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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第二十三章 謎の少年と目覚める稲妻 雷龍神

動きを止めた天地に大量の水の矢が、一斉に襲い掛かった。

体中から血が吹き出た。天地は吹き飛びぬかるんだ地面に倒れた。

急に動きを止めた天地に、疑問を持った夜叉はその声のした方を見た。

そこには、小さな体格の腕の長いオウガが立っていた。

腕にはボロボロの由美の姿があった。体中の痛みを我慢しながら天地は立ちオウガを睨む。

しかし、オウガは顔色を変えていなかった。

夜叉もこのオウガの存在を知らなかったのか、表情が険しかった。


「お主! 拙者の戦いの邪魔をするとは、いい度胸だ!」


「フッ……。絶鬼様がお呼びだ」


「なぬ! 絶鬼殿が!?」


「あとは、俺が楽しんでやるから、さっさと帰りな!」


「グッ!」


夜叉は悔しそうな顔をして、姿を消した。そして、暗いジメジメとした部屋の中に出た。

そこに、絶鬼の姿もあった。刀を絶鬼に向けると夜叉は言い放った。


「どういうつもりだ! 拙者の戦いに水を差すとは!」


大声で怒鳴った夜叉の刀を、阿修羅の槍が弾き返した。

いつの間にか、阿修羅が絶鬼の横に来ていたのだ。

鋭い眼光で阿修羅は夜叉を睨みつけていた。


「貴様こそ、どういうつもりだ! 主に刃を向けるとは!」


「お主には関係ない! 拙者は絶鬼殿にようがあるのだ!」


「ならば、我が相手となろう!」


阿修羅と夜叉が睨みあう中で、絶鬼の声が響いた。


「ごめんよ。夜叉。楽しんでたのを引き戻したりして。

 でも、今は我慢してくれない? もう少し強くなった彼らと戦う方が楽しいから」


暗闇の中で絶鬼が微笑んだ。


ボロボロの体の天地を見ながらオウガは笑っていた。

体格からして、哀のオウガだろう。力は無いくせに何かとムカつく。

でも、天地にはそんな事どうでもよかった。

ボロボロの由美を見た瞬間に自分自身に怒りを覚えた。

水龍神は五龍神に戻っていた。だが、五龍神の刃の龍の色が黄色くなり始めていた。


『俺は、結局誰も守れて居ない』


『俺は弱い』


『もっと強い力が……』


天地がそう思った時、雨雲から稲妻が五龍神に落ちた。

激しい爆音と共に、天地の姿が土埃で見えなくなった。


「て…んち……」


遠退く意識の中、由美は小さく呟いた。土埃が消えた時、そこに天地の姿は無く、黒く焦げた布切れだけが残っていた。

オウガの大きな笑い声だけが林の中で響いていた。


その声で魁人が目を覚ました。しかし、木に張り付けにされて動く事が出来なかった。


「ぐっ……。僕とした事が……」


頭部に激しい痛みを感じた。木の横には水鮫神が立ててあったが、どうやっても手が届きそうに無かった。

魁人が諦めてため息を吐いた瞬間だった。

急に体が楽になり、地面に落ちた。魁人は、木の根にお尻を打ちつけた。


「イッ!」


お尻を摩りながら目の前の人物を見た。そこには、一人の少年が立っていた。

両手には、鉤爪を着けていた。その鉤爪の甲には蛇の刻印があった。

すぐに土蛇神とわかった。

少年は茶色の髪に黒いローブを着ている。

目つきが悪かったが悪い奴ではなさそうだった。


「助けてくれてありがとう」


そう言って、魁人は笑いながら右手を差し出した。少年は鋭い目つきで魁人を睨むと小さく言った。


「無様だな……」


「なっ!」


「早いとこ、残りの二人も助ける事だな」


そう言って素早い身のこなしでその場を去った。腹が立ったが、あの少年の言う事も確かだった。

不意を突かれて捕まるなんて、本来なら殺されていただろう。

そんな事を考えながら魁人は、昴と千春を木から下ろした。


オウガが笑っていると、背後で声がした。

それは、間違いなく天地の声だった。


「何で笑ってるんだ?」


ゆっくりと後ろを振り向いたオウガの前には、全身ボロボロの天地が立っていた。

髪が少し焦げていたが、稲妻の影響は無かった。

変わったのは五龍神が雷龍神になったという事だった。

雷龍神の刃の周りには稲妻が走っていた。

オウガは、由美を放し後退りした。倒れる由美の体を天地が抱きかかえた。


「ごめん。守れなくて……」


ボソッと呟きゆっくりと地面に寝かせた。そして、オウガを睨み付けた。

その目にオウガは恐怖を覚え、その場を去ろうとした。

だが、天地はオウガを逃がさなかった。雷龍神を振り下ろした。

その瞬間、刃先から稲妻が走った。稲妻はオウガを捕らえた。

稲妻を直撃したオウガは、そのまま崩れ落ちるように倒れた。

ゆっくりと立ち上がり、オウガに歩み寄った天地は雷龍神を振り上げた。

その時、地面が隆起して行き、オウガを土の壁が押しつぶした。


蛇呑食じゃどんしょく


オウガの苦痛の叫びと共に、オウガを押しつぶす音が鳴り響く。

声がしなくなると、隆起していた地面が元に戻っていた。

林の奥に人影が見えた。声を掛けようとしたが、すぐに居なくなってしまった。

雷龍神は五龍神に戻っていた。そこに、昴と千春を肩に担いだ魁人がやってきた。

意外と軽い二人を担いでいる魁人は天地に声を掛けた。


「天地君?」


その声で天地は後ろに魁人が居るのに気付いた。五龍神を鞘にしまい、ゆっくりと由美のほうに歩み寄っていった。いつの間にか、雨は上がり雲からは蒼く澄み渡った空が顔を出していた。


「それじゃあ、帰るか」


天地は由美を抱きかかえて魁人の方を見て笑いながら言った。

その後、二人は林を抜け様としたが、どこをどう来たのか分からず、そのまま林の中を彷徨っていた。


「天地君。本当に道わかるの?」


「いや。全く分からん」


自信満々にそう言う天地に、魁人は呆れながらも天地に着いて行った事を反省した。

林は次第に深い所に行き、木々の生い茂る森になっていた。

流石の二人も疲れが出てきた。


「ど…どうするつもり?」


「と…とりあえず……。休もう」


「そうだね……」


二人は木の根元に腰を下ろして、体を休めた。

こんな事では、いつまでたってもここから抜け出せないと、二人は思っていた。

夜叉に斬り付けられた傷が痛むが、天地はそれを顔には出さずにいた。

光りのあんまり入ってこない森は、薄暗く雨の後だけあって湿っている。

斬れた服から滲む赤い血が、魁人は気に掛かった。


「その傷大丈夫なの?」


「ああ、傷は浅いし全然大丈夫さ」


「そう。でも、あんまり由美さんに心配かけた駄目だよ」


「わかってるって」


笑いながらそう言った天地だったが、笑うと傷が痛んだ。

暫く休んだ二人は、また歩き出した。森? の中を彷徨い続け、寮についたのは夜中の事だった。




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