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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第二十四章 絶鬼からの宣戦布告

その夜、激しい揺れと音が、世界中を揺るがした。

だが、その揺れはすぐに収まり、誰もがただの地震だと思っていた。

しかし、その日の朝衝撃的なニュースが放送された。


今朝は、なかなか起きる事が出来ず、朝のランニングに行っていない天地が、部屋から出てきた。

電気の点いていない廊下は薄暗く静かだった。他の皆はすでに管理人の部屋で朝食を取っているのだろうか。

どの部屋の明かりも消えていた。

階段を欠伸をしながら下りていると、激しい足音が天地の方に迫ってきた。

足を止めて、階段の下を見ていると、裕二が姿を現した。

裕二は階段の上で立ち止まる天地に気付き叫んだ。


「た、大変だ!天地」


「何だよ……。挨拶もしないで……」


眠そうに欠伸をした。

だが、裕二の次の言葉で天地の眠気は一気に吹き飛んだ。


「絶鬼が――。ついに動き出したぞ!」


「どういう事だ!」


天地は勢いよく階段を下りて、祐二の目の前で立ち止まった。

とりあえず、裕二は天地を管理人の部屋に連れ込んだ。

管理人の部屋には、魁人・由美・昴・千春・歩美の五人がいて、ニュースを見ていた。


「天地を呼んで来た」


そう言いながら裕二は天地をテレビの前に座らせた。

テレビに映っていたのは、白髪の色白の絶鬼だった。

ニコヤカに笑顔を見せているが、恐ろしい程の殺気を出しているのが、テレビ越しからでも分かった。


『僕は、全てを破壊する鬼。いや……。全てを破壊する者かな?

 まぁ、そんな事はどうでもいいか。

 これより、僕等はこの世界の全てを破壊する。

 信じる人はいないかな?でも、いいや。

 気付いた頃には、もう生きていないんだし――』


絶鬼はそう言って笑っていた。

きっと、この放送を信じているものなんて、そんなにはいないのだろう。

絶鬼は更に言葉を続けた。


『三ヵ月後、僕等は世界を破壊する。

 その間、遣り残した事やっとくといいよ。

 期限は三ヶ月……。その間、僕は自分の城にいる。

 この蒼く澄み渡る海の上に佇む城に……。

 確か、日本の昔話には、桃太郎と言う話があるようだね。

 人間が、犬とサルとキジを連れて鬼を退治するって……。

 僕も待ってるよ。勇敢なハンターの皆が僕の城に来てくれる事を……」


そう言って、中継が切れた。

三ヶ月後、世界は破壊される。

そんな絶鬼の宣戦布告は、その日の夕方世界を混乱に陥らせた。

テレビ局の人間がヘリで、海に突如現われた島を生放送した。

その島には大きな城が建っていた。

そして、その映像に一体のオウガが映りこんだ。

オウガは鋭い三日月形の剣を両手に持っていて、そのままヘリを切り裂きそこで中継は終った。

もちろん、天地達もそれを見ていた。


「くそっ!」


天地は激しくテーブルを叩いた。部屋の中は重い空気が立ち込めていた。

魁人も由美も昴も千春も暗い表情だった。

今の力では、絶鬼に勝てない事が分かっていたからだ。

その暗い空気を切り裂いたのは一人の男だった。


「何、心気臭い顔してやがる」


部屋にいた全員がその声の方を見た。そこには、サングラスを掛けた黒いスーツ姿の男がいた。

それが、神谷だと先に気付いたのは昴だった。


「神谷さん!」


「よっ。元気にしてたか?」


そう言ってタバコを銜えると、ライターで火をつけた。

落ち着いた様子の神谷に天地は腹がたった。


「何で、そんなに落ち着いていられるんだ!」


立ち上がり怒鳴り散らす天地を祐二と魁人が止め様とした。

しかし、天地はゆっくりと神谷の方に歩き出していく。

神谷の目の前で立ち止まり、顔を睨み付ける。

そんな天地の顔に神谷がタバコの煙を吐き出した。

当然の如く天地はむせた。


「ゴホッ、ゴホッ。な、何するんだ!」


「まぁ、落ち着け」


「落ち着けって!ゴホッゴホッ!あんた分かってるのか!」


むせながらも何とか天地はそう言った。

すると、神谷はテーブルの前に腰掛けて、ゆっくりと話し出した。


「今日、戻ってきたのは、お前らを強くするためだ」


「どういう事ですか?」


神谷の言葉に魁人がそう言った。ようやく咳が治まった天地は、神谷の後ろに立って話を聞いていた。

由美と昴と千春の顔を見た後に、神谷は言った。


「この寮は、可愛い娘ばかり入居してるんだな」


緊迫していた空気は一気に崩れた。魁人と祐二は呆れて言葉を失っていた。

昴と千春は恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。

一方、由美は首を傾げながら昴と千春の様子を見ていた。

そんな中、一人の男が怒りをあらわにした。


「この野郎!真剣な話をするかと思えば!!」


神谷の背後から天地は首を絞めた。急に首を絞められた神谷は抜け出す事も出来ず、タップした。

しかし、天地がそう簡単に開放する事は無かった。開放されたときには、神谷の顔は真っ赤になっていた。


「それで……。さっきの話の続きは?」


ようやく怒りがおさまり、天地は神谷にそう聞いた。首を摩りながら神谷は天地の方をみた。

そして、涙目ながら言った。


「これから、修行に行くぞ。もちろん、ただの修行じゃない。

 下手したら死ぬかもしれない」


「修行はいいんですが、僕等は学校ありますし……」


「大丈夫だ。学校には話しをつけた。後はお前達次第だ」


そう言って神谷は天地達の顔を順番に見ていった。

迷いはない。すでに、自分達のやるべき事は知っていた。

だから、迷う訳が無かった。天地・魁人・由美・昴・千春は顔を見合わせて、同時に言った。


「修行に行きます」


その言葉を聞いて、笑みを浮かべた神谷は早速、準備をするように言った。


薄暗い城の奥に絶鬼がいた。大きな窓があり、そこからバルコニーに出る事が出来る。

大きなシャンデリアが城の中を明るく照らした。

床はキラキラと輝く岩で出来ていて、シャンデリアの光りを反射して隅々まで照らしていた。

赤マットが道のように入り口から、中央にある階段まで続いていた。

絶鬼は窓辺に立ち、日の光りを反射して煌く青々とした海を見ていた。

その絶鬼の背後に阿修羅が姿を現した。

阿修羅は跪き絶鬼に言った。


「絶鬼様。言われた通り、皆を呼び集めたが……」


「ご苦労様」


絶鬼はそう言って微笑んだ。そして、阿修羅の背後に立つオウガ達を見た。

背後には五体のオウガがいた。体格も持っている特殊な武器も全てがバラバラだった。

頭に生えた鋭い二本の角と更に鋭い牙のある、三日月形の剣を両手に持ったオウガ。

生い茂った蒼く長い髪に隠れた角の、長い刀を持ったオウガ。

天井に頭をぶつけている筋肉質の体格で、長く太い頑丈な棍を持ったオウガ。

絶鬼と同じくらいの体格で、巨大なボーガンと巨大な斧を持ったオウガ。

体中切り傷だらけで、鋭い目つきで、鎖で繋がれた巨大な鉄球を持ったオウガ。


「君達は六鬼神。僕の大切な力。

 密迹みつしゃく那羅延ならえんは城に入ろうとした者を食べていいから」


そう言って、長く太い頑丈な棍を持ったオウガ(密迹)と、鎖で繋がれた巨大な鉄球を持ったオウガ(那羅延)を見た。

二体はゆっくりと、背を向けて歩き出した。

密迹と那羅延が部屋から出て行くと話を続けた。


「万が一場内に侵入した者がいれば、天邪鬼あまのじゃく悪鬼あっき

 君達二人が始末してくれるね?」


そう言いながら、巨大なボーガンと巨大な斧を持ったオウガ(天邪鬼)と三日月形の剣を両手に持ったオウガ(悪鬼)の二体を見た。

悪鬼は頷き歩きだしたが、天邪鬼は不満そうな表情で絶鬼を見ていた。

それに気付き絶鬼が聞いた。


「どうかしたのかい?」


「俺は、人の指図は受けない。俺は俺の好きな様にさせて貰う」


と、言い残し天邪鬼はその場から消え去った。

立ち上がった阿修羅は絶鬼に言った。


「あの者は、アレでよいのか?」


「大丈夫。彼は彼のやり方でこの城に侵入した者を捕らえるから」


「それで、拙者は何をすればよいのだ?」


一人取り残された長い刀を持ったオウガが絶鬼に向っていった。

絶鬼は彼を見ると微笑みながら言った。


「夜叉。君と阿修羅は、天邪鬼と悪鬼が逃がした獲物を捕らえてくれ」


「わかった。それでは……」


そう言って部屋を出ていった。部屋に残ったのは絶鬼と阿修羅の二人だけだった。

絶鬼はまた、窓の外を見た。そして、呟いた。


「あと三ヶ月……」



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