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1-3

「うし、やることは全て終わった。終了のチャイムが鳴るまで各自自由に交流を深めてくれ。教室を出るのと、大きな声で話しすぎて他のクラスに迷惑かけるなよ」

と言って教師は教室から出ていった。

せっかく時間をもらったんだし、誰かと話すか、と思った俺は周りを確認した。

丁度京香と目が合ったので京香と話すか。そう思った俺は立ち上がろうとしたのだが、それよりも早く古畑に声をかけられた。

「江神、今日予定あるか?」

無いな。

「放課後、学校探索をしないか?宮川と早乙女は既に誘ってある」

学校探索か。今後三年生活する校舎だし見ておいたほうがいいかもな。

 俺は快諾した。そのまま他愛も無い話を古畑としている間に時間になり、担任が戻ってきて解散指示。その後学校探索のために集まった。

「んじゃどこから行く?」

選択肢は校舎、旧校舎、部活棟の三択。

「旧校舎からでいい?例の七不思議の舞台が多いから」

京香がそう提案する。確か、立ち入り禁止の四階と、封鎖された図書室があるらしいな。もしかしたら他の七不思議も旧校舎にあるのかも知れない。

「そうだな、旧校舎から行くか」

旧校舎へ向かう。”旧”という単語があり、古い校舎のように思えるが、実際はそこまで古い校舎ではない。新校舎が最近出来て、混乱を避けるためとりあえず旧と付けただけだ。


旧校舎一階 技術家庭科系科目+音楽室が設置してあった。

旧校舎地下一階 地下と表現するべきなのか分からないがとりあえず地下と表現。美術系教室が設置

旧校舎二階 理科関係の教室。

 旧校舎地下から二階までは何の変哲も無い感じだった。そして三階にある七不思議の場所の一つ、図書室前に到着する。

立ち入り禁止表示などは無いが、当然カギがかかっているのだろう。

「空いてるわね」

不意に京香がドアに手をかけて引いたら普通に開いたではないか。どこが閉鎖された図書室なんだ。

「とりあえず入りましょう」

中は予想以上に埃っぽかった。明らかにここ最近利用されていないって感じだ。

「おかしな所が無いか探しましょ」

と言いながら京香が左側に向かって歩いていったので、俺はその逆、右側の本棚から見ていくことにする。

使われていないと言っても所詮はただの図書室。結局何も無いのが目に見えている。誰かいるかもしれないけどな。そんな軽い気持ちのまま隅の本棚にたどり着く。

 そして一番端の列の本棚を覗く、そこでは女生徒が本を読んでいた。

黒い長髪、日光が細かい埃に反射しているせいか、キラキラ光って見える

と観察しているとその女生徒と目が合った。話かけるか。

「こんなところで本を読むのって辛くないですか?」

使う人がいないせいでここまで埃っぽいんだ。こんなところで読書とか俺じゃ絶対ありえない。まぁ読書自体滅多にしないんだがな。

「えっ」

その黒髪少女は驚いた声を出す。そりゃこの図書室に誰か来るなんて思ってないよな。けど、京香が割りと大きい声出してたし普通気づくと思うんだが、本を読むのに夢中で気づかなかったんだろうか。その生徒の近くには本が積み上げられていた。

「もしかして、見えてる?」

意味が分からないことを言ってきた。

「何が見えてるっていうんだ?見た感じ変なモノは無いと思うんだが。なぁ静香」

視界の中にあるのは、少女、本棚、そして本くらいだ。何もおかしいものはない

当然静香も同意する。

「嘘、そんな・・・まさか」

そんなことを呟きながら、彼女は深刻な顔を浮かべている。一体何が何やら。

返答に困っている時におそらく図書室をぐるっと一周したであろう古畑視線に入った。

「江神、何か見つかっ・・・!?」

なんとなしに話しかけてきた古畑が何かに驚いたようだ。黒髪少女といい、一体何があるんだ?俺達から丁度死角になっている位置に何かあるんだろうか。でも古畑ってこっちのほうを見て驚いたよなぁ。そんなところに死角があるとは思えないぞ。

「おい、宮川!早くこっちに来い」

まるで大発見があったかのような声で京香を呼ぶ。何だってんだ。

そんなことをしている間も黒髪少女は本を持ったまま深刻な顔をしている。

「古畑君、何があっ・・・。えっ」

ひょいと現れた京香も、古畑同様こっちのほうを見た途端驚きの声を上げる。

こっちのほうを指差し

「本が・・・浮いてる」

本が浮いてる?やはり死角になっているところに何かあるのか…?

そう思って、古畑側に回ってみるがやはり本なんて浮いていない。

「どこだよ」

「見て分からんか。これだこれ」

古畑の指が示すのは黒髪少女の持っている本だ。ふざけてるのか?この人に失礼だろ。

「なに言ってんだよお前。この人に失礼だろ」

「この人って誰のこと言ってるのよ、あたし達以外誰もいないじゃない」

「そうだぞ江神」

古畑と京香が同調する。

 誰もいないって…

「だから目の前にいるだろ、本を持った黒髪の女の人が。な、静香」

「ユイ言う通り、ここに確かにいる」

そりゃそうだ。実際いるんだからな。というか実際本人に言ってもらえばいいじゃないか。

「誰だか知らないですけど、すいません。こいつらが迷惑かけて」

ネタなのか悪ふざけ知らんがいるのにいないように扱うのは失礼だ。知り合いならともかく、知らない人だし。

「大丈夫だから」

「ホラ、お前らも謝れよ。見ず知らずの人をネタにするのは止めろ」

だが、なぜか京香たちは混乱してるようだ。一体どうしたってんだ。

「あの・・・。多分こういうことだと思います」

彼女は本を本棚に戻した後、古畑のほうに向かって進む。それじゃ古畑とぶつかる・・・。普通の人間なら百パーセントそうなっていただろう。

しかし実際はそうはならなかった。女生徒は古畑とぶつかることなく通り抜けた。いやすり抜けた・・・?

どういうことだ?

 彼女は俺の目の前に来てこう言った。

「初めまして、私は山神綾乃。俗に言う幽霊です。なんであなた方に見えているのか知りませんが、はじめまして」


俺はその日、山神と出会った。




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