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よく使う「みんな」という言葉、この言葉の「みんな」とは果たして誰のことを指すのかと疑問に思い、俺が好きなタイプだった教師に聞いたことがある。(好きってのは恋愛的な意味ではないぞ)
子供が良く使うゲーム機を欲しがるとき、「みんな持ってる!」とか「普通は持ってる!」とか言うことだな。
「この場合の皆というのは、ごく狭い範囲にいる知り合いのことを指す。理由は簡単。赤の他人の情報なんて知ってるわけない。他人の情報を知っているとしてもせいぜい友人の友人までだ。」
と。そりゃそうだな。普通、他人の情報なんて知ってるわけない。友人のことだってあまり知らないのに。
しかも、「Aさん、あのゲーム機持ってるんだって~」ということは第三者間で話題になり、そこから「みんな」の一員になる場合があるが、逆に「Aさんあのゲーム機持ってないんだって」という情報は広まらない。そんな情報知っても面白くないし羨ましくも思わないからな。
何が言いたいかというとだ。当たり前だと思っていたことでも実は全然当たり前のことじゃない場合もあるってことさ。
普通の人間なら、「少し話がある」と言われ付いていったとして、せいぜい三十分くらいで済むと思うだろう。俺だってそう思った。けど、その認識は間違っていた。
まさか日を跨ぐなんてな。
チュン チュン・・・
どこからか、鳥の囀りが聞こえる。
そして降り注ぐ朝日。
朝だ。
俺は周囲を見渡す。最初に目に映ったのは、山神の寝顔だった。
幽霊も眠るんだな
そんなどうでもいいことを思いながら起き上がる。今日は日曜日。本当なら家で昼過ぎまで眠る日だ。
週に二回しかない休日の夜はをまさか学校で過ごすことになるとはな。
一日の始まりを知らせる目覚まし時計の音はしないし、登校した生徒のワイワイ声も聞こえない。今日は日曜だからな。
昨日俺と山神は、それぞれ図書室の三人掛け用のイスで寝た。疲れがたまり、家に帰る気力が無かったのだ。色々あった俺はそのまま夢の世界の住人になった。そのまま眠り続け今に至る。
目の前で気持ち良さそうに眠る山神の寝顔を眺めながら、昨日あったことを思い出すのだった・・・