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気ままな短編集

153回生きた魔王

作者: 辺 鋭一

このお話は、『魔王が他世界に人間として転生するお話』や『人間が魔王として魔界に召喚される』っていうお話はいっぱいあるけど、『魔王が他世界に転生して、再び魔界に召喚される』っていうお話はあんまり聞かないなぁ、と唐突に思いついた私が書いたお話――だったはずの物です。


後半は雰囲気がガラッと変わりますので、ついていけない方がおられると思います。ご注意くださいませ。



では、どうぞ。

   ●



 石造りの古城の奥の奥、その城の住人ですら大半が知らない秘密の部屋に、二人の人影があった。

 一人は頑丈そうな金属鎧に身を包んだ大柄な男であり、もう一人は顔に深いしわを刻んだ小柄な老人だ。

 だが、二人の頭に生える一本の角が、二人は人間ではないと如実に表している。

 その部屋には何もない。

 机も、椅子も、寝具も、本棚も、照明も、何もない。

 それにもかかわらず、二人の顔は良く見える。

 なぜならば、何も置かれていない無骨な石床に、薄暗く光る文様が描かれていたからだ。

 それは同心円をもとにして、複雑な文字をいくつも細かく配置した物であり、いわゆる『魔法陣』と呼ばれるものであった。

 だが、ある程度の知識がある物が見れば、その魔法陣の精緻さと複雑さに驚いたことだろう。

 それは一般に行使される魔法のそれとは段違いに難しい魔術を行使するために描かれたものなのだ。


「……左大臣殿。これで準備は整ったのでしょうか?」

「ああ、何の問題もないはずじゃ、右大臣殿。これで我らが数百年の悲願も、成就するであろう……」


 右大臣と呼ばれた鎧姿の男は、左大臣と呼ばれた老人とそのような会話を交わす。

 その口ぶりからは多くの不安、そしてわずかな希望の色が見えているようだった。


「そう、これで我らの望みはかなう。苦節数百年、幾度の実験と失敗を経て、やっとの思いで完成させたこの手法ならば、確実に成功を呼び込めよう」

「では、これにてやっと、あのお方を……!」

「そう、これでやっと、あのお方をお呼びできる……」


 見た目も、歳も、役職も、得意な物も、何もかもが違うその二人は、しかし次の言葉だけは一言一句たがわずそろえて見せた。


「「我らが主、魔王様を……!」」



   ●



「思えば長く険しい道のりでした……。数百年前のあの時、勇者に魔王様が殺され、我らは人間どもに敗れた」

「その事を聞いて、我ら一同そろって自刃する腹積もりであったが、しかし同時に受けた報告により、生き恥を晒すことを決断したのじゃった……」

「そう、魔王様はそのような日が来た時のために、自らの魂に術を仕込んでおられた。曰く、死してなお知識と経験を持ったまま異世界の輪廻の輪を潜り抜け、転生を繰り返して強くなる、という術を」

「それは、我らに残されたたった一つの希望。それにすがり、我らは今まで何度も転生した魔王様の居場所を捜し、この城へ連れてこようと試み、失敗してきた……」

「ある時は見当違いの魂を補足し、あるときは数多くの魂に飲まれ、またある時は見つけた瞬間に崩御なされ、新たな輪廻の旅へと向かわれてしまう……」


 思い出を語る二人の目には、自然と涙があふれていた。

 それだけで、これまで二人がしてきた苦労がありありとうかがえる。


「……だが、今回はしっかりと魔王様の魂を補足し、さらには楔を打ち込んでおいた。これで万が一また崩御なされたりしていたとしても、すぐに見つけ出せよう」

「ああ、ついに、この時が……!」

「右大臣殿、涙をふかれよ。これより魔王様との謁見が始まる。無様な姿はお見せできませぬぞ?」

「ああ、わかっておりますとも左大臣殿。かのお方をお出迎えするのに、涙は不要。精一杯の臣下の礼を以って、お迎えいたしましょう」


 二人して涙をぬぐいあい、強くうなずいてから、魔法陣の外側近くにあるそれぞれの位置に立ち、魔力を魔法陣に込め始める。

 それにつれて魔法陣の仄かだった輝きは勢いを増し、ついには直視も不可能なほどになって――


「さあ、あるべき世界へと来たれ、魔王様……!」


 左大臣の宣言によってスッと光が消えた魔法陣に、次の瞬間最大限の光が宿る。

 さすがの二人も身構えたが、ゆっくりと光が収まるのを待ってすぐに魔法陣の中心へと駆け寄っていった。

 光が完全に掻き消えてしまい何も見えなくなっていた部屋だったが、左大臣が手に持つランプに向かって何事かを呟くとそれに火が灯り、魔法陣の中心をうっすらと照らす。

 するとそこには、果たして一人の影が横たわっていた。


「……成功、したのか……」

「これが、魔王様の現在のお姿……!」


 そこにいたのは、うつぶせになって倒れる、一人の少女だった。



   ●



 察するに寝巻の一種なのであろう袖や丈の長いゆったりとした衣服を着たその少女は、つややかな黒髪を背中に散らすようにしてうつぶせに倒れており、おそらくは召喚元の世界では寝ていたのだろうと推測される。

 おそらく七歳程度であろう少女は、あどけない寝顔を少しだけ顰めて苦しそうである。

 どうやらいきなり寝床が石床になったせいで寝苦しさを感じているようだ。


「……左大臣殿。この少女が、魔王様なのですか……?」

「間違いはないはずだが、ここまで小さいお体だとは思わなかった……。どこかで術の組み立て方を間違えたか……?」


 そんなことを小声で言い合っていると、耳ざとくそれを聞いたのか、少女はやかましそうに寝顔の眉を顰めると、ゆっくり目を開く。

 心の準備がまだしっかりとできていなかった二人は少々戸惑っていたが、そんな二人をぼぉっとした目でしばし眺めていた少女は、しばしの後くしくしと目をこすって眠気をできる限り飛ばすと、相変わらず半分寝ているような目であたりを見渡し、さらに右大臣と左大臣の顔をじっくりと見てから、


「……ああ、なるほど。そういう事か」


 と、つぶやくように言った。

 そして少女は上半身を起こすと、そのまま胡坐をかいて魔法陣の中心に座り、呆然とした様子で己を見下ろす二人の顔をしっかと見据え、言う。


「状況から察するに、お前たち二人が余をこの世界に召喚し、引き戻してくれたのだな? こちらでは何年経っているかはっきりとは分からんが、とりあえず余の感覚でこういわせてもらおう。――久しいな、右大臣、左大臣。壮健で何よりだ」


 重苦しい口調と鈴を転がしたようなかわいらしい声がものすごくミスマッチではあったが、それでも目の前の少女が己の主人たる魔王その人であると確信できた二人は、すぐさまその場に跪き、


「もったいなきお言葉でございます」

「ご帰還、お慶び申し上げます、我らが主よ」


 と、こらえきれぬ涙をこぼしながら、言葉を紡ぐのだった。



   ●



 かつて魔王が使っていた玉座は今も健在であった。

 本来ならば主のいない椅子如きすぐさま壊すか、あるいは放置しておかれても仕方がない。

 だが、魔王の玉座だけは『魔王様はいつか必ず蘇る』と信じていた家臣たちによって常に磨かれ、かつての荘厳さをいまだに残していた。

 そうやって整備が続けられた魔王の間に、ついに主が戻ってきた。


「こうやってここに座り、お前たちの顔を見下ろせる日がまた来ようとはな。改めて言おう、よくぞ余の生存をあきらめず、探し出してくれた」

「我ら家臣にとって、それは当然の事なれば」

「礼を言って頂くようなことでもありませぬ」


 かしこまったようにそういう二人を見て、魔王はクスリと笑って、


「そう固くなることはない。お前たちは確かに余の益となる行動をしたのだ。それを褒めぬのでは、他の者にも面目が立つまい。違うか?」

「は、ありがたき幸せに御座います」

「しかし、我らの対応が遅かったせいで、我らが主を長きに渡り追放の憂き目にあわせてしまったことも、また事実であります故……」


 左大臣の言ったその言葉を聞き、魔王は真剣な表情を浮かべると腕を組み、玉座に深く座ると、


「……確かに、余は長きに渡り異世界での暮らしを強いられた。かの世界では魔王としての性質がほとんど発揮できず、可能だったことといえば知識の収拾のみだった。そして余が過ごした人生の数、ざっと153人分だ」


 かつての事を思い出して、魔王は懐かしそうにそう告げ、


「……だがな左大臣。余は、それも悪くないと思う。余は何度も生まれ変わってきた。あるときは平民に、あるときは皇族に、あるときは貧民街の片隅に転がる子どもに。そうして153の人生を歩むうちに、様々な知識を得た。かの世界では鉄の騎馬や鳥が使役され、他者の見ている映像を他の者に見せる事すら可能だった。……どのような光景だったかわかるか、右大臣?」

「……いえ、想像もできませぬ」

「そうであろうな。余も実際に見るまではそんなものがあることすら想像していなかった。……だがな、長き生を過ごし、多くの人生を経験する中で、それらの神秘を間近で見、触れ、構造を知ることすらできたのだ。これを僥倖といわずになんという? ……なあ、左大臣」

「……なんでしょうか?」

「お前のしたことは確かに失敗だったかもしれぬ。だがな、それはあくまで短期的な視点で見ればの話よ。長期的な視点で見れば、そなたが余に多くの時間を与えてくれたことで、この世界により多くの情報がもたらされることとなった。……その偉業、誇るがいい」

「――ありがたき、お言葉でございます……!」


 見た目は幼女でもその中身は歴戦の魔王であり、その言葉の深みも以前の通り――いや、以前よりもより深くなっている。

 これも長く異世界で暮らしたおかげかと、ひれ伏す左大臣はしみじみと考える。

 そんな左大臣の頭上から、魔王が再び声をかけた。


「153人、そう、153人分の人生だ。それだけ生きてきて、余は様々な知識を得、様々な人物と出会い、様々な意見を知った。――故に、余は悟ったのだ」

「悟った、といいますと?」

「どの世界にでも共通する、万能の真理を、だ」


 『おお!』と驚き、喜ぶ家臣二人に、魔王は厳かにその真理を告げる。












「……そう、黒髪ロングで巨乳のお姉さんが、この世全ての真理だ、と」










「左大臣殿、左大臣殿! お気を確かにぃぃいいい!?」


 魔王が告げた真理のあまりの内容に立ちくらみを起こしてしまった左大臣を支えながら、右大臣は魔王の言葉を聞く。


「……そう、それは至高の存在。流れるような黒い髪を背中に流した様は、まさに夜にきらめく天の川。そしてすべてを包み込むような年上の包容力の中にかすかな反発をもたらす胸部装甲……。これぞまさに至極である!!」


 と、右大臣の気つけにより何とかはっきりとした意識を取り戻した左大臣は、軽くパニックを起こしながら魔王に問いかける。


「ま、魔王様、今なんと申されましたか……?」

「聞いていなかったのか? せっかく余が知りえた至高の思考を聞かせてやっているというのに。……ならば、三日ほどかけてじっくりと語って聞かせ――」

「い、いえ、結構です!」

「――そうか……」


 若干以上に残念そうな顔をする魔王with幼女フェイスに庇護欲全開になりかける左大臣だったが、何とかこらえることに成功した。

 『甘やかすとためにならない、甘やかすとためにならない……!』とぶつぶつつぶやき始めた左大臣を放置して、右大臣は魔王に問いかける。


「ま、魔王様。その真理は、この世界を統治する上でどのように役立つのでしょうか……?」


 と、場の雰囲気を元に戻さんとする右大臣の発言に正気を取り戻した左大臣がものすごい期待の目を魔王に向けているが、当の魔王はニヒルに『フッ……』と笑い、


「もちろんあるとも。……余は、これからすべきことがなんなのか決めたのだ」

「おお、ではついに憎き人間どもを地獄のどん底に……!」











「――余は、出家しようと思う」









「左大臣殿、左大臣殿ぉぉぉおお!? お気を確かに! 傷は浅いですぞぉぉぉおおお!!」


 あまりの発言にショックを受けた左大臣がぶっ倒れるのを支えながら、右大臣は魔王の言葉に耳を傾け――ようとするが無理だった。

 なぜなら、あまりの衝撃で左大臣の三つある心臓の一つが止まってしまったからだ。

 あわてて心臓マッサージを施して何とか一命を取り留めた左大臣だったが、精神に深い傷を負ったせいか、壁に向かって体育座りを始めてしまった。

 もう左大臣は役に立たないと踏んだ右大臣は、単身魔王に立ち向かうべく己を奮起し、口を開く。


「あの、魔王様? 何故いきなり出家などと言いだされるのですか!? 我ら魔族の主たるお方が出家など、前代未聞も良いところですよ?」

「確かにそうかもしれん。だが右大臣、考えてもみろ、今の余は見事な黒髪に黒目、しかも生まれてすぐからずっと散髪を拒み続け、さらには毎日の風呂での手入れも欠かさなかったが故に見事なサラサラヘアーだ。ついでに言えばこの体の母体も、その親族も大層な巨乳であった。ゆえに将来性もばっちりだ。この会心のキャラメイクの結果を見るのは今からとても楽しみであるが、しかしそれ故に余の最高傑作を他の者に触らせたくはない。ゆえに出家して身の回りの男を断とうというのだ。何か問題あるか?」


 ものすごくナルシストというかなんというか良くわからない発言をする魔王に、右大臣は一度うつむき、それから一大決心の元、直訴する。


「魔王様、それは違うと思われます」

「……ほう? どこが違うというのか、申してみよ」

「はい。……魔王様の言は、大前提から間違っております」


 右大臣は、決心が鈍らぬように手を固く握りしめ、そしてそれに続く言葉を力の限り叫ぶ。











「世界の真理は、ツインテ妹ちゃんでございます……!!」









 ついに体育座りのまま横に倒れてシクシク泣き出してしまった左大臣の事など完璧に忘れ、右大臣は己の思いのたけをすべて表に出していく。


「良いですか魔王様! ほんのり赤いぷにぷにほっぺ、真ん丸な顔、とてとて走る愛らしいしぐさ、体を動かすときに一緒に震える二つのしっぽ、可能性に満ち溢れた肢体。それらすべてを兼ね備える幼女こそがこの世界の至高。……つまり魔王様は、己が持つ可能性を、自ら捨てようとしているのです……!!」


 己の間近まで詰め寄ってきた右大臣の心からの叫びをすべて受け止め、魔王はゆっくりと頷く。


「……ふむ、お前もなかなかいい意見を持っているようだな。これはいい話し合いになりそうだ」

「話し合いも何も成り立ちはしないでしょう。己が信じるものの属性が全く食い違っています。妥協点など見つけられるはずが――」

「――甘いぞ右大臣!!」

「――ぐぎゅら!?」


 唐突に魔王の幼女ぱんち(比較的手加減あり)で殴り飛ばされた右大臣は、勢いよく吹き飛んで壁に穴を開けると部屋の外に飛び出して行った。

 しかし流石は右大臣という役職についているだけあって復活も早く、すぐに穴から戻ってくると、


「いきなり何をなさいますか魔王様! 幼女に殴られるのにも心構えという物があるのですよ!? おかげでしっかりと楽しめなかったじゃないですか!!」

「そこまでの高みに至っていながら、なぜこんな簡単な事にも気が付かないのだ右大臣!」


 壁に向かって話しかけ始めた左大臣をいなかったことにした二人は、なぜか妙なノリです。


「いいか右大臣。主義主張の異なる者同士が話し合うことに、意味はあるのだ。千の会話をしても、万の言葉を尽くしても、相手の言うことは理解できないかもしれない。……だがな、右大臣。『こういう者達もいるのだ』と、そういう事を知ることはできるのだよ」

「それがなんだというのです! 例え異端の意見を知ったところで、我ら求道者にとってはさまつな事ではありませんか!!」

「そう、確かに我ら求道者にとって、他の道を究めようとせん者たちの意見など毒にしかならん。……だがな、右大臣。主義主張が違えば、友にはなれんのか?」


 魔王が語るその言葉に、右大臣の体に雷が走る。


「我ら求道者は、常に孤独だ。たとえ同好の士がいたとしても、道を進むうちにいつかは別れが来る。我らの道は、決して等しくなることはない。――だがな、一瞬でも交わることはできる。そうは思わんか?」

「交わる……」

「そう、例え一度だけでもふれあえば、互いの意見だけでなく、どれだけ本気で求道しているかも見えてくる。そして我らはいつでも前に進んでいられるわけではない。あまりの困難に、立ち止まってしまう時もあるだろう。……そんな時、己を支えてくれるのが、同じ求道者たちとの思い出だ」

「思い出、ですか……?」

「そう。求道に困難はつきものだ。そして今自分が苦しんでいるということは、かつて出会った求道者も苦しんでいるかもしれない。もしかしたらもうその困難を乗り越え、次の階梯へと進んでいるのかもしれない。……そう思えば、力が湧いてくるとは思わんか?」

「……そう、かもしれません」


 右大臣は、魔王の言葉を噛みしめるように、そう呟く。

 そんな右大臣に、魔王は優しく微笑みながら、手を差し伸べ、


「そういう関係を友というのだと、余は思う。例え進む道は違えども、胸に宿す志は皆同じ。――さあ、右大臣……いや、余の新しき友よ。この手を取り、先に進むための力としよう」

「――魔王様……!!」

「――右大臣……!!」


 互いを友と認め合った二人は、主従の垣根を乗り越えてひっしと抱きしめあう。

 かたや涙を流して頷き、かたや幼女とのハグに涎を垂らしてハアハアしているが、まあついに壁と歓談し始めた左大臣にとってはどうでもいい話であった。



 ……と、ここまで来て右大臣はハッと声を上げる。

 右大臣の荒い息を若干気持ち悪く思い始めていた魔王は、好機とばかりに身を剥がすと、右大臣に尋ねる。


「どうしたのだ右大臣。何か新しい事実にでも気が付いたのか?」

「……あの、魔王様。大変言いにくい事なのですが、その、」

「なんだ? 苦しゅうない、申してみよ」

「は。……実は、魔王様がこの城に召喚された瞬間より、魔王様は魔王としての真の性質を取り戻しておいでです。よって強力な魔力や身体能力、はては不老の能力までも元通りとなっております」


 その瞬間、再び空気が凍りついた。


「……と、いう事は何か? 余はこのまま成長することはない、と?」

「左様でございます」

「この未成熟なツルペタボディのままか?」

「はい」

「……ずっとか?」

「はい」

「…………どうにかならんのか?」

「なりませぬ」

「………………ちなみに貴様、余を見てどう思う?」

「私は生粋の幼女趣味でございます。興奮しないはずがありませぬハァハァ……!」











「……………………死のう」








「魔王様!? お気を確かに!!」


 どこからか取り出した輪っか付きのロープを手にふらふらと歩き出した魔王を、あわてた右大臣は羽交い絞めにして引き止める。


「ええい離せ右大臣! こんな体で一生を過ごすくらいならば、この場で命を絶ち、次の生へ期待をつなぐべきではないか!! 貴様らは頃合いを見計らってもう一度余を召喚せよ!!」

「なりませぬ魔王様! せっかくのロリボ――ご帰還なのですよ!? ツルペ――臣民たちの期待を裏切ってはなりませぬ! こんないい幼女を手放すなんて、あなた人じゃない!!」

「確かに魔王だから人じゃないがな! しかしお前も大概自分に素直になってきたな!? いい兆候なのか悪い兆候なのかはわからんが、このままでは余のジャンルが『ロリジジイ』という訳のわからんものになってしまうのだぞ!!」

「新たな道が開けるかもしれません――主に私の!!」

「余にとっては何の得にもならんではないか!! ……ええい、せめてこのまま元居た世界に戻れば再び成長できる。逆召喚の準備をせよ!!」

「断固お断りさせていただきます!」

「余の命令を聞かぬかこの変態ロリコンが!!」

「もっと罵ってください!!」

「ええい離せ気持ち悪い息を荒げるなーーー!!!」


 その叫びは、魔王の城はおろか、その城下町にも響き渡り、魔王復活の報となったのであった。



   ●



左大臣は、壁と談笑するスキルを手に入れた。

右大臣は、変態紳士の称号を得た。

魔王は、ロリジジイの属性を手に入れた……?



   ●

その後、人間との戦場、その最前線にて、『ロリジジイの需要はどこだぁ……!?』と叫びながら敵をほふる幼女の姿があったとかなかったとか……。



とまあそういう訳で、始めましての方は初めまして。そうでない方はお久しぶりです。辺 鋭一でございます。

今回は、最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。


そして、前半まで読んで、魔王の技術チート話を期待された方、結局紳士どもの語らいとなってしまいました。

本当に、申し訳ありません。


なお、この物語に登場する方々の人格、性格はフィクションです。

モデルなどは一切存在しないうえに、私の性癖などとも一切関係がありません。

その点だけは御承知おきいただくとともに、感想欄や活報にて暴走される方が現れないことをお祈りいたします。←


それ以外ならば、感想・意見・誤字脱字報告・筋の通った批判など、何でも受付させていただきます故。


では、最後になりますが、

ここまで読んでいただいたあなたに、最大限の感謝を。


また別の物語でお会いいたしましょう。

では、失礼します。

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[良い点] 三〇矢サイダー返せ [気になる点] 特になし。 [一言]  読ませて頂きました。  整った文体、読みやすい文。とても面白かったです。また、短編としても上手くまとまっていました。  ベテラン…
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