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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第二十二章 消えた二人と青髪オウガ夜叉

林の中を彷徨う天地達は、一向に千春を見つける事が出来なかった。

オウガの気配も感じなく、林には霧が立ち込めてきていた。

気を取り戻した魁人は、泥でアチコチ汚れていた。

先を行く由美と昴の背中を見ながら、魁人が天地に愚痴を言い出した。


「すぐに、暴力振るんだからさ……。全く。

 大体、ちょっとした冗談だったんなのに……。

 あんなに思いっきり殴らなくてもいいのに……」


天地は笑いながら頷いていた。霧は奥に行くに連れて濃くなっていき、辺りが真っ白になってきた。

四人は一箇所に固まり、それぞれの場所を確認した。


「何で、急に霧が出てきちゃったのかしら?」


「これも、罠なのかな?」


真っ白な霧の中で、昴と魁人の声がした。天地はその声に向って返事を返した。


「罠だとして、相手にもこっちの姿は見えないんだ。意味無いだろ?」


「……そうだよね。意味……無いよ」


天地の声に、所々間の開いた由美の声がした。その時、何か鈍い音と共に、誰かが倒れる音がした。

何も見えない視界の中で、天地の頭に嫌な予感がした。


「おい!皆無事か!」


「私は……無事」


「僕も無事だよ」


由美と魁人の返事は返ってきたが、昴の声だけが返って来なかった。

三人はあせった。昴が何者かに襲われたのだと知って・・・・・・。


「天地君!このまま!?」


何かを言いかけた魁人の言葉が、鈍い音と共に消えた。そして、地面に倒れる音がした。


「魁人!どうした!!」


叫んだが魁人からの返事は無かった。その時、白い霧の中から由美の声が響いた。


「伏せてて……」


どういう事なのか、わからなかったが、とりあえず言われたとおりに天地は体を伏せた。

霧の中を冷たい風が通り過ぎた。その時、天地は由美が風を集めている事に気付いた。

濃かった霧も、徐々に薄くなり、視界が見えるようになってきた。

白い霧は由美の持っている、疾風丸の周りに風によってまとめられていた。

しかし、そこに魁人と昴の姿が無かった。

残っていたのは、何かを引きずった様な跡だけだった。

由美はゆっくりと後方に疾風丸を振った。

すると、疾風丸に集まっていた風は突風となり、白い霧と共に飛んでいってしまった。


「……どうしよう。昴と魁人が……」


「行こう!きっと、この跡の向こうにオウガが居る!」


「……うん」


二人は何かを引きずった跡を辿っていった。

静かな話の中に、天地と由美の二人の足音が交互に鳴り響いていた。

そして、林を抜けると何も無い広い所に出た。

目の前には、大きな岩と断崖絶壁の崖が聳え立っていた。

大きな岩の上には蒼い髪のオウガが座っていた。天地と由美の二人を見るとオウガは立ち上がり岩から飛び降りた。


「お主が、天地と申す者か?」


「ああ、俺が天地だ!それより、魁人達は何処だ!」


「魁人?それは、あの者達の事か?」


オウガはゆっくりと腰の長い刀を右方向に向けた。

天地と由美がその先に目をやると、魁人・昴・千春の三人が木に張り付けにされていた。

三人とも気を失っているのか、動かなかった。


「大丈夫か!」


天地と由美が三人に近づこうとした瞬間、二人の前に木が倒れてきた。

そのせいで、三人に近づく事が出来なかった。


「まだ、彼等を還す訳にはいかぬのだ」


「それなら、力ずくでも還してもらうまでだ!」


天地が五龍神を構えると、背後から由美が心配そうな声で言った。


「危険……。私も戦う」


「いや!由美は三人を助けに行ってくれ!」


「でも……」


由美の言葉を聞かずに天地は、オウガに向かっていった。

鉄と鉄のぶつかる音が林の中に響いた。

天地の五龍神とオウガの持つ長い刀が、ぶつかり合ったのだろう。

嫌な予感がしたが、由美は天地の無事を願いつつも三人の所に急いだ。

天地とオウガは刀を交えたままにらみ合っていた。


「グッ…」


「その刀。なかなかの代物とみる」


「うるせぇ!」


天地は勢いよくオウガを弾き飛ばした。体勢が崩れながらも、オウガはそれを修正した。

刀の刃を地面に触れさせながら、オウガは天地の方をみた。

あのオウガは五龍神に興味を持ち、この戦いを楽しんでいる様に見えた。

刀を交えてわかったが、あのオウガは今までの奴とは全く違う。

力任せに戦うのではなく、自らの技のみで戦っているのだと。

息を整えている天地に対して、オウガがゆっくりと言った。


「絶鬼殿から聞いたのだが、その刀は変化すると聞いたが?」


「お前!やっぱり、絶鬼と関係があるのか!」


「そうか。拙者、まだ名乗っておらぬか。

 拙者の名は夜叉。絶鬼殿の配下に付いた。蒼き刃となりてなんじらと戦おう」


刀をゆっくりと構えながらそう言った。先程とは違う力を感じさせていた。


「俺も、本気で行くぜ!目覚めよ!火龍神!」


五龍神の刃の龍が赤く光り、火龍神と化して炎が刃の周りを取り巻いた。

驚いた様子で火龍神を見る夜叉に、天地が一気に斬りかかっていった。

火龍神はあっさりとかわされ空を切った。と、同時に夜叉の刀が、天地の右肩に向って勢いよく振り抜かれた。

身を翻して後ろに避けたつもりだったが、天地の右頬からは血が滲み出て来た。


「グッ!」


「なかなかの身のこなし……。しかし、お主にはまだ拙者の刀はかわせぬ」


夜叉はそう言いながら刀を構えなおした。

二人の所は木々が無く、雨が降り注いでいた。髪が塗れて、額に引っ付き、流れてくる水滴が天地の視界を狭くしていた。

腕で額から流れ落ちる水滴を拭った時、夜叉が天地に向って走ってきた。

体勢が整えられず、天地は右肩から左脇腹までを斬り付けられた。

血しぶきが舞った。しかし、雨で血は流された。

傷は浅かったが血が止まらなかった。


「まだ、若いな。しかし、あの判断は素晴らしい」


「グッ…」


天地は苦痛に顔を歪めた。服は裂けて血が滲んでいた。

あの瞬間、天地はとっさに体を後ろに引いたので、浅い傷で済んだが、もし引いていなければ完全に切り裂かれていただろう。

痛みを堪えながら天地は夜叉の方を見た。そして、火龍神に力を集めた。

火龍神の刃には炎が渦巻き始めた。


「燃え盛れ!炎裂弾!」


火龍神を振り下ろすと、炎は分裂して夜叉に向って飛んでいった。

しかし、夜叉は刀で全ての炎を切り裂いた。

夜叉は鋭い目つきで天地を睨んだ。


「この程度の力とは……。期待外れもいい所だ」


「くっ!やっぱり雨の中での火龍神は駄目か……」


そう呟き、力を緩めると火龍神は五龍神に戻った。

そのまま五龍神を目の前にかざして、左手で五龍神の刃の龍に触れて目を閉じた。

五龍神の刃の龍が青い光を放ちだした。

目を閉じた天地は真っ暗な中にいた。そして、その奥で青い一筋の光りが見えた。

その瞬間に天地は目を開いた。


「目覚めよ!水龍神!」


叫ぶと同時に降り注いでいた雨が、水滴のまま空気中に止まった。

先程と違い、刀の周りに薄い水の膜が張っていた。

夜叉は何が起こったのか全く分からなかった。


「お主、何をした?」


「俺は何もしてない。ただ、最近使える様になったこの水龍神が全ての水を操る!」


しかし、夜叉はいたって冷静な表情で天地を見ていた。

宙に浮いたままの水滴を手に取ると、そのまま握りつぶした。

夜叉は笑い出した。なぜ、笑ったのか分からなかった。

ゆっくりと刀を構え直した。すると、刀が蒼く光った。


「お主の刀は変わっておる。火を操り、水までも……。

 しかし、残念な事に拙者のこの刀も水を操る物でな!」


夜叉はそう言って、刀を振り下ろした。その瞬間、止まっていた水滴達が、矢の如く天地に向かってきた。

天地も水龍神を振り下ろした。止まっていた水滴は夜叉の時と同じように矢の如く、夜叉の方に向っていった。

双方の水の矢がぶつかり合い、相殺していった。

天地と夜叉のぶつかり会っていると、何者かの声が響き渡った。


「動くな!」


声のする方を見た天地は動きを止めた。




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