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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第三十章 成功率の低い策

 天地達の乗った小型ボートはようやく岸へと辿り着いた。

 ここまで、まだオウガに襲われていないのが、不思議なくらいだ。

 雨は激しさを増し、天地達はビショビショになっていた。

 それにしても、不気味な島だ。

 波の音と風でざわめく草木の音しか聞こえなかった。

 オウガの気配が全くしなかった。

 何か不思議な力でオウガの気配を感じなくさせているのだろう。


「不気味だね」

「そうだな……」


 目の前に広がる森を見ながら天地は魁人にそう答えた。

 森には一本の道筋がある。

 だが、生い茂る木々で光りは遮られ、奥がどうなっているのか見えなかった。


「この暗い道を歩くわけ?」


 神宮寺が不満そうな顔をする。

 それに、やる気の無さそうな声で三上が呟いた。


「怖いなら残れば?」

「べ、別に怖くは無いわよ!」


 横を通り過ぎた三上に、神宮寺は怒鳴った。

 その様子を本を読みながら、チラチラ見ていた黒川が鼻で笑った。


「フッ。のんきな連中だ」

「おめぇものんきに本読んでんじゃねぇか」

「僕は本を読みながら、策を考えているんだ。

 君らの様にガムシャラに戦って早死にしたくないからね」

「そう言う奴程、戦いになると真っ先に逃げ出すんだ」


 黒川を挑発するかの様に国道はそう言った。

 だが、そんな挑発に黒川は乗らなかった。

 冷静に国道の方を見て逆に挑発した。


「フッ。君の方こそ、変わった武器を持っているとか言ってるが、実は戦うのがイヤで隠してるだけなんじゃないのか?」

「んだと!」


 鋭い目つきで国道は黒川を睨み付けた。

 今にも襲い掛かりそうな勢いだ。

 だが、黒川は全く怯まず、そのまま読書を続けた。

 全くまとまりの無い奴ばっかりだ。

 こんな所をオウガに襲われたらどうなるか。

 そんな不安を天地は抱いていた。


「……大丈夫かな?」


 由美が不安そうな顔で天地の横に立っていた。

 天地は笑う事しか出来なかった。


「アハハ……。どうだろう……」

「大丈夫よ。一応、全員ハンターなんだし……」

「でも……」


 昴の言葉を聞いた由美は不安そうに、国道・黒川・三上・神宮寺の四人の方に目をやった。

 それを見た昴も何だか不安になった。

 天地・魁人・由美・昴の四人は、ほぼ同時に深いため息をついた。

 その様子を後ろで一部始終見ていた神谷が、タバコの煙を吹かせながら言った。


「どうしたよ。ため息なんかハモらせて」


 四人は振り返り口からタバコの煙を吐きながら笑っている神谷を見た。

 のんきに笑っている神谷を見て、四人は更に深いため息を吐いた。


「オイオイ……。人の顔見てため息なんて吐くなよ」


 そんな神谷を無視して、天地達四人は円になって話し合っていた。


「一番の不安要素が、一番身近に居るなんて……」

「私達……。本当に……大丈夫かな?」

「師匠があんな風だと、何だか……不安になるよ」

「私もそう思うわ……」


 四人は口々に言葉を交わした。

 そんな事を話していると、ため息が漏れた。

 とりあえず、これからの事を話し合った。


「これからの事だが……。何か意見のある者はいるか?」


 太い声で岩柳がそう言って全員の顔を見る。

 金髪で長髪の国道が、黒川を馬鹿にするかの様に言い放つ。


「おめぇ、色々策を考えてるんだろ」

「ああ、策は考えてある。だが、成功する可能性はきわめて低い」


 そんな事を言って黙り込んだ。

 それに対し、国道は笑いながら嫌味に言う。


「ンな事言って、実は策なんて無いんだろ」

「何だと!」


 怒りをあらわに黒川は、国道の胸倉に掴みかかった。

 その黒川の胸倉を国道は掴み叫んだ。


「やんのか!」


 そんな二人の間に入ったのが、神宮寺だった。

 胸倉をつかみ合う二人の手を払い、引き離すと言った。


「あんたら! 何しに来たのさ!

 私達はオウガと戦いに来たのよ! 少しは真面目に考えなさい」


 二人は黙ってにらみ合っている。

 ため息をこぼしながら神宮寺は腰を下ろした。

 岩柳は黒川の方を見ると太い声で言った。


「お前の考えている策とは?」

「僕の考える策は、とても危険で成功確率も……」

「それでもいい。話せ」

「はい……。僕らを二つのグループに分けます。

 絶鬼を狙うグループと陽動するグループです」


 説明する黒川に向って嫌味な口調で国道が言い放つ。


「陽動なんて本当に成功するのかよ」

「だから、成功確率は少ないって言ってるだろ!」

「国道、お前は黙っていろ。黒川続けろ」


 岩柳は国道を黙らせて黒川の策を聞くことに。


「陽動は成功するかわかりませんが、失敗したらそのまま城に乗り込んでもらいます。

 絶鬼を狙うグループは遠回りをして、城に侵入してもらいます」

「城のどこに絶鬼がいるかわからないのに、どうするんですか?」


 不思議そうな顔で魁人が質問した。

 その魁人に一気に視線が集まった。

 それが、怖くて魁人が一瞬怯んだ。


「確かに絶鬼の居る所はわからないが、それはその時に何とかしてもらうしか……」

「どちらにしても、あんまり期待できないな……」


 眠そうにそう呟いた三上は欠伸をした。

 確かに成功率はかなり低い。

 そんなハンター達を1体のオウガが見ていた。――天邪鬼だ。

 城の屋根の上に座りボーガンに矢をセットしていた。


「生き残ったのは十人か。まぁ、少し挨拶でもしておくか」


 ボーガンをハンターの方に構えた。

 標準は合っている。

 ゆっくり引き金に指を掛けた。


「まずは、可愛い女の子から……」


 引き金を引くと、五本の矢が昴に向って飛んでいく。

 矢は空を切りながら、勢いを増している。

 その時、三上の体がビクッと動き背中のライフルを構え叫んだ。


「伏せろ!」


 その声に驚き皆は一瞬で武器を構えたが、間に合わない。

 矢に標準を合わせ――、三上は引き金を引いた。

 銃声が六発聞こえた。

 一発は矢を外れたが、他は全て矢に命中した。

 外れた一発の弾は天邪鬼の左頬を掠めた。


「なかなかの腕前だ」


 そう呟いて天邪鬼は、左頬から流れ出る血を拭って笑みを浮かべた。

 ライフルの銃口からは白煙が出ていた。

 天地達の間には暫く沈黙が続いていた。

 三上はゆっくりとライフルをしまい、欠伸をしながら腰を下ろした。

 周りのハンターは誰しもが驚きを隠せないで居た。


「おめぇ、素早く動けるんじゃねぇか」


「……」


 半笑いしながら、国道が三上に言ったが返事はなかった。

 返事の変わりに寝息が聞こえた。

 すでに眠りについていた。

 本当にやる気が感じられない。

 周りのハンターは、驚きから一気に呆れ顔になった。



 その後の話し合いの結果、2グループに分けられた。

 力が均等になる様にと言う訳で、神谷(陽動)と岩柳(絶鬼を狙う)に分けられた。

 神谷のグループは魁人・由美・国道・黒川の近距離タイプの武器を持つ者が集められた。

 岩柳のグループは天地・昴・三上・神宮寺の天地と岩柳以外は遠距離タイプの武器の者が集められていた。

 天地は不安だった。

 力が均等にはなったと思うが、明らかに接近戦になったら、不利になると言うのは分かる。

 だが、そんな事は気にせず神谷と岩柳は分かれた。

 神谷達が、森の中を突き進み。

 岩柳達は荒れ狂う波の襲い掛かる岩場を慎重に進んでいく。



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