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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第三十五章 六鬼神 密迹 ―暗闇の中の戦い―

 天地が目を覚ました時、すでに辺りは闇に包まれていた。

 空にはまだどす黒い雲が掛かっていて、星を見る事は出来ない。

 そんな闇の中、焚き火の明かりだけが四人の顔を照らしていた。

 火の勢いは弱まりつつあったが、それでも四人の顔ははっきりと見る事が出来る。

 すでに眠りに就いている昴と神宮寺。

 起きてるのか、寝ているのか、わからない三上。

 とりあえず、天地は焚き火に枯れ枝を入れて火の勢いを強くしていた。

 その時、小さく三上が呟いた。


「やっと目が覚めたんだ」


 その声に驚いた天地は少し後退りした。

 ゆっくりと三上の方を見た天地は、三上と目があった。

 笑みを浮かべながら三上は口を開いた。


「結構、派手にやられてたようだけど、大丈夫?」

「えぇ……。もう随分痛みも取れましたし……」

「君は、傷の回復が早いね。僕なんて、まだ彼女に殴られた所が痛むよ」


 昴の方を軽く指差しながら三上はそう言った。

 確かに、普通の人なら大分時間がかかるが、天地には水龍神の力があるせいか、普通の人より傷の治りが早い。

 枯れ枝の燃える音が静かに響き、優しく風が二人の間を吹き抜けていく。

 絶鬼の島に乗り込んだとは思えない位、静かな時が過ぎていた。

 そんな中、三上が口を開く。


「君は、この戦いが終ったら、どうするつもり?」

「僕は……」


 すぐに言葉は見つからなかった。

 色々悩んだが、結局答えは見つからなかった。


「この戦いが終ったら、どうするかなんて、考えてません」

「そっか」


 ため息交じりにそう言った三上は、悲しげな瞳で焚き火の火を見て語った。


「僕さ、この戦い終わったら、ハンターを辞めるんだ」

「ハンターを辞めて、どうするんですか?」

「そうだな〜。どこか、静かな所で狩りをしながら暮すかな?」

「一人でですか?」


 その天地の問いに、三上は言葉を詰まらせた。

 まずい事を聞いてしまったと、思った天地は笑いながら話題を変えようとした。

だが、天地が言葉を発する前に、三上がゆっくりとした口調で話始めた。


「実は僕、婚約者が居たんだけど、オウガに殺されちゃってさ。

 しかも、僕は彼女がオウガに襲われてるのに、何も出来なくてさ……。

 情けなかったよ。それから、僕はハンターになるために修行したのは……。

 始めの内は、色々辛かったけど、彼女を失った時に比べれば、全然たいした事なかった。

 僕は、今まで一人前のハンターとして、やって来たつもりだけど……。

 流石に疲れたよ。だから、この戦いを最後にハンターは辞めるんだ」


 いつもやる気の無さそうな、三上がそんな真面目な話をすると、不思議な感じがする。

 結局、その後何て声を掛けていいのか分からず、沈黙が続いた。

 静かに時ばかりが、過ぎて行き天地もいつの間にか眠りについていた。



 一方、静かで真っ暗な森の中で、焚き火に照らされながら休む神谷達の姿があった。

 木々の間から吹き抜ける風が、焚き火を揺らしている。

 皆が寝静まっている中、由美ただ一人が揺れる焚き火を見つめていた。

 暫くすると、神谷が目を覚ました。


「ンッ……。由美、まだ起きてたのか?」

「うん……。眠れなくて……」


 小声で由美はそう言ったが、静かなせいか神谷の耳にははっきり聞き取れた。

 欠伸をして、少し笑みを浮かべながら神谷は言う。


「好きなのか? 天地の事が」

「――エッ!?」


 顔を真っ赤にしながら俯く由美を見て、神谷は笑っていた。

 恥ずかしそうに由美は顔を上げて、神谷の方を見ると小さく呟いた。


「あの……天地には……」

「ああ、安心しろ。天地には言わないから」


 タバコを口に銜えながら、神谷はそう言った。

 ゆっくりとタバコに火をつけると、由美の方を見て煙を吐いた。

 暫しの沈黙が続く。

 その時、近くの茂みで物音が聞こえた。

 ゆっくりと疾風丸を握る由美。

 神谷は口に銜えていたタバコを、焚き火の中にはくと火虎神を手に取った。

 微かに聞こえる物音は、次第に近づいてきている。

 由美と神谷は立ち上がり、物音のする方を睨んでいた。

 その時だ。由美と神谷の背後から1体の巨大なオウガが飛び出してきた。

 完全に二人は不意を突かれた。


「――なッ!?」「――ッ!?」


 巨大なオウガは、太く長い棍で由美と神谷を殴り飛ばした。

 由美と神谷は、足を地に着けたまま後ろに吹き飛んだ。

 その音で、魁人・国道・黒川の三人が目を覚ました。


「騒がしいですよ……」

「ゆっくり寝かせてくれよ……」

「全くです」


 三人は眠そうに欠伸をして体を起こした。

 その瞬間にオウガの存在に気付いた。

 武器を構えようとしたが、オウガの棍が先に三人の体を殴り飛ばした。


「――ぐっ!」


 三人は体勢を整えてオウガを睨んだ。

 焚き火の明かりがオウガの体を照らしていた。

 オウガは棍を右手に持ち、地面に突き立てた。


「俺は、六鬼神が一人! 密迹みつしゃく

 絶鬼様の命により、貴様らの命を貰い受けるぞ!!」


 焚き火を棍で消し去った。

 辺りは一瞬で真っ暗になった。

 光りを失った五人には、密迹がどこに居るのかわからなかった。


「チッ! 気配は感じねぇーし、敵の姿は見えねぇーし、最悪だぜ」

「無駄口を叩いてる場合じゃないだろ」


 暗闇の中で国道と黒川の声が響いた。

 確かに、気配は感じない。

 この闇に目が慣れるまでは、時間がかかりそうだった。

 暫く沈黙が続いていた。

 皆、辺りを警戒しているのだろう。

 木々の間を吹き抜ける風の音が静かに響くと同時に、魁人の顔に向って巨大な棍が飛んできた。

 避ける事が出来ず、その棍は魁人の顔面を捉えた。


「――グッ!?」


 魁人の体が地面を引きずる音が闇の中で響いた。

 暗闇の中で、密迹の足音が響き渡る。

 その足音は国道に近づいてくる。

 身を構える国道の背後から、風を切る音が走る。


「な…に…!?」


 鈍い音が闇の中に響き、国道が地面に倒れる音がした。

 次第に目が慣れてきて、薄らと状況が見えてきた。

 魁人はゆっくり立ち上がり、額を流れる血を拭った。


「グッ……。油断した」

「大丈夫か! 魁人」


 ようやく暗闇に目が慣れた神谷が魁人に駆け寄った。

 周囲に密迹の姿が無い。

 疾風丸を鞘から抜いき身構える由美と、トンファーを軽く構える黒川。

 そして、黒川の後ろの木の傍に倒れる国道。

 よく目を凝らして見ても、どこにも密迹の姿は無い。


「消えましたね……」

「だが、油断はするなよ」

「そうですね……」


 水鮫神をゆっくりと構えながら、魁人は辺りを見回した。

 暫く沈黙が続き、静かに風が流れる。

 そして、足音が近づく。


「来るぞ!」


 神谷がそう叫ぶと魁人・由美・黒川の三人は武器を構えた。

 密迹が由美の後ろの茂みから飛び出し、由美に向って長く太い棍を勢いよく振った。

 風を切る音で、それに気付き由美は疾風丸でそれを防ぐ。

と、同時に鈍い音が響き渡る。


「目が慣れてきたようだな」

「クッ……」


 由美の疾風丸と密迹の棍が、交差したままガチガチとぶつかり合っている。

 だが、明らかに由美の方が力負けしている。

 由美と睨みあう密迹の横から、トンファーが振り下ろされた。

 それに気付いた密迹は由美を弾き飛ばして、その勢いで背後に跳んだ。

 トンファーは空を切った。


「外しましたか……」

「不意打ちか……。まぁいい」


 そう言いながら密迹は黒川を睨む。

 魁人と神谷の二人は倒れている由美に駆け寄った。


「大丈夫? 由美さん」

「……うん。大丈夫……」

「しかし、素早い奴だ」


 そう呟きながら神谷は密迹の方を見る。

 軽く棍を回しながら、密迹は黒川を睨む。

 黒川も軽くトンファーを回転させながら密迹を睨む。

 黒川の右足が勢いよく地を蹴った。

 それと同時に密迹も地を蹴った。

 右側からトンファーが、密迹に振り下ろされる。

 それを、軽く棍で弾く密迹に向って、左側からもう一つのトンファーが振り下ろされる。

 だが、それも軽く棍で弾き返される。

 黒川は何度もトンファーを振り下ろすが、全て弾き返されていた。


「――クッ!!」

「どうした? まだ、一発も当たってないぞ」

「くっそッ!!」


 黒川が力んだのを察知した密迹は、振り下ろされたトンファーを思いっきり弾く。

 トンファーを思いっきり弾かれた黒川の体が仰け反り返る。

 仰け反る黒川の腹に棍を突き立てた。


「ぐはっ……」


 お腹を押さえながら、数歩後退りした黒川は地に膝をつき血を吐いた。

 一撃だった。

 たった一撃で、体のアチコチが痛み動く事が出来なかった。

 密迹は口元に不気味な笑みを浮かべながら次の獲物を探していた。



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