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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第四章 火を司る龍 火龍神の目覚め

天地は五龍神から何の力も感じない事に気付いた。

哀の鬼もそれに気付いていた。


「その刀、何の力も持っていないようだね。それなら、さっきの女ハンターの方がまだましだったよ。」


そう言って大声で笑い始めた。

五龍神の力がなぜ目覚めないのかはわからなかったがそれでも、戦うしかなかった。

二体の怒の鬼は左右に分かれて天地を挟み撃ちにした。

天地の右には鋭い牙と爪を持ったオウガ。左には巨大な金棒を持ったオウガ。

どちらからも、凄まじい力を感じた。


(五龍神は目覚めてないが、やれる所までやる・・・・。)


五龍神の柄を両手でしっかりと握り締めて両方のオウガを交互に見た。

同時に何体ものオウガと戦うのは初めてだった。

オウガに挟まれ迂闊に動く事の出来ない天地は相手の出方を見てから動くしかなかった。

天地の右のオウガが哀の鬼をチラッと見た。

そして、哀の鬼が目で合図すると同時に天地に向って右のオウガが向ってきた。

天地は右から来るオウガに体を向けた。オウガの鋭い爪が天地に襲い掛かった。

天地はそれをジャンプして避けた。だが、次の瞬間大きな金棒が天地に襲い掛かった。

空中で身動きの取れない天地は金棒に殴られ勢いよく吹き飛んだ。

吹き飛んだ天地の体は木々を貫き地面に落ちた。天地の体がぶつかった木々は大きな音をたてて倒れていった。


「グフッ・・・・。」


天地は口から血を吐きゆっくりと立ち上がった。

金棒を五龍神で受け止めることが出来たがその衝撃は凄まじくすでに立っているのがやっとだった。

しかし、五龍神には傷一つなく、五龍神に彫られた龍の色が徐々に変わり始めていた。

フラフラの天地を見て哀の鬼が不適に笑いながら言った。


「フフフッ。あの金棒を喰らってまだ立ちますか。でも、もう限界の様ですね。」


「そうでもないさ・・・・。」


「口ではそう言っても、体の方は正直ですよ。」


哀の鬼は二体のオウガを引き連れて天地の方に向ってきた。

確かに天地の体はすでに限界だった。朝から色々とあり過ぎたせいでさっきの一撃がかなり効いていた。

しかし、天地は由美から注意を外れる瞬間を待っていた。

裕二の方を見て目で合図を送った。裕二もそれを見逃さなかった。

一気に駆け出し由美を抱きかかえ疾風丸を地面から抜くと裏道の方へ走りだした。


「くっ!お前達!あいつらを逃がすな!」


哀の鬼がそう言って二体のオウガに指示を出したが天地がボロボロの体で彼等の前に立ちはだかった。


「悪いが、ここは俺が通さねぇ・・・・。」


「フッ・・・・。いいでしょう。あなたから先に殺してあげましょう!!」


そう言って哀の鬼は金棒を持ったオウガに指示を出した。


「あなたの金棒で押し潰してあげなさい!」


「ウガアアアアッ!!」


金棒を振り上げて天地の頭の上に振り下ろした。

大きな音と共に地面が大きく揺れた。その振動は森林を抜けた裏道まで届いた。

裕二は振り返り天地の居るほうを見た。


「さぁ、逃げた者を追いましょう。」


哀の鬼がそう言って裕二達を追いかけようとした時だった。

金棒の下から天地の声が響いた。


「ま、まだだ!!」


その声と同時に真っ赤な光が地面と金棒の隙間から溢れ出てきた。

光が完全に消えたその瞬間、オウガの金棒が吹き飛び宙に舞い再び地面に突き刺さった。

そして、先程まで金棒のあった地面は穴が開いてあり、そこに天地が立っていた。


「やっと・・・・。五龍神の力の一つが目覚めたぜ・・・・。」


天地はそう言って笑みを浮かべた。右手に持った五龍神の刃の龍が赤く輝きを放っていた。

哀の鬼は驚きを隠せなかった。天地はゆっくり穴から出ると三体のオウガを見た。


「さっきは、散々やってくれたな・・・・。行くぜ!!」


「死に損ないめ!!行け!!」


哀の鬼は二体のオウガに指示を出した。鋭い爪が天地に襲い掛かった。

天地はそれを五龍神で受け止めた。

すると、五龍神の刃が真っ赤になり、オウガの鋭い爪を斬り落とした。

オウガの斬られた爪は地面に突き刺さり消滅した。


「な!何だ!あの刀は!!こいつの爪を・・・・。」


「これは、五龍神の火を司る龍。火龍神だ!!」


そう叫ぶと天地は鋭い爪を持ったオウガの体を切り裂いた。血が飛び散りオウガは消滅した。

哀の鬼はもう一体のオウガに指示を出した。

オウガは地面に刺さった金棒を手にとると、天地の頭の上に振り下ろした。

天地は火龍神で金棒を受け止めた。

すると、硬くて重い金棒は火龍神の刃に触れると真っ二つに裂けた。

驚き後ずさる怒のオウガを火龍神で切り裂いた。オウガの体は一瞬で切り裂かれ消滅した。

天地は哀のオウガの方を見て火龍神の刃先を向けた。


「次はお前だ・・・・。」


その時、体が急に重くなり目眩を起こし地面に右膝をつき、火龍神を地面に突き刺し何とか体を支えた。

全身を襲う痛みが激しく動く事もままならなかった。それを見た哀のオウガは不適に笑い始めた。


「フ・・フハハハ八!!驚かせやがって!」


そう言いながらオウガはゆっくりと天地に歩み寄ってきた。

そして、天地の前で立ち止まり天地を見下した。


「さすがにアレだけの攻撃を受ければ、もう動く事も出来ないだろう。」


「ハッ・・・・。自分じゃ何も出来ないのによく言うな・・・・。」


天地のその言葉にオウガは怒りをあらわにして、天地を蹴り飛ばした。

体に力の入らない天地は軽く吹き飛ばされた。その後も何度も何度も天地を蹴り飛ばした。


「ハァ・・ハァ・・・・。最後は自分の刀で斬られて死ぬんだな・・・・。」


そう言って哀のオウガは体をオウガの姿に変えて火龍神の柄を握った。

この時を天地はずっと待っていた。ゆっくりと体を起こして叫んだ。


「焼き尽くせ!火龍神!」


その声に共鳴する様に火龍神の刃の龍が輝いた。オウガはその輝きに柄から手を離した。

天地は力一杯叫んだ。


「獏円陣!!」


すると、火龍神の回り半径5mの大きな火柱が立ち上がった。オウガは逃げようとしたがもう間に合わなかった。

一瞬にしてオウガは消滅した。その爆風が天地の体を吹き飛ばした。

天地は体を激しく木にぶつけた。

火柱が消えた時には火龍神は元の五龍神に戻っていた。


「やったか・・・・。」


そう呟き目を閉じた。暫くして草の上を走る足音が聞こえた。

天地が目を開けてその方向を見ると、そこには由美を抱えた裕二の姿があった。

裕二は天地に気付いて駆け寄った。


「だ、大丈夫か?」


「まぁ、全身ズキズキして動けないけどな・・・・。」


「お前が無事で何よりだ。」


裕二はそう言って笑い出した。それにつられて天地も笑った。

結局この日、天地・裕二・由美の三人は学校には行かなかった。

天地も由美も動く事が出来ないほどの傷を負っていたが次の日にはほとんど回復していた。


「それにしても、二人とも凄い回復力だな。」


「まぁ、ハンターとして色々訓練したからな。」


「・・・・。」


天地・裕二・由美の三人は一緒に学校に向っていた。

相変わらず、学校に向う道は静かで天地と裕二の話し声だけ聞こえていた。

二人は珍しく由美と一緒だが、由美はまだ一言も話していなかった。

裕二は由美に話しかけた。


「葉山さん、どうかした?」


その問いに由美はチラッと裕二の方を見たがすぐに目を逸らし前を向いた。

そして、暫くして小声で言った。


「変な夢・・・・。見たの・・・・。」


由美の声は小声だったが、静かな道だったため聞き取る事が出来た。


「へぇ〜っ。どんな夢?」


その話に裕二は興味深々だった。天地も何故か興味が湧いた。

二人の視線に気付いた由美は小声で話した。


「助けられるの・・・・。」


「助けられる?」


「誰にだ?」


天地と裕二は違う質問を同時にした。縦に首を振り、由美は言葉を続けた。


「お邪魔ムシに・・・・。」


「お邪魔ムシ?」


裕二がオウム返しの様にそう呟くと横から殺気の様なものを感じた。

そこを見ると天地が怒りをあらわに今にも由美に襲い掛かろうといわんばかりの表情をしていた。それに、気付き裕二はすぐに天地の体を押さえた。


「誰が!お邪魔ムシだ!!」


大声で天地は由美に怒鳴った。しかし、それを無視して由美は歩き続けた。


「コラー!!待て!俺はな!!聞けー!!」


その日、静かな道には天地の怒鳴り声が響き渡った。

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