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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第三章 知識の鬼

夜も深まり、すでにどの家々も電気が消えポツポツと立つ街灯の光だけが路地を照らしていた。

そんな路地を一人の女性が歩いていた。

歳は20代半ばといった所だろう。残業で帰りが遅くなってしまったのだ。

人通りも無く、とても静かでたまに聞こえる野良犬の遠吠えがとても大きく聞こえた。

暫く歩くと街灯の下に一人の少年が座りこみすすり泣いていた。

少年はとても小さく小学生くらいだろうか。彼女は気になりその子に声をかけた。


「君、こんな時間に何してるのかな?」


彼女の問いにその子は何も答えずただ泣いているだけだった。

困り果てた女性は少年の横に腰を屈めた。そして、今度は違う質問をした。


「どうして泣いているのかな?」


その子はその質問に泣くのを止めた。そして、ゆっくりと彼女の方を向いていった。


「お腹が空いて動けないんだ。君の命食べさせて!!」


少年はそう言って大きな口を開いた。彼女は悲鳴を上げる暇もなく少年に丸呑みされてしまった。



翌朝、沢山の家が立ち並ぶ路地を天地はランニングをしていた。どの家もまだ明かりがついていなく、少し薄暗いがとても静かだった。

この路地は車が二台ギリギリで通れるくらいの広さしかなく、滅多に車は通らなかった。

天地がランニングをするのには訳があった。別に太っているわけじゃない。体力をつけるためだ。

オウガと戦うにはやはり体格が小さいので、(と言っても170cmはある)ある程度素早く動き戦うので、体力をかなり消耗するからだ。

暫くして天地は神社の前にやってきた。何段階段が続いていた。

それを見て、天地は気合を入れた。


「うっし!!」


そして、天地は神社の階段を何度も往復した。

暫し時を忘れていた天地は人通りが多くなっているのに気付き、携帯で時間を見た。


「ゲッ!いつの間に、こんな時間に!!」


天地は急いで寮に戻った。その頃、寮では裕二・由美・歩美の三人が管理人の作った朝食を管理人の部屋で食べていた。

裕二は由美と向かい合わせに座っていて右側に歩美が座っていた。

裕二の持っているお椀が空なのに気付いた管理人は裕二に声をかけた。


「裕二君。ご飯、入れようか?」


急に声を掛けられた裕二は声が少し裏返った。


「は、はい・・・・。」


天地が居ないので男が一人しかいないため、裕二は落ち着かなかった。

管理人がお椀にご飯を入れて持ってきた。裕二はそれを受け取り静かにご飯を食べ始めた。

そんな裕二の目の前で天地の朝食のオカズに手を出している人物がいた。

それは、由美だった。

由美は朝食に出されたサバの味噌煮を気に入ったのか、自分の物を食べ終えて天地の物を食べていた。

裕二の視線に気付いたのか由美は箸をとめた。

由美と目が合った裕二は苦笑いを浮かべながら聞いてみた。


「それ、天地のだよね・・・・。」


「・・・・うん。」


箸を加えながらそう呟き頷いた。


「知ってるのに食べたの?」


「・・・・来ないから。」


「でも・・・・。」


何かを言おうとした裕二の言葉を歩美が横から遮った。


「別にいいんじゃない?どうせ、あいつ朝ご飯食べないんだし」


「まぁ、そうなるだろうけど・・・・。」


裕二は黙々とご飯を食べる歩美を見た。由美は裕二の視線が歩美に行くと同時に天地のサバの味噌煮を食べ始めた。

裕二は何も言えずに静かにご飯を食べた。


三人が朝食を食べ終わると同時に天地が寮に戻ってきた。服は汗でビショビショになっていて、息も荒かった。天地は寮の出入口で倒れこんだ。

そんな天地に管理人がコップ一杯の水を持ってきた。


「毎朝これじゃあ、体が持たないわよ」


「はぁ・・はぁ・・・・。す・・すみません・・・・。」


コップを受け取ると水を飲み干した。と、そこに制服を着て鞄を持った歩美がやってきた。

歩美は汗だくの天地を見るなり、表情を引きつらせた。


「ちょ、ちょっと・・・・。そんな格好で寮の前に倒れこまないでよ」


何か言い返そうとした天地だったが、酸欠状態のせいで上手く頭が回らなかった。

息を整えた時にはさすがに歩美の姿は無かった。


「ふ〜っ・・・・。やっと落ち着いたか・・・・。」


そう言って天地は立ち上がった。そして、階段を何段か上がった所で管理人に呼び止められた。


「そうそう、天地君。」


天地は振り返り管理人の方を見た。


「何ですか?」


管理人は満面の笑みを浮かべながら天地を見ていた。その時、天地は後ろから頭を殴られ階段から落ちた。

誰がやったか大体検討は付いた。天地は階段に仰向けに倒れたまま階段に居る人物を見た。

やはり、そこに居たのは由美だった。


「何しやがる」


「・・・・。邪魔だったから・・・・。」


静かにそう言って由美は天地を見た。そして、天地の目線で由美はある事に気付いた。

制服のスカートは短いため、天地の体勢からでは由美のパンツが丸見えだったのだ。

顔を赤面させて由美はスカートを押さえた。


「やっと気付いたか」


天地はそう言って笑みを浮かべながら由美を見た。その瞬間、由美が階段を飛び降り持っていた布で来るんだ刀を出した。

さすがにこれはやばいと思った天地はすぐに立ち上がりその場を離れた。

だが、ランニングの疲れで足が縺れた。その隙を突いて由美が一瞬で間合いを詰めて天地の意識は一瞬にして遠のいた。


あの後、意識の無くなった天地をボコボコにして由美は学校に向った。

体中に痛みを感じながらも天地は学校へ行く仕度をした。


「オイオイ・・・・。大丈夫かよ?」


「これが、大丈夫そうに見えるか?」


「・・・・いや。見えないな。」


天地は裕二の肩を駆りながら寮の階段を下りていった。この時、すでに天地と裕二の遅刻は決定していた。

やっとの事で一階に辿りついた二人に気付いた管理人が声を掛けた。


「天地君。さっきは大丈夫だった?結構派手にやられていたけど。」


「えぇ・・・・。一瞬三途の川に足が浸かりましたよ・・・・。」


「あら。その歳で三途の川を渡りそうになっちゃったの?」


管理人はそう言いながら楽しそうに笑っていた。実際、管理人が止めなければ三途の川を渡る事になっただろう。


「そうだ。忘れる所だったわ。アレが届いてるわよ」


「アレ?」


天地の横で裕二が不思議そうに首を傾げた。

そんな裕二を尻目に天地は嬉しそうに声を上げた。


「本当ですか!アレが届いたんですか。」


「えぇ、早速持ってくるわね。」


「はい!」


管理人は奥の部屋に行き1mほどの長さのある細い木の箱を持ってきた。

傷の痛みも忘れ、嬉しそうに箱を受け取った。

その箱に何が入っているのか裕二には全くわからなかった。

そして、箱が開いた時初めて中の物がわかった。

箱の中には布に包まれた一本の刀が入っていた。これは、天地のオウガと戦うための武器であった。

天地は刀を鞘から抜くと刃を眺めていた。その刃には龍の形が彫られていた。

その龍は不思議な色を放っていて、裕二はそれに見とれてしまっていた。

天地と裕二の二人が刀に見とれているので、管理人が声を掛けた。


「二人とも、遅刻決定だからって、のんびりしてちゃダメよ。」


その言葉で二人は今の状況を思い出した。天地は刀をしまい、裕二の方を見た。


「急ぐぞ!裕二!」


「あ、あぁ・・・・。」


二人は慌てて寮を飛び出した。

幸いにも寮から学校へ向う道は車が通る事が少ないため全力疾走で駆ける事が出来た。

しかし、学校に続く道の途中、公園へと伸びる道の方から何か気配を感じて立ち止まった。

それに気付いた裕二も駆け足をしながら止まり天地のほうを見た。


「どうした?」


その問いに公園に伸びる道を見ながら答えた。


「何か、気配を感じる。」


「オウガか?」


「たぶん。そうだと思うが・・・・。」


天地の言葉が詰まり、険しい表情で考え込んでいた。裕二も公園に伸びる道を見た。

その道は細く、滅多に人の通らない裏道だった。

公園に伸びる道と行っても、公園の裏の森林に出る道だ。

出入口は他の所にある。ただ、天地と裕二はよくここから公園に行くのだった。


「ンッ?いつもと違うのか?」


「あぁ。ちょっと、行って来る。」


そう言って天地が公園に向う道を行こうした時、裕二が言った。


「俺も行く。」


その言葉に天地は立ち止まり天地の方を見た。いつになく、裕二の顔が真剣だった。

しかし、天地は裕二が一緒に行くのは反対だった。


「待てよ・・・・。もし憎の鬼だったら・・・・。」


「俺だって、一応ハンターになるために修行してテストも受けたんだ。少しくらいなら・・・・。」


裕二があまりにも真剣に頼むので天地は断ることが出来ず仕方なく一緒に連れて行くことにした。

そして、裏道を抜けると公園の森林の中に出た。二人は辺りを見回し気配を感じていた。


「気をつけろよ!裕二。憎の鬼だったらお前を守る自信ないからな・・・・。」


「あぁ。憎の鬼じゃ無い事を願うばかりさ。」


二人はゆっくりと森林の中を進んだ。辺りは木と草だけで後は何もなく静かだった。

暫く進むと誰かが倒れているのに気付いた。天神学園の制服を着ていた。しかも、女子生徒だった。

そして、彼女の側には由美の刀『疾風丸』が地面に突き刺さっていた。疾風丸を見て初めて彼女が由美だとわかった。


「葉山さん!!」


「待て!裕二!!」


由美に駆け寄ろうとした裕二を天地が大声で呼び止めた。裕二は立ち止まり天地の方を見た。


「何で止めるんだ!」


「何があったかは知らないが、由美がやられたんだ。強敵だ。しかも、まだ近くにいる」


天地がそう言って辺りの気配を探っていると一人の少年が天地と裕二の目の前の木の上から降りてきた。そして、にこやかに笑みを浮かべながら二人を見た。


「フフフ・・・・。遅かったね。もう一人のハンターさん。」


「お前が、由美を・・・・。」


「さぁ?僕は一切手を出していないよ。」


少年はそう言って指を鳴らした。すると、少年の両脇から2m程の体格の怒の鬼が現れた。

それを見て天地はやっと由美がやられた訳がわかった。


「哀の頭脳に、怒の力か・・・・。よく考えたな・・・・。」


そう言いながら天地は裕二を下がらせて一歩前に出た。楽しそうに笑みを浮かべながら哀の鬼は答えた。


「そうだよ。僕が、彼らの頭脳となれば憎の鬼にも引けをとらないからね。」


「その様だな・・・・。」


天地はそう言って鞄を下ろし刀を出した。すると、哀の鬼は笑い出した。


「ハハハハ・・・・。所詮、君も彼女と一緒。刀で僕等に勝てると思っているのかな?」


「さぁな・・・・。だが、少なくとも俺はお前等な奴に負ける気がしないけどな・・・・。」


そう言ってゆっくりと鞘を抜き、大声で刀に呼びかけた。


「行くぜ!五龍神!!」


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