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激闘戦鬼  作者: 閃天
28/61

第二十七章 悲しい事実

明け方。

船の甲板に一人の少年が居た。

歳は天地達と同じ位だろう。

黒いフードを被り、顔はよく見えないが、茶色い髪がチラチラとフードから見えている。

体格はさほど大きくは無い。

精々、160cm後半と言った所か。

少年はゆっくりと船の先端に歩き出した。

海の向こうに日の光りが見え隠れしていた。

風も強まり、波も高くなっていた。

少年の黒いフードは風で激しく揺れ、船に当たる波が水しぶきを上げて、彼の黒いフードを湿らせていた。

暫く歩いて少年は足を止めた。

そして、ゆっくりと言った。


「何の用かな?」


少年のその言葉で、どこからとも無く10人のハンターが少年を取り囲んだ。

白髪交じりのハンターや金髪に染めた頭のハンターと様々だったが、どのハンターも少年に向って武器を向けていた。


「貴様、ハンターではないな!」


黒フードを被った少年の真正面に立った男が、そう言って槍の刃を黒フードを被った少年の喉元に突き出した。

黒いフードを深く被っているため、表情は見る事は出来ないが、少年の口元には笑みが浮かんでいた。

一瞬、殺気が黒いフードを被った少年から感じた。

周りを囲んだハンター達は、武器を一斉にその少年に向けて突き出した。

だが、その瞬間ハンターの体が、甲板にバラバラに崩れ落ちた。

甲板は真っ赤に染まり、黒フードの少年は顔に飛び散った赤い血を、右手の親指で拭った。

黒フードを被った少年の出したほんの少しの殺気に、船の中にいたハンター達は気付いて甲板に集まった。

もちろん、天地達もだった。

しかし、そこには、十人のハンターの無残に切り裂かれた肉片と、大量の真っ赤な血だけが残されていた。


「クッ!なんて事だ!」


いかにも、ハンターとしての経歴の長そうな、体格のいい40代位の男が、その肉片の前に跪いた。

彼の足には真っ赤な血がベッタリと付着した。

その後、ハンター達はその肉片を処理して、船の中へと集まっていた。

天地・魁人・由美・昴の四人は向い合わせの席に座って、小声で話をしていた。


「十人のハンターを一瞬で倒すなんて、普通じゃ考えられませんよ」


「そうね。魁人の言うとおりだわ」


通路側に座っている昴は、向かいの魁人の方を見ながら頷いていた。

窓際に座っている天地は、窓の外を見ていた。

昨晩とは打って変わって、空はすっかり澄み渡り、海の蒼さが際立っていた。

しかし、波は次第に高くなり、船は大きく揺れている。

そんな天地の顔を由美は心配そうに見ていた。

嫌な予感がしていた。

今回の戦いで天地と会えなくなる様な気がした。

それが、気のせいである事を願っていた。


「ちょっと、二人とも聞いてるの?」


睨みを利かせながら、少し怒りのこもった声で昴はそう言った。

天地はすぐに昴の方を見た。

その瞬間、昴と目があった。

今にも殴りかかってきそうな目つきだ。

殴られるのが嫌だった天地は、一応作り笑いをしながら言った。


「き、聞いてるって……」


「本当に?」


昴の目つきが更に鋭くなる。疑っているのだ。

天地の背中からは冷や汗が流れ出ていた。

まるで、蛇に睨まれた蛙状態になっていた。

その間に入ったのが、神谷だった。

お決まりの黒いスーツ姿にタバコを銜えて、話に割り込んできた。

だが、そのおかげで、天地は鉄拳を喰らわずに済みそうだ。


「最悪の事態だ」


最悪の事態。

天地達には、大体予想がついた。

そして、その予想は的中した。


「この船にハンターの姿に成りすましたオウガがいる」


そんな事が出来るオウガは、憎のオウガだけだ。

人の皮を被り、人間に成りすまし、他の人間を喰らう。

一番質の悪いオウガだ。

絶鬼の差し金だろう。

船の中は重い空気が流れていた。

皆が皆を疑っている。

天地達のすぐ横の席に、黒フードの少年が腰を下ろした。

今まで外に居たのか、フードが濡れている。

天地は何となくその少年が気になった。


「お前らも気をつけろよ。どいつがオウガか判らないからな」


そう言いながら神谷は口から煙を吐いていた。

暫く沈黙が続いた後に、由美がふと何かを思い出した。


「千春……。見かけないね……」


「そう言えば、そうだな」


天地は立ち上がると船の中を見回した。

だが、船の中に千春の姿は無かった。

船が大きく揺れるため、天地はバランスを崩し、窓に頭を打ち付けその場に蹲った。


「だい……じょうぶ?」


心配そうに由美が天地の方を見ていた。

顔を上げた天地は、由美に微笑んだ。


「だ……大丈夫」


そう言いながらも、天地の目は涙目になっていた。

頭を摩りながら、天地は席に座った。

その天地の横で魁人が笑っていた。


「な、何がおかしいんだよ」


「べ……別に……」


少々恥ずかしそうに、天地は魁人を睨んだが、魁人は笑いながらそう言った。

暫く和やかに話をしていた。

その時、隣の座席に座った黒フードを被った少年が動き出した。

ゆっくりと、席を立つと船の外に出て行った。

天地は何か胸騒ぎがした。


「ちょ、ちょっとトイレ行って来る」


そう言って天地は五龍神を手にして立ち上がった。

それを見た昴が不思議そうに訊いた。


「ねぇ、トイレに五龍神を持っていくの?」


「エッ」


一瞬、戸惑った。

確かにトイレに刀を持っていくなんて普通は、おかしいだろう。

何とか、誤魔化そうと口を走らせた。


「いや、トイレで襲われるかも知れないし」


「私……一緒に行こうか?」


「いいよ。一人で行けるから……」


「遠慮……しないでいいよ」


微笑みながら由美は天地に視線を送った。

天地は由美の笑顔に弱かった。


「大丈夫!すぐ戻るから」


そう言い残し、すぐその場を走り出した。

そして、トイレに行くフリをして、裏から外に出た。

外は風が強く、天地は吹き飛ばされそうになった。


「のわっ」


バランスを崩し、フラフラとしながら甲板までやって来た。

船の先端には黒フードを被った少年が立っていた。

黒フードは風で激しく揺れていた。

そして、天地を待っていたと言わんばかりに、大声で言った。


「君は……。気付いているか?」


「?」


全く判らなかった。

彼が何が言いたいのか全く。

天地はゆっくりと五龍神の柄を握った。

だが、天地はすぐに五龍神の柄から手を放した。

後ろから首筋に何か、鉄の様な物が向けられたからだ。

チラッとそれを見た。

それは、千春の雷犬神だった。

それを、見た瞬間に色んな事が頭の中で繋がった。


「まさか!」


「その通り、今君が思ったとおりだよ」


黒フードの少年は微笑みながら、ゆっくりと歩み寄ってきた。

雷犬神は天地の首筋に触れた。

その瞬間に、血が滲み出てきた。


「君にはここで、死んでもらうつもりでしたが、邪魔が入ったようだ」


千春はジャンプすると、黒フードの少年の隣に移動した。

その二人の視線の先には、息を荒げながら疾風丸を構えた由美がいた。


「ど……どうして……」


「そんな顔しないで……」


黒フードの隣で困った顔をしながら千春が言った。

由美の目には涙が溜まっていた。

船内は慌しくなっていた。

海の中から次々とオウガが船に乗り込んできていたのだ。

黒フードの少年は微笑みながら天地の顔を見ていた。

天地は五龍神を抜くと、黒フードの少年に斬りかかった。

五龍神を握る天地の手には、何の手ごたえも感じなかった。

黒いフードだけが二つに裂かれ、そこに少年の姿は無かった。

もちろん、千春の姿も無い。

黒いフードは、風で宙を舞って行った。


「くっ!」


悔しそうに天地は下唇を噛んだ。

船内は一瞬にして戦場とかし、船内はハンターとオウガの血で染まった。

天地と由美はショックで動けないで居た。

そんな二人に上空から黒いフードの少年の声が響いた。


「君達ハンターは、すでに僕の手の中に居る。

 絶鬼様の軍師を務めるこの霧雨きりさめ ぜんが」


蒼い空に浮いた少年はそう言って笑いながら消えていった。

その笑い声は天地と由美の耳にしっかりと残っていた。




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