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サイアスの千日物語  作者: Iz
第六楽章 光と闇の交響曲
1002/1317

サイアスの千日物語 百四十三日目 その四十九

指揮所における大隊幹部らの打ち合わせは

実にスムースに進められた。ヴァルキュリユル

は先だっての魔笛作戦の基本編成を継承して

おり、実働する人員の多くは10度出動した

同作戦を経て適性を得ていたからだ。


兵を巧く率いるのには無論経験や実績が要るが

将に巧く率いられるにもこれらは当然必要だ。

将が兵に与えるのは方針であり、方針は将の

主義主張や気質に強く影響を受ける。


ヴァルキュリユルの200余名は先の

「魔笛作戦」を経て、サイアスという将の

何たるかを存分に理解していた。


サイアスは兵の生還を最優先した上で

戦略目標を達成する事を目指す将だ。


一見出鱈目で荒唐無稽な下命であっても

全ては最終的な勝利を全員揃って祝うため。

こうした理解が末端まで浸透し切っていた。


命に従えば勝利と生還が約束される。

それが判っていて逆らう者は皆無であり、

こぞってこれを支えに回り、大勝利をも

確約せしめるのであった。





とまれ再編成はスムースになされた。

実勢としては以下の通り。


まずこの拠点には防衛と中継を担う

50名が残留する事となった。


騎士団の規定における最大規模の中隊となる

この守備隊を預かるのは、ヴァルキュリユル

副将たるサイアス小隊代長ディード。


守将たるディードの下で実働部隊を束ねる

副将としてサイアス小隊副官ロイエンタール。

軍馬ミカと美人隊3名も共に残留する。


次に中隊付き軍師としては参謀部正軍師では

なく、サイアス小隊副官たるデネブ。これは

拠点北部がデネブの有する「カゥムディー」

の通信範囲にギリギリ含まれるため。


つまり実質的には中央塔の指令室に詰める

シラクサをはじめとする、参謀部そのもの

がバックアップを務める次第となっていた。


また、第四戦隊においてもサイアス小隊に

おいても城砦騎士級の戦略価値を有するとして

常にフリーハンドを許されているニティヤが

同地の防衛機構を陰ながら支援する事となった。


サイアス小隊からはさらに2名。

三人衆のうちランドとシェドが残留する。

サイアスを除く小隊員14名のうち実に

9名が同地に留まる事となっていた。





姿無きまま単騎で纏めて異形らを屠る。

この伝説級の暗殺者ニティヤの存在が

拠点防衛に寄与するところは甚大だった。


よってその分他の人員は専守防衛を

企図して選抜される事となった。


まずは第一戦隊主力大隊より精兵10名。

同じく第一戦隊副長大隊より兵士10名。


中央城砦の防衛主軍たる第一戦隊より

召集した20名は全て、この拠点に残される。


精兵10名は黒の月の宴の折には最前線で

盾を張る防衛のプロフェッショナルだ。

機動より鎮護に好適するのは自明であった。


また副長大隊の10名は全てトリクティア

正規軍の機動大隊出身であった。


トリクティア正規軍は戦より街道作りが

得意とされる程土木工事に長けている。

要は工兵として使えるのだ。


ヴァルキュリユル構成員である本職の工兵や

職人100名は全て「オアシス」へ運ぶ輜重

の一部でもあるためここには残せない。


そのため彼らは拠点防衛用というよりは

ランドと共に追加物資を用いた拠点の増築に

あたるべく選抜されていたのであった。





次いで第二戦隊からは伝令・隠密各1名。

これらはシェドと共に城砦、同拠点そして

「オアシス」へと向かうヴァルキュリユル

本隊の3者間を逐次奔走し情報交換に務める。


城砦から拠点までは300から400オッピ。

拠点からオアシスへ向かう本隊までは最大で

600オッピ。シェドら3名はこの区間を

適宜単騎で疾駆する事になる。馬を用いず

自らの足でだ。


いずれ劣らぬ健脚の主だがここは荒野。

不整地な上戦地だ。その心身の負担は

まず相当と見て良いだろう。


だがそれを苦も無くこなせる者だけが

伝令や隠密として一戦を張れるのだ。

そうした点で見たならば、シェドは

伝令として既に一流の域にあると言えた。


同地に残される人員としてはさらに第三戦隊

長弓部隊より18名が選ばれた。これらは

先刻防衛陣に用いられた射場と鉄塔を利して

周囲の哨戒を担う事となる。


サイアスの見立てやデネブの索敵では

城砦東方の大湿原末端から再び羽牙が

飛来するのは早くとも夕刻以降との事。


羽牙は先の襲撃で大湿原全体での残数の

比定値が800台前半にまで減っている。


東西1万、南北5000オッピと広大極まる

湿原全域に点在する羽牙らを、再び強襲可能な

規模で一所に集めるには相応の時間が掛かる。


仮にそれを企図したとして、実際に成し得る

のが早くとも夕刻。そういう試算であった。


それゆえ長弓部隊18名はさらに6名3班に

分かれて1班で哨戒1班で他隊の支援。そして

1班で休息と3交代制で回す事となった。





ヴァルキュリユルの装備する11台の大型車両

に関しては、セントール改と大型貨車2台、計

3台が当地に残される事となった。


大型貨車2台のうち1台は当地に留まる人員の

ための物資だ。またもう1台は既に中央城砦

との間の物資輸送に随時運用されていた。


貨車の護衛はサイアス小隊専用の台車

「ランドクッルス」に搭乗したアクラ他

美人隊が務めている。状況次第ではこれに

軍馬ミカを駆るロイエも参加する形となった。


ディード以下拠点防衛中隊50名が同地を

単独で守備するのは概ね2時間から3時間。

その後の当地の扱いについては現在参謀部と

別隊派遣を含め交渉中であった。


指揮所で成された再編成のうち、当地に残る

別働隊については概ねこうした次第となった。

1オッピ≒4メートル

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