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1-5


~翌日~


「お兄ちゃん、朝だよ」

あと五分だけ…

「起きてってば」

ユサユサと体を揺すられている。

「入学式翌日に遅刻なんてしてたら恥ずかしいでしょ。起きてよー」

起きるか…

目を開け起き上がる。

「おはよう」

目の前に居た妹に朝の挨拶をした後洗面所へ行き朝の支度をし、食卓に座る。

昨日幽霊に会ったなんて嘘みたいに清々しい朝だ。

「いただきます」

今日は納豆か。

俺の両親は共働き。しかも二人ともが赴任中。現在は妹と二人暮らしだ。

 この家の家事全般はほぼ全て妹がやっている。やってくれているというのは一見幸せに思えるかもしれない。

しかしやってくれているというよりは、やりたいからやっているという感じだ。俺は簡単な家事程度なら苦に思わないし、料理を作ることに関しては好きな部類に入る。しかし、妹が全てやってしまい、たとえ俺がやりたくても出来ないのが現状だ。唯一自室の掃除だけはやらせてもらえるが、たとえ暇でもそれ以外の場所の掃除すらさせてもらえない。

幸せな悩みなんだろうが、多少はやらせてくれてもいいのではないか。

 料理は美味しいし、家は綺麗だからそういう点では不満は無いんだけどな。

「ごちそうさま」

そのまま家を出る。今日はカバンを忘れるなんて失態はしていない。人間学習するものさ。

途中古畑と合流した。そして遅刻者殺しの坂に差し掛かる。

 昨日は急いでいたから全速力で駆け抜けたからそれほどよく見ていなかったが、見れば見るほどほどキツい坂だなぁ。

通学する上で唯一で最大の難所だ。幸い今日は時間に余裕があるから気楽に行ける。これが寝坊したときとかだったら絶望しているんだろうな。早起きは大事だ。今日この坂で力尽きる奴が何人かいるんだろうな。

「江神、知っているか?この坂の四つの絶望」

「なんだそりゃ」

古畑によると、昔この学校に登校していた生徒が作った言葉で、遥か昔から語り継がれている、そしてその初出は不明らしい。

遅刻しそうな奴はこの坂に差し掛かると四つの絶望を味わう。


絶望①遅刻しで慌てている姿を同級生に見られる絶望

絶望②少しでも気を抜くと遅刻するという絶望

絶望③たとえ全力疾走して遅刻回避したとしてもその疲れから授業中睡魔が襲ってくる絶望

絶望④夏場にこの坂を走ると汗だくになり服を不快になる絶望&着替えるとその分荷物が増える絶望


・・・どれも結構辛いな。自然と遅刻しないギリギリにならないように早起きするようになった奴もいることだろう。そういう意味では学校側から見るとこの坂のメリットは大きいのかもしれない。

「ところで江神、昨日の宙に浮いていた本、そして俺と宮川を無理に帰した一件は一体どういうことなのだ」

ああ、それがあったな。落ち合った時に何も言わないものだから、忘れているのかと思ったのだがしっかり覚えていたか。

「そうそう、あれはどういうことなのよ、静香は何も教えてくれないし。何で本が浮いてたの?しかも静香とユイは全く驚いてなかったわよね」

 いつの間にか背後に京香と静香が居た。丁度いい、二人に別々に説明する手間が省けた。説明と言っても今は説明しないんだがな。

「悪いがそのことなんだが・・・」

「何か話してるみたいだけどちょっといい?」

後ろから別の声。この声は

「水姫。おはよう。どうしたの?」


七里水姫(ななり-みき) 

同中出身の同級生。聞いても詳しくは教えてくれないが祖父母が本校の重要職らしい。

財閥解体により解体された七里財閥血筋の一人娘。家は相当裕福。本当はエリートの通うような学校に行くべきらしいのだが、祖父母が携わっているという理由でここを志望したとか。


「忘れてた。皆はろー。みんな入りたい部活ってある?無いのなら私から相談があるんだけど」

部活?俺は候補があるな。帰宅部。

他の三人も同じような反応。つまり皆予定は無いフリーってことだな。

「じゃっ、部活見学の時間帯になったら教室に残ってて。説明したいことがあるから」

どこかオススメの部活に一緒に入ろうとでも提案するのか?

 そこから京香と水姫が世間話をはじめ、幽霊について説明するタイミングを逃してしまったようだ。ま、時間はいくらでもあるさ。

 学校に到着し、授業時間となる。といっても今日は入学後オリエンテーションのみで午前終了だ。そしてその後解散し、各自部活見学となる。

ちなみにこの高校は部活は強制入部だ、しかし『帰宅部』という部活が実在している。去年学校説明会に参加したときの説明によると、確か帰宅部はその名の通り部活動がしたくない生徒が入部する部だ。やる気が無い生徒を適当な部に強制的に入れたとしても幽霊部員になるだけで何の意味も無いからそういう部活を設置したらしい。

確か帰宅部に入ると何かやらなきゃならないことがあった気がしたんだが・・・忘れた。まぁ帰宅部になるのなら聞きゃいい話だ。

学校説明・授業説明などの数時間のオリエンテーションが終了した。

「では今日はこれで終了、この後は各自部活見学となる。では解散」

教師の合図とともに次々と教室を離れるクラスメイト達。俺はとりあえず水姫のもとへ行く。何か説明するらしいからな。

教室の生徒がまばらになった頃、水姫が話し出す。

「私部活を創ろうと思ってるの、一緒にやらない?」

部活を創る?

「そんな簡単に創れるものなの?」

京香が当然の疑問を口にする。俺もそう思う。といっても水姫のことだ、ちゃんと調べてるだろうけどな。

「昨日聞いてみたんだけど、簡単に創部出来るらしいの、条件は五人以上であること。顧問をつけること、高校生に相応しい一般常識の範囲内であること。これだけだったよ」

人数はここにいる全員が了承すればいいとして、あとは顧問か。

「あ、でも顧問については大丈夫だからもう頼んであるよー」


じゃあ創部条件は満たしているということか。そういや何をする部なのか聞いてないな。

「すぐ部を作れることはわかった。では何をする部活なんだ?」

古畑に先を越された。越されても別に何の問題も無いんだがな。

「正式名称は決めてないけど、どういう趣旨の部なのかは答えられる。私が創りたい部、それはね」

長い溜めの後CMに入りまた長い溜めのところから再開する某クイズ番組並みのための後

「それは・・・いわゆるオカルト研究部みたいな部。こんなダサい名前嫌だから部名は別のものにするけどね。ちなみに当面の目標は学校七不思議の制覇の予定」

オカルト研究会か、俺は良案だと思うな。活動内容も気楽だろうし、帰宅部よりも面白そうだ。

「俺は賛成」

俺は真っ先に賛成した。丁度昨日幽霊に出会ったのもあるかもしれない。

次に静香

「・・・賛成」

京香

「ユイが賛成するなら私もいいわ」

最後に

「俺がこんな面白い部に参加しないわけはあるまい。当然賛成だ」

と古畑も賛成。これで全員の了承が得られた。それを確認した水姫が弾んだ声を出す。

「これで決まったね。オカルト研究部(仮)設立!」

この時の俺は全く考えていなかった。幽霊少女が居た様に、七不思議が全てが真実である可能性を。

(章完結)






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