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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第五十九章 最終決戦の終幕

 静かに五龍神が鞘から抜かれ、刃が擦れて音をたてる。

 由美は天地から離れて、睨み合う二人を見ていた。風が吹き、床に広がる血の匂いが舞い上がる。

 漸に五龍神の刃先を向けて、ゆっくりと口を開いた。


「さぁ、始めるか。これが、最後の戦いだ」

「いいだろう。これで、僕が勝てばもう誰にも邪魔させない」

「勝てばな」


 天地は五龍神の刃に触れると、ゆっくりと龍の刻印を指でなぞった。五龍神は一瞬で火龍神に変わっていた。

 炎を纏った火龍神は、刃を真っ赤に輝かせている。


「火龍神か。絶鬼にも歯が立たなかった火龍神が、俺に通じるのか?」

「それは、自分の体に聞いてみな!」


 漸に向って天地は走り出した。迫ってくる天地に長い腕を振り抜く。鋭い爪が天地に襲い掛かるが、それを火龍神で防いで漸の足元までやってきた。

 燃え盛る炎が火龍神の刃を真っ赤に染めた。


「天まで昇れ! 炎龍昇!」


 床を蹴ると火龍神を覆う炎は、天地の体を覆いそのまま空に舞った。漸の体はいつの間にか下から上に切り付けられ、血飛沫が勢いよく飛び散った。

 フラフラと後退した漸は、宙に舞う天地に向って鋭い爪を振り下ろす。火龍神は一瞬で土龍神に変化し、天地は力を集めて叫んだ。


「我が身を護れ! 土壁護陣どへきごじん


 天地を土の壁が包み込み、振り下ろされた漸の爪は土の壁に突き刺さった。土の壁は崩れていき、なかから風龍神を構えた天地の姿があった。

 刃の周りに風が集まっている。


「大気を切り裂け! 真空鎌鼬!」


 鋭く風龍神を振り抜いた。風龍神に集まっていた風は、崩れる土の壁を木っ端微塵に、切り裂いてそのまま漸の体を切り裂いた。


「グオオオッ!」


 鋭い風の刃を胸に受け、漸は呻き声をあげた。胸を横一線に切り付けられ、体には十字に切れ目が入っている。血がドクドクと流れ出て、辺りを血の海の様に染めていく。

 倒れそうになる漸だが、すぐに踏み止まりゆっくりと床に着地した天地を見下す。


「グオオオ……。この程度……ぐふっ」


 漸の口から大量の血が吐き出された。降り掛かる血の雨を、天地は後ろに飛んでかわすと、ゆっくりと風龍神を雷龍神へと変化させた。

 青光りする稲妻が雷龍神の刃の周りを弾け回る。その天地に向って、漸が右足を振り上げた。その大きな足で天地を踏み潰そうとしているのだろう。


「くたばれ!」

「死ぬのは、俺じゃない! お前だ!」


 腰を落とし雷龍神を下段構えすると、振り下ろされる漸の右足を見上げた。雷龍神に集まる稲妻は更に威力を増し、バチバチと大きな音をたてる。


「大気を揺るがせ! 青龍雷撃斬!」


 勢いよく雷龍神を振り上げると、稲妻は一瞬で龍と化し振り下ろされた漸の右足に直撃した。


「グウウウウッ!」


 右足に凄まじい稲妻が走るが、漸は歯を食い縛りそれを堪えて足を振り下ろした。勢いよく天地を踏みつけた漸の右足が、ゆっくりと二つに裂け崩れ落ちた。その崩れ落ちる足の裏には、土の壁があり零れ落ちる血を防いでいる。


「ば……、馬鹿な……」


 左足一本で後退する漸だが、巧くバランスをとる事が出来ずにいた。床一面に広がる漸の血は、徐々に微粒子と化していく。漸の死が近付いている事が、よく分かった。


「終わりだな……」

「まだだ! まだ……」

「往生際の悪い奴だ」


 天地はそう言って五龍神を構えた。鋭い五龍神の刃が、薄らと光り輝いた。五龍神を構えた天地に向って、漸は鋭い爪を振り抜いた。先程より、威力の落ちた漸の攻撃を、五龍神で軽々と防いだ天地は、そのまま漸の腕を切り裂いた。

 切り落とされた腕は、床に転がり石化して消滅した。もう漸の体から血は出ない。出るのは真っ赤な砂の様な粉だけだった。


「グオオオッ! 僕はまだ!」

「これで最後だ!」

「黙れ!」

「天高く昇れ!」


 天地はそう言って五龍神に力を集めた。赤・青・緑・白・金の5色の光が、代わる代わるに放たれる。


「天龍昇!」


 床に五龍神を勢いよくさした。すると、大地は揺れ、風が吹き荒れ、海は波を荒げ、城の周りはどこからとも無く炎が燃え上がり、暗雲の中では稲光と雷鳴が轟く。


「な……何が……」

「五龍が天に昇り、地に帰る」


 天地はそう言って、五龍神を床から抜いた。その瞬間、漸の真下の床に5つの光の円が出来た。そして、その光の円をぶち破り5体の龍が、そのまま漸の体を貫き天に昇った。

 漸の魂を喰らい、天に昇った5体の龍は、暗雲の中に消えていった。

 魂を喰われ完全に石化した漸を見て、天地はゆっくりと床に腰を下ろした。


「ダ〜ッ……。しんど……」


 そう呟いて、天地は空を見上げた。まだ、暗雲が立ち込めているせいで、光は差し込まず暗かった。ボーッとしている天地に、傷だらけの仲間が駆け寄った。


「終ったようだね……」

「おう、絶鬼。随分、派手にやられたみたいだな」


 天地は笑いながら絶鬼にそう言った。絶鬼もそれに笑い返した。笑っている二人に、弱々しい神谷の声が聞こえた。


「ウオ〜〜イ……。俺を病院に……」


 肩からは大量の血が流れ、今にも死にそうな顔をしている。流石に血を流し過ぎたのだろう。


「早くしてくれ……」

「いや〜っ。残念ながら、ここに病院は無いな」

「な……何……」

「まぁ、もうすぐ雨が降る。癒しの雨が……」


 落ち着いた様子で天地はゆっくりとそう言った。そして、暗雲立ち込める空を見上げた。それにつられて、他のメンバーも空を見上げる。すると、暗雲の中で何かが弾けた。

 暗雲は一気は吹き飛び、蒼い空がパッと広がった。空からはキラキラ光る粉が、雪の様にフワフワと地上に降り注いだ。


「……何?」


 小さな声でそう言った由美は、右手を差し出した。その右手にゆっくりと光る粉が落ちた。

 赤い光は怒りを静め、青い光は優しく傷を癒す。

 碧の光は大地を潤し、白い光は植物を蘇らせる。

 そして、金色の光は破壊された建物を復元する。



「う〜っ。駄目だ〜。死ぬ〜」

「あーっ、うるさい!」


 天地は神谷に怒鳴った。神谷が何度も「死ぬ〜」だの「もう駄目だ」だの言うので、天地もそろそろ本気でうるさいと思っていた。多分、周りに居る誰もがそう思っているだろう。

 その時、魁人が階段をあがってやってきた。そして、天地の顔を見て叫んだ。


「天地君!」

「おっ、魁人。どこ行ってたんだ?」

「ちょっと1階に……。じゃなくて、漸は?」


 少し間が空き、一斉に笑いが起きた。真剣な顔をしていた魁人も、流石にそれには間の抜けた表情になった。


「えっ、ちょっと、何?」


 戸惑いを隠せない魁人を無視して、皆は笑い続けた。

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