ゆきうさぎちゃんのてぶくろ
ゆきうさぎちゃんのてぶくろは、可愛い真っ赤なもこもこてぶくろ。
手首のあたりは白のライン。ちっちゃな毛糸のボンボンが宙ぶらりん。
真っ赤なもこもこてぶくろで、ホッペを挟んでぱんぱんぱふぱふ!
それにつられてちっちゃなボンボンも、楽しそうにダンスします。
ぱんぱんぱふぱふ ずんちゃっちゃ
ぱふぱふぱんぱん ちゃっずんちゃ
そんな可愛いてぶくろがゆきうさぎちゃんは大好きなのです。
***
ゆきうさぎちゃんはお母さんからのお使いで、街にパンを買いにいきました。両手にはもちろん真っ赤なかわいいてぶくろをつけています。ひんやりとした雪の道も歩けるように、長ぐつもはきました。
ゆきうさぎちゃんはこの長ぐつも大好きなのです。さくさくさくと砂糖のような雪の道を長ぐつで歩くのが好きなのです。うきうさぎちゃんは長ぐつを履くときまって、自分の足あとで絵を描くのが好きなようで
さくさくさく さくさくくるりん
さくさくぴょんっ くるっさくさくっ
あっという間におおきな雪のお花の出来上がり!
首から下げているポシェットにそっくりな真っ白なお花に満足したゆきうさぎちゃんは、ぴょんぴょんぴょんと街に向かって歩き出しました。
***
夕暮れ時にゆきうさぎちゃんは、パン屋の街につきました。夕暮れなものですから、ぼぅっと街中のランプに光が点っています。そのぼんやりとした宝石がぶら下がっている街並みを、てくてくと歩いて行きました。パン屋までの道案内は、こんがり焼けたバターの匂いがご案内。おいしそうな茶色い香りのエスコートで、ようやくパン屋につきました。
きぃっと重そうな扉をゆきうさぎちゃんが開けると、ドアについているベルのカランカランという音と一緒に、パンの香りがぶわぁっとゆきうさぎちゃんを包みました。ゆきうさぎちゃんはこの匂いも大好きなのです。
カラカラカラン くんくんくん
ふわっふわっっ くんくんくん
ゆきうさぎちゃんはお腹一杯にパンの匂いを味わいました。
ゆきうさぎちゃんをみて、パン屋のおじいさんは「いらっしゃいませ」と声をかけました。ゆきうさぎちゃんはもこもこのてぶくろを外すと、首から下げていたお花のポシェットからお金を出して渡しました。パン屋のおじいさんは「この値段ならこれだね」といってバケットをカゴから出して、2本包んでくれました。
おじいさんは「はいどうぞ」といってゆきうさぎちゃんに包んだバケットと、おまけのパンをくれました。そのパンはデニッシュ生地のパンで真ん中にお花の形のオレンジジャムが乗っています。ゆきうさぎちゃんはぺこりとお辞儀をして、お店を出ました。
日も暮れてお星様とランプの光で溢れる街を、ゆきうさぎちゃんはうれしそうにそれを食べて帰りました。
***
お星様のしたをゆきうさぎちゃんは、家に向かって走っていきました。ゆきうさぎちゃんのお家は森の奥にあるものですから、急いで帰りたかったのです。
疲れたゆきうさぎちゃんは立ち止まり、はぁっと息を吐くと白い湯気がでました。ゆきうさぎちゃんはあったかいスープになったみたいだなぁと思いながらぴょんぴょんとお家に向かいました。
ゆきうさぎちゃんのお母さんは家の外で、ゆきうさぎちゃんの帰りをまっていました。やっとゆきうさぎちゃんがみえてきたましたが、どこかいつもと様子が違うようです。
それは大好きなてぶくろに穴が開いていたのです。どこかでひっかけてきたのでしょうか、少しほつれています。そんなぼろぼろになったてぶくろをゆきうさぎちゃんは悲しくて悲しくて泣いてしまったのです。
それに気付いたゆきうさぎちゃんのお母さんはゆきうさぎちゃんをぎゅーっと抱きしめながら、「えらかったねぇ、えらかったねぇ」と頭をなでてあげました。ゆきうさぎちゃんはお母さんも大好きなのです。
ぎゅーっぎゅっぎゅっ
ぎゅぎゅぎゅぎゅっー
ゆきうさぎちゃんはお母さんのお花の香りが気持ちよくて、うつらうつら。
そしてそのままお母さんの腕のなかでバケットを抱きながら眠っていきました。
次の日、ゆきうさぎちゃんの真っ赤なもこもこてぶくろにお花のアップリケがちょこんと咲いていましたとさ。
おしまい。