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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第四十四章 それぞれの戦い

 階段の上に居る2体のオウガを見上げる天地達に向って、ボーガンと斧を持ったオウガが口を開く。


「俺は六鬼神の天邪鬼」


 天邪鬼が名を名乗ると、その横の三日月形の剣を持ったオウガもゆっくりと口を開いた。


「俺は、六鬼神。悪鬼」

「ここから先に進みたければ、俺達を倒して進むことだ」


 ボーガンにゆっくり矢をセットする。それを見て、天地達も武器を構える。両者、睨みあったまま相手の出方を見ていた。最初に動いたのは天邪鬼だった。階段を飛び降りながら、天邪鬼はボーガンから矢を何発も放つ。天地達はそれを避けるためにバラけた。

 天地と由美は右に、神谷と魁人が左に、昴と神宮寺は後方に、三上は前方にバラけていた。その真ん中には天邪鬼が着地し、目の前にいる昴と神宮寺に襲い掛かる。


「俺を楽しませてくれよ!」

「昴! 離れて!」


 ボーガンを斧に持ち替え、勢いよく振り下ろす。素早く腰からナイフを取り出した、神宮寺はそれを受け止める。澄み渡る様な音色が響く。その後、ガチガチと鉄と鉄の擦れる音が響いた。

 歯を食い縛りながら、右手で持ったナイフで神宮寺は斧を受け止めていた。神宮寺の細い腕が小刻みに震える。


「グッ……」

「いつまで、もつかな?」


 そう呟いた天邪鬼に対し、口元に笑みを浮べた神宮寺は斧を押える力を緩めて、後方に跳ぶとその場で伏せた。急に力を緩められた天邪鬼は、前方に倒れそうになる。今まで、神宮寺が居て気付かなかったが、天邪鬼の目の前には巨大な風の矢を構える昴の姿があった。


「射抜け! 大燕!」


 巨大な風の矢を放つ。巨大な風の矢は、回転しながら一直線に天邪鬼の頭に飛んでいく。凄まじいスピードで飛ぶ巨大な風の矢を、天邪鬼は体を右に逸らしてかわした。そして、天邪鬼の真後ろにした、三上に向かっていった。

 巨大な風の矢に気付いていない様子の三上に、天地が叫んだ。


「三上さん! 後ろ!」

「ンッ?」


 三上は後ろを見ないで、ライフルを肩に乗せたまま引き金を引いた。銃声と共に、巨大な風の矢が弾け、微風が三上の傍を吹きぬけた。三上のライフルから放たれた弾丸は、見事に天邪鬼の左肩に直撃していた。


「グッ!」


 天邪鬼の体が床に倒れた。左肩からは血が流れ出ている。ゆっくりと、三上の方を睨み付けて、怒りで震える声で言う。


「よくも……」


 三上に向かっていこうとする天邪鬼の背中に、鋭い風の矢が突き刺さる。天邪鬼が背後を見ると、風鳥神を構えた昴と、ナイフを持った神宮寺が立っていた。


「あなたの相手は私達でしょ?」


 神宮寺が微笑みながらそう言う。天邪鬼の怒りが頂点に達し、斧で二人に襲い掛かる。だが、澄み渡る音色が何度も響いていた。



 その頃、悪鬼と睨み合う天地・魁人・神谷・由美・三上の5人。悪鬼は三日月形の剣を構えたまま、5人を見下したまま動かないで居る。悪鬼は5人を見ながら口を開いた。


「俺に、切り刻まれたいのは、どいつだ?」

「俺が……」

「しょうがない。僕が相手をするよ」


 天地の声を遮って、三上が眠そうにそう言って銃口を悪鬼の方に向ける。何か言いたげな天地に向って、三上が眠そうに言った。


「君は、絶鬼と戦わなきゃいけない。だから、ここは僕が相手をするよ」

「でも」

「大丈夫。近距離戦はやりなれてるから」


 微笑む三上が、悪鬼に向って引き金を引く。悪鬼は宙を舞い弾丸をかわす。その瞬間、三上が叫んだ。


「今の内に先に進んで」

「わかりました。ここは任せます」


 天地と由美が先に階段を上がり、その後に魁人と神谷が続いた。

 悪鬼は床に着地して、三上の方を見た。


「お前が一人で戦うのか?」

「そうだね」


 やる気の無さそうな声で、そう言いながら三上は欠伸をしていた。その三上に三日月形の剣が襲い掛かって来る。だが、三日月形の剣は空を切り、悪鬼は体勢を崩す。その瞬間、三上が悪鬼に銃口を向けて引き金を引く。銃声と共に弾丸が銃口から飛び出す。だが、その弾丸を悪鬼は三日月形の剣で弾く。


「あまいな……」

「君もね……」


 悪鬼の弾いた弾丸は壁に当たり、跳ね返り悪鬼の右脹脛に突き刺さる。血飛沫が舞い悪鬼は膝をついた。


「グッ……。これを、狙っていたと言うのか……」

「本気で行かなきゃ殺されそうだからね」

「そうか。なら、俺も本気を出そう」


 そう言うと、悪鬼の目の色が変わった。そして、一瞬にして三上に斬りかかってきた。

 三上はその刃を紙一重でかわしていった。



 静かで長い廊下に響く4人の足音。どこに絶鬼が居るか分からないが、とりあえず真っ直ぐ走っていた。


「おい! どこに絶鬼が居るのかわかるのか!」

「知らないけど、多分一番奥の部屋だよ!」

「多分てな!」


 呆れながら神谷は天地の後ろ姿を見ていた。暫く歩いていると、大きな扉の前に辿り着いた。多分、ここに絶鬼が居る気がした。


「ここが、一番奥の部屋か」

「そうみたい……」

「だが、本当にここに絶鬼が?」


 神谷はそう言って首を傾げるが、天地は何も言わずに扉の取っ手を握る。


「エーッ!」

「おい! 天地!」


 驚きながら魁人と神谷はそう言ったが、扉は軋みながら開いていく。その奥には、赤絨毯が一直線に伸びている。そして、その先には椅子に座った白装束の絶鬼が居た。白髪が風で揺れて、細目でこちらを見ていた。


「……絶鬼」

「久しぶりですね」


 楽しそうに微笑みながら絶鬼がそう言う。やはり、天地が来るのを待っていたのだろう。ゆっくり、立ち上がる絶鬼の傍に、阿修羅と夜叉が現われた。そこに、漸と千春の姿は無かった。神谷がタバコを口に銜えながら言い放った。


「えらく余裕みたいだな」

「えぇ、そうですね。僕らは、君達に負ける気がしませんから」

「その強気が命取りととならなきゃいいがな」

「そうですね。それじゃあ、力の差を見せ付けましょうか?」


 絶鬼が笑みを浮べたまま、阿修羅と夜叉に合図を送る。阿修羅と夜叉が同時に突っ込んで来る。阿修羅の槍は、神谷の火虎神で受け止められた。一方、夜叉の刀は魁人の水鮫神に止められた。その瞬間に辺りに鉄のぶつかりあう音が響く。


「天地! お前と由美は絶鬼と戦って来い」

「わかった。後は任せる」

「天地君も由美さんも気をつけて」

「……うん」


 天地と由美は、魁人と神谷の間を抜けて絶鬼の方に向かっていった。槍を押さえる火虎神を凄まじい力で弾き返す。弾かれた神谷のお腹に向って、阿修羅の槍が鋭く突き出される。その槍の刃を火虎神で、床に叩き落す。槍は凄まじい音をたてながら床を砕き、破片を飛び散らせる。神谷は距離をとってタバコの煙を鼻からゆっくり吐く。


「怖いね。闘志剥き出しだね」

「貴様、俺を馬鹿にしてるのか?」

「別に、馬鹿にはしていないさ」


 そう言いながら神谷は笑みを浮べる。完全に阿修羅を馬鹿にしている。



 一方、魁人と夜叉は武器を交えたまま睨みあっていた。だが、流石にらちがあかないと思った魁人と夜叉は、同時に後方に下がった。夜叉の刀が不気味に輝きを放っている。


「拙者は、お主では無く、天地殿と戦いたかったのだが」

「そう。でも、天地君には戦うべき相手が居るからね」

「では、お主が拙者を楽しませてくれるのか?」

「さぁ? それは、わからないな」

「そうか。ならば、行くぞ」


 間合いを縮めると、不気味な輝きを放つ刀が振り下ろされた。それを、魁人は水鮫神の刃で受け止めた。刃と刃のぶつかる音が響き、火花が散った。何度も、刃と刃のぶつかる音を響かせながら、互角の戦いを繰り広げていた。



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