、100~1000は村。1000~1万は町、

1万~10万が街で、10万以上が都市もしくは国家とされている。



「アクタイオン」

中央城砦第二戦隊に所属する城砦騎士でトリクティア西部の州都

イニティウム出身。全身を白銀色の板金鎧で覆った派手な男。

大言壮語を旨とし眷属相手にもいちいち名乗りをあげて斬り掛かる。

派手な言動とは裏腹に剣技はすこぶる堅実であり、着実に成果を上げて

生き残り、現役最古参の一人となっている。娘のセメレーもまた

城砦兵士として活躍しており、やはり派手好きで目立ちまくっている。

宴において貪瓏男爵との近接戦に及び、一太刀浴びせるも反撃を受けて

瀕死の重傷を負う。生死を分けたのは長年愛用する板金鎧の堅牢さだった。

加療後当人は現役続行を希望したが、老齢を鑑みた上層部が連合軍本部の

あるアウクシリウムで剣術師範となるよう打診。娘のセメレーが城砦騎士

にまで達したことも踏まえ、これに応じて引退し第二の人生を行くこととなった。



「アッシュ」

中央城砦第二戦隊所属の城砦兵士長で城砦騎士ヴァンクインの配下。

直情径行かつ短気で感情的。判断ミスも多い。

槍術と治療技術に心得があり、衛生兵として採用された経緯がある。

同僚のディードには何度となく告白し、その都度徹底的に振られ、

治療の申し出を断られる程全力で嫌われている。



「アトリア」

中央塔付属参謀部に属する城砦軍師の一人にして参謀長補佐官。

トリクティア北西の小国出身で同国では特殊部隊の長を務めていた。

城砦軍師にあるまじき非凡な身体能力を誇り、闇夜にあって闇と同化し

昼日中と変わらぬ動きを成す。城砦軍師となってからは独立区画で

活動と休眠を繰り返すセラエノの庵に軽々に至れる敏捷性を買われ、

秘書兼伝令兼主治医を担っている。なお家事に関してはさっぱりで

その居室はかつてのセラエノの庵同様、魔境と化しているらしい。

セラエノとは10年来の付き合いで現役軍師中ルジヌに次ぐ古参。

なおアトリアは略称で正しくはアトリアンジュ。一族に伝わる名跡なのだとか。



「アルノーグ・カエリア」

現カエリア王国国王。政戦両略に長けた名君と呼ばれ、世が世なら

四隣を斬り伏せ版図をさらに拡大していただろうと言われている。

優秀な人材を多く抱え、普段はそちらに仕事を任せっきりで

表にほとんど出てこない。



「イニティウム」

トリクティア西部の州都であり、人口12万を有する大都市の一つ。

トリクティアが膨張主義を体現し拡大していく以前から中心的な

都市国家として栄えており、長い文化と歴史を持っている。

トリクティア全体としては西の外れに位置しており、

かつて血の宴によって滅んだ水の文明圏との交流があり、

優れた建築様式や文物を今に伝えている。2万人を超す人員を収容できる

巨大な闘技場や、皇族がわざわざ訪れるという大劇場が見どころ。



「異名」

魔や眷属との戦闘において、傑出した活躍をした者に贈られる

称号の一種。傑出した活躍をするのは大抵騎士以上であるため、

自然と騎士のみが冠するものになっている。もっとも、兵士階級で

あれ活躍次第で付くことはある。異名は活躍の内容や活躍者の特徴

を客観的に表す第三者の評価によって決まる。当人の主張は一切関係ない。


また異名には表と裏の二種類があり、対外的に公表し畏敬の念を想起

させるものを表の異名、城砦内や隊内においてある種の親しみをもって

付けられるやや風変わりなものを裏の異名と呼ぶ。

第四戦隊副長にして城砦騎士たるベオルクを例に挙げると、

表の異名は「魔剣使い」または「魔剣の主」であり、

裏の異名は「魔性のヒゲ」または「チョイ悪ヒゲ親父」である。



「インクス」

中央城砦の武器工房を預かる大男。カエリア王国北東のユミル雪原の出で、

オッピドゥスとは同郷。巨大な体躯と強烈な膂力を駆使して鍛冶に

勤しみ、打ち出した鋼には波紋のごとき独特の文様が色濃く現出する。

使い捨ての多い城砦の武具の中でもインクスの鍛えたものは別格の

強度と精度を誇っており、作刀のうち二振りまでもが魔剣となった。

これは言い換えるなら、魔をも屠れる剣を打てるということでもあった。



「ヴァディス」

カエリア王立騎士団の騎士。城砦兵士長にして軍師でもある。

カエリア王国の名家の長女だが、弟に家督を継がせるため出奔し、

王家の経営する騎士団へ入団した。その後高い知力を買われて

軍師となるべく城砦へ出向。駐留騎士団と連携しつつ研鑽に励む。

眉目秀麗にして才色兼備だが、高嶺の花過ぎて男が寄り付かない。

目下最大の娯楽はサイアスにかまうこと。



「ヴァンクイン」

中央城砦第二戦隊所属の城砦騎士で、平原南部の大国

フェルモリア出身。グレイブの名手としても知られる。

実戦経験皆無な新兵から城砦騎士にまでなった、伝説レベルの

叩き上げ。身的能力は騎士の水準だが心的能力は兵士水準。

部下からの人気はあるが、ぶっきらぼうでどこかずれている。

第四戦隊の騎士デレクとは犬猿の仲。

かつて、サイアスの父にして城砦騎士長であるライナスに

連撃の指南を受けたことがある。



「ウィヌム」

平原北西の霊峰から続く湖水地方にかつてあった都市。

清澄な水を湛える大きな湖の湖畔に今も廃墟として横たわり、

かつての栄華を偲ばせる。なお湖の中央には古城があり、

近隣に住まう人々からは、魔が棲んでいると恐れられている。



「ウラニア」

騎士会でも上位の実力を有する女騎士。元トリクティア公爵令嬢。

第二戦隊がその主力となる強襲部隊を編制する際にその長を担う。

漆黒の暴風、迅雷公女などの異名を持つ両手斧バルディッシュの使い手。

見目麗しい独特の装束と古風な言葉使いの妙齢の美女。

政略結婚の縁談に訪れる、なよっとした大貴族の貴公子が

大嫌いで片っ端からボコボコにしていたら実家から勘当され、

これ幸いと城砦へやってきた。自分より優れた武人を好む。

ただしイケメンに限る。セメレーとローディスの取り合いをしている

という噂があるが、ローディス当人含め、わざわざ真偽を確かめる

勇者は荒野にも平原にも存在しない。



「大ヒル」

荒野北部を横断して流れる川に潜む巨大な眷属。性質としては魔に近い。

巨体を利用した体当たりや巻き付きで相手を粉砕し、川へ引きずりこんで

吸収する。たいてい水中に潜み、攻撃するときのみ出てくるため、

いざ倒そうとすると厄介な相手。対処法として川に近付かない、

川に油を撒いて火を付ける、等多少の方策が講じられている。

戦力指数は10であり、城砦騎士と同水準として知られる。



「オッピドゥス・マグナラウタス」

中央城砦の誇る第一戦隊長にして城砦騎士長。「城砦その人」

「歩く通行止め」等数々の異名を持つ。カエリア北東のユミル雪原出身で、

同地ににかつて居たとされる霜の巨人の末裔と言われている。

地に立って二階の窓に手が届くほどの巨漢であり、縦にも横にも

肉付きが良い。大ヒルを投げ飛ばすほどの膂力をも併せ持つ。

主たる武器は盾。防具も盾。盾二刀流の使い手であり、鉄板焼きの

要領で眷属を潰す。防衛戦では常に陣頭で指揮を取り、爆音というべき

大音声で敵を畏怖させ味方を鼓舞する。非常な愛妻家としても知られる。



「カエリア王国」

平原中部北方の大国。人口1200万程度。北方に広がる森林の恵みを

主産業に据えた、安定した経済・文化を誇る国。木材の他

果実や馬の名産としても知られる。常備軍として「カエリア王立騎士団」

を持ち、城砦への定期派遣で兵士提供義務を賄っている。



「カエリア王立騎士団」

カエリア王家の経営する私兵集団であり、王国の常備軍でもある。

元々は家督を継げない名家の子女の受け皿として設立された。

現在では城砦への兵士提供義務を賄う重要な存在となっている。

騎士団員は一様に馬術に長け、騎兵の水準は平原全体でもトップレベル。



「カエリアの実」

カエリア地方の特産である、親指の先程度の大きさの木の実。

元は青く、熟すほどに赤くなる。完熟した実は非常に瑞々しく美味であり

日持ちもすることから、各国で珍重されている。

「熟した赤い実は余りの甘さに死者が微笑み、

若い青い実は余りの苦さに死者が跳ね起きて暴れる」

という謳い文句がある。



「カペーレ」

サイアスらの一期前に入砦した補充兵。

訓練課程終了後第二戦隊に配属され、新兵となっていた。

第一戦隊兵士に匹敵する巨躯の持ち主で、縦にも横にもごつく

人懐っこい笑顔をしていた。二戦隊騎士ヴァンクイン率いる

哨戒部隊の一員として出撃し、そのまま偵察部隊として

北往路へと出向いた際、敵の度重なる奇襲で精神崩壊・幼児退行し

戦況上放置された。当然戦死扱いとなっていたが、

宴の折に帰砦。一騒動を引き起こすこととなる。



「川の乙女」

トリクティアで広く知られる戯曲であり、若き騎士と川の乙女との

悲劇的な恋を歌った人気演目の一つ。またその主題歌を指す。

舞台となるのはライン川。すなわちライナスの名を冠する川であるため、

サイアスの母グラティアは自分と夫ライナスの境遇を重ね合わせ、

それはもう熱心にサイアスに仕込んだ。そのためサイアスは

この曲に限っては、都の劇場で主役を張れる程に習熟している。



「騎士」

騎馬に乗って戦う者、騎馬を所有し得る程の財産を持つ者、等比較的

恵まれた環境にある戦闘職従事者の呼称であることが多く、同時に

身分の一つでもある。なお各国における騎士と城砦騎士は別物。



「魚人」

荒野北部を横断して流れる川の各域に潜む眷属の一種。人の手足に

魚の胴と頭といった、見る者を不快にさせる容姿をしている。

ある程度相手の戦力を見抜くことができ、格上や大勢に

自ら手を出すことは稀である。また、不快感や恐怖を煽ることを

戦術として取り込んでいる節があり、少数相手にこれらを実行し、

相手の動きが鈍った所を的確にし止めようとする。通常5体一組で行動し、

うち一体は色違いであることが多く、指揮官役を担っていると思われる。

戦力指数は5であるが、水場から離れるほどに戦力指数が下がり、

完全な陸上では半減に至るという重大な特性を有している。



「グラドゥス」

サイアスの叔父。元城砦騎士。かつては貴族の子弟ながら

剣闘士でもあった。平原中部の大国トリクティア出身。

城砦での戦闘により片腕を失い、義弟である城砦騎士長ライナス

の所領の代官となった。剣技に長け、かつては

「閃剣のグラドゥス」の異名をとった。



「グラティア」

サイアスの母。グラドゥスの妹。トリクティアの地方領主の令嬢で、

兄同様、夫ライナスの所領で領地経営に尽力している。

教養が高く容姿に優れ、サイアスは母の長所を如実に受け継いだと言える。



「クラニール・ブーク」

換えのきかない第三戦隊の長。戦力指数的に騎士長ではないのだが、

そんなことは誰も気にしない。城砦随一の苦労人として知られ、

脳筋だらけの城砦の経営を一手に支える大黒柱にして「城砦の母」

元はトリクティアの伯爵家の次男として国家中枢で経営に参画し、

20代の若さで財務大臣補という、実務上の頂点の地位にあった。

しかし出自上出世の限界にまで達していたため、今後について漠然と

した虚無感を抱いていたところ、中央城砦へ期限付きで招かれ

炎上状態の経営状態を建て直す。そして生来の苦労人気質と

途方も無い遣り甲斐を得て本国からの帰還要請を拒否。

さらに弓を取って防衛戦で活躍し、自らを高めて城砦騎士となった。

自ら進んで背負い込むタイプの生粋純血の苦労人。



「クラリモンド」

中央塔付属参謀部に属する城砦軍師の一人。派手なローブの妖艶な女性。

帝政トリクティアの崩壊と共に没落した名家の子女。同家は代々天文を

扱っており、没落後は占星術師として祈祷や呪符を売り物としていた。

そうした経緯でファータやミカガミ同様、入砦当初より既に魔力を有し

魔術の素養を具えていたという。


高い魔力を有し、その影響から「四つの症例」が顕著で地と水の

両症例が共に二段階にまで達している。地の症例のため感情の起伏に

乏しく、平原にあった頃占い師として培った妖艶な笑みを除く、

殆どの表情を満足に取れない。またサイアスやヴァディスと同様、

数日にまたがる睡眠と起床を繰り返している。



「勲功」

城砦において特別な活躍をしたものに授与される得点。評価と通貨の

両方の価値を有し、貨幣の代わりに消費して様々な特典を得ることとなる。

城砦において命の次に大事と言われることもあるほど。

基本的に通常任務では発生せず、さらなる貢献をした場合に発生する。

撒き割りのようなお手伝いから魔や眷属の撃破まで、得られる勲功は

ピンキリだが、撃破報酬としての勲功は部隊に対して与えられ、

任務参加者で分配したり、負傷者の再生治療のために用いられたりする。

勲功1点は概ね平原兵士の一日分の給与に値する。

また100万点以上個人で保有することができない。



「軍師」

軍の戦略や戦術の決定に深く関わる存在の俗称。大抵は将や指令官の

補佐的な地位にあるが、制式な役職として採用されているケースは少ない。

なお城砦軍師はこれらとは別物。



「軍馬」

軍隊での使用を念頭に置いて、特殊な調教を施された大柄の馬。

大抵は名馬の産地として知られるカエリア王国産であり、カエリアの実

を何よりも好む。軍馬に限らず、馬を操るには『馬術』技能が必要になる。

但し城砦所属の軍馬の場合、移動や戦闘に関するあらゆる動作を

日夜仕込まれているため、素人が乗っても戦闘以外では支障なく動く。


一方戦闘動作を行うには乗り手に『馬術』技能が2以上要求され、

騎手の身的能力の平均値に馬術技能の数値を加算して

戦力指数を算定することになる。



「訓練課程」

兵士提供義務もしくは志願によって城砦へとやってきた兵士が

通常最初に就く任務。身心両面の能力を測定し適正を確認、

城砦兵士として必要な知識や技術の修得を目指すことになる。

期間はおよそ20日間で、訓練課程を経て各部署に配属されることで

新兵となり、実戦経験を経て城砦兵士となる。城砦兵士未満の存在は

戦力として勘案されることはないため、この訓練課程の20日間が、

城砦兵士となる者にとって最後の安息の日々であると見做されている。



「眷属」

強大な力を持ち世界を統べる「魔」の従者的立場にある存在。

専ら日中に活動できない魔の手先として暗躍し、

また独自の意志で人を襲う。魔同様荒野の各地に巣食い、

城砦兵士と日々死闘を繰り広げている。魔と異なり個体数が多く

繁殖力も旺盛なため、かなりの数が昼夜の荒野を席巻している。

大抵は城砦兵士の数倍の強さを持ち、基本的に群れで行動する。

仮に平原に出現すれば、一体で村一つ程度は滅ぼすだろうといわれている。


平原各国の通常の兵士は魔や眷属の姿を見ただけで竦んでしまい、

到底まともな戦闘にならず、単純な力量差もあって、まず蹂躙される。

逆説的に、魔や眷属と戦って生き残った者だけが城砦兵士となれる。

平原各国の人口や兵士数に比して、城砦兵士が圧倒的に少ない

理由の一つでもある。

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