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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第七章 親子と不安

天地達が寮に戻って来ると管理人が入口に立っていた。

管理人は天地の姿を見ると大きな声を上げて駆け寄ってきた。


「天地君!風邪引いてるのに外出しちゃダメでしょ!」


「す、すみません・・・・。」


寮の前で管理人の説教が始まった。

始めは天地だけだったが、いつの間にか由美に飛び火してしまった。

天地も由美も黙って説教を聞いていた。

そして、管理人の目が天地と由美の背後に居る黒い背広のサングラスをかけた神谷に向いた。

管理人は神谷の前にやってきて言った。


「壕?」


「お久しぶりです・・・・。母さん。」


「13年ぶりね。大きくなったのね。」


「まぁ・・・・。」


「それにしても、駅まで迎えに行ったけど、全く気付かなかったわ。」


「直接、寮に来たんで・・・・。」


その言葉を聞いて管理人の表情が変わった。

そして、周囲の空気が一瞬にして冷たくなったのに天地達は気付いた。

逃げ出そうとした神谷だったが、その前に管理人の雷が落ちた。


「あなたが、寝込んでる天地を連れ出したのね!」


管理人の声が辺りに響き渡った。

幸いにも、この辺りは人気が無いため大きな声でも多少は平気だ。

そして、管理人の説教が長々と続いた。

説教が終った頃にはすでに夕方になっており、裕二と歩美が学校から帰ってきていた。

魁人と昴の二人は暫くこの寮で暮す事になったが、神谷の方はまたすぐに他の街に行ってしまった。

結局、天地は神谷といつ会ったか聞く事は出来なかった。

夕食の準備が出来るまで天地と裕二と魁人の男性陣は天地の部屋に集まっていた。


「僕は、村上 魁人です。これから、よろしくお願いします。」


「俺は倉敷 裕二。ハンターじゃないけど、ヨロシクな。」


「へ〜っ。裕二君はハンターじゃないですか。」


「ハンターの修行は受けたが、色々あってな。あと、呼び捨てでいいから。」


「わかりました。」


魁人はそう言いながら丁寧に頭を下げた。

天地は机の前の椅子に座りテーブルを挟んで向かい合って座っている裕二と魁人を見ていた。


「なぁ。お前、なんでそんな服装してるんだ?」


今時の若者風の服装の魁人にそう言った。

すると、魁人は笑いながら頭を掻いて言った。


「神谷さんに着せられて・・・・。」


「そんなの断れば済む話じゃないか。なぁ。」


「そうだな。」


天地の言葉に裕二が腕を組みながら縦に頷いた。

そんな二人に対して魁人は複雑な表情で言った。


「確かに、そうなんですが・・・・。僕って内気だから・・・・。」


「その服装じゃあ。そうは見えないな・・・・。」


「でしょ。そのための服装なんです。」


魁人はニコニコしながらそう言った。天地と裕二は少し呆れた。


「そう言えば、お前の武器は槍だっけ?」


「水鮫神です。」


「神が付くって事は、五龍神と同じか?」


裕二のその質問に魁人は軽く首を縦に振った。

そして、水鮫神をテーブルに置いた。


「この槍は、五龍神に封じられる水龍神の鱗から生まれた鮫、水鮫を封じた槍なんです。」


「へぇ〜。それじゃあ。親子みたいな物か?」


「まぁ、そうですね。」


「それじゃあ。神谷の持ってた奴もあの女の持ってた奴もか?」


天地はそう言いながら水鮫神の刃を見ていた。

魁人は頷きながら語った。


「そうですね。神谷さんの火虎神は火龍神から生まれた火虎を封じた棍。

 昴さんの風鳥神は風龍神から生まれた風鳥を封じた弓。

 他に土龍神から生まれた土蛇を封じた鉤爪。

 雷龍神から生まれた雷犬を封じた大剣があるそうですよ。」


「お前、何でそこまで詳しいんだ?」


「勉強しましたから。」


魁人は自慢そうな顔で笑みを浮かべた。天地と裕二の二人は呆気に取られた。

その頃、由美・歩美・昴の女性陣は大浴場にいた。

オウガとの戦いで汗を掻いた昴が由美と歩美を誘ったのだ。

今日は一般の客は無く、三人だけの貸しきり状態だった。

由美は湯船の端の角の方で何やらボンヤリとしていた。

その様子を少し離れた場所から歩美と昴が観察していた。


「どうしたのかしら?」


「いつもあんな感じじゃないの?」


「うん。いつもはもっと真ん中の方に居るけど・・・・。」


「悩み事かな?」


「どうだろう?」


歩美と昴の二人は小声でそう話していた。

由美はため息を吐き湯船に潜った。黒髪が水にばっと広がった。


(私は・・・・。弱い・・・・。今回も、この前も・・・・。)


湯船に潜った由美を見て歩美と昴は首をかしげた。


「何してるのかしら?」


「もしかしたら、恋の悩みじゃない?」


「恋?」


「そうよ。愛する人を思ってあんな風にやってるのよ。」


昴は目を輝かせながら右手でガッツポーズをしていた。

歩美は苦笑いを浮かべながらそんな昴の顔を見ていた。

暫くすると由美が顔を出した。濡れた髪から水が流れた。


「ああやって、涙をごまかしてるのよ!」


「そうかしら?」


「絶対そうよ。」


「何でそう言い切れるの?」


「私もそうだったから・・・・。」


そう言って昴は自分の恋の話を始めた。

歩美は仕方なく昴の話を聞く事にした。

暫く大浴場の天井を見つめながら由美が考えた。


『私は・・・・。邪魔?』


『役に・・・・。立ってない?』


『足でまとい?』


『疾風丸・・・・。私じゃダメなの・・・・。』


色々な想いが胸の中にあった。

天地に助けられ、魁人と神谷に助けられ・・・・。

自分はこれから、オウガと戦っていけるのだろか。

そんな不安が由美にはあった。



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