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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第十七章 怒れる 蒼き鮫

ビルの屋上で雄叫びを上げているオウガに、凄まじい稲妻が襲い掛かった。

しかし、この稲妻に動じず、ゆっくりと稲妻の飛んできた方に体を向けた。

そこには、雷犬神を構えた千春の姿があった。


「オ前モ、ハンターカ?」(お前も、ハンターか?)


「だったら?」


「殺ス!」(殺す!)


そう言って、オウガは千春に突進してきた。下に雷犬神を突き刺すと、千春は叫んだ。


「弾き返せ!雷壁!」


オウガの体は、雷犬神から放出される電気の壁に弾き飛ばされた。オウガは鉄柵に激しく背中を強打した。

ゆっくりと、立ち上がりオウガは千春を睨み付けた。


「オ前、強イナ。俺モ本気デ、オ前ヲ殺ス!」(お前、強いな。俺も本気で、お前を殺す!)


右手に持った斧を千春に目掛けて投げた。斧は勢いよく回転しながら、千春の所に飛んできた。

軽々と斧を避けた千春に、オウガが突っ込んできた。それに気付き、とっさに右方向に飛んだ。

その時、オウガの投げた斧が弧を描きそのまま、千春に向って飛んできた。

斧に気付いた千春は、とっさに雷犬神で斧を受け止めた。

刃と刃が擦れ、火鉢が散って斧は下に落ちた。

その瞬間、背中に激痛が走ると同時に、体が吹き飛ばされていた。


「グウッ!」


オウガの突進を背中に直撃したのだった。オウガは斧を手に取ると、笑い出した。


「本気ヲ出シタ俺ニ、オ前勝テナイ。」(本気を出した俺に、お前勝てない。)


背中に走る激痛で、立ち上がるのも辛かった。しかし、オウガは容赦なく千春に襲い掛かった。


その頃、ようやく結空陣の中にやって来た天地は、頭の痛みを我慢しながら追うがの気配を探った。

オウガの気配がビルの上からするとわかったが、どのビルの上からなのかは分からなかった。


「一体、どのビルだ・・・・。」


建ち並ぶビルを見上げながら、天地はそう言った。その時、一つのビルの屋上で爆音がした。

それに気付いた天地はそのビルの方を見た。すると、何かが飛んでくるのが見えた。


「何だ?」


遠目にして飛んで来るものを見た。それは、雷犬神だった。

雷犬神は真っ直ぐ天地に向ってきていた。


「なっ!!」


とっさにしゃがんだ天地の頭の上を、雷犬神が通り過ぎ天地のすぐ横に突き刺さった。

驚きの隠せない天地は、まだ心臓がバクバク言っていた。


「び、びっくりした・・・・。」


道路に突き刺さる雷犬神の柄を握りゆっくりと抜いた。

雷犬神が振ってきた事から、魁人と千春の身に何かがあったと天地はわかった。

雷犬神を持ち急いで屋上に向った。

しかし、屋上に着いた時には、すでに千春がボロボロの体で倒れていた。


「千春!」


そう叫んだ天地は雷犬神を置き、同時に魁人の姿を探した。瓦礫に埋もれている魁人が見つかるはずがなかった。

オウガは天地の気配に気付いて、天地の方に体を向けて笑った。


「ウヘヘヘヘッ。オ前モ、ハンターダナ。殺ス!」(うへへへへっ。お前も、ハンターだな。殺す!)


そう言うと、いきなり天地に飛び掛っていった。とっさに五龍神を抜きオウガの体を斬り付けた。

しかし、オウガの体は岩の様に硬く、斬りかかった天地の手が痛かった。


「ぐっ!何て硬さだ!」


「ソンナ攻撃ジャ、俺ニ勝テナイ!」(そんな攻撃じゃ、俺に勝てない!)


オウガはそう言って斧を投げた。天地は五龍神で斧を受け止めた。

その時、オウガが突進してくるのが見えた天地は、体を捻り斧の軌道を逸らして、オウガの突進を避けた。

オウガは戻って来た斧を取ると、もう一度斧を投げた。


「俺に同じ手が二度も通じると思うなよ!!」


そう言って、天地は斧を避けた。この時点で、天地はオウガの思惑通りになっていた。

斧を避けた天地にオウガが突進してきた。天地はオウガの突進を左に避けた。

しかし、弧を描き戻ってきた斧が、天地の背後に迫っていた。

それに、気付いた時、天地は避ける術が無く、五龍神で受け止める事しか出来なかった。

斧を五龍神で防いだ天地の背後はがら空きで、そこにオウガが突進を仕掛けた。

天地は千春と同じ様に、背中に激痛が走ると同時に吹き飛んだ。


「グハッ・・・・。」


口から血を吐き、苦しそうに膝を突いていた。目の前がクラクラとしてきた。

あの時の歩美の踵落しの影響だろう。頭を振り、何とか視点を合わせ様とするが、視点は合わなかった。

揺れている視界の中で、オウガが近づいてきているのが分かった。

何とか立ち上がり、五龍神を構えたがオウガをはっきりと捕らえられていなかった。

オウガは斧を振りかざし、天地に振り下ろした。何とか、五龍神で斧を弾いていたが、それが限界だった。

その時、瓦礫の中から魁人がゆっくりと這い出てきた。

壁に叩きつけられたせいで、頭からは血が出ていた。血は、額を流れ頬を伝って顎の先から下に垂れた。

額を流れる血を左手で拭い、天地を攻撃するオウガの背後を取った。


「はぁ・・・はぁ・・・・。くら・・・!?」


腰を低くして水鮫神を構えた時、あの時の事を思い出して動きを止めた。

それは、自分の技で天地を傷つけたあの日の事だった。

オウガの振り下ろす斧を弾きながら、オウガの背後にいる魁人の姿が天地には見えていた。

なぜ、背後を取っているのに、攻撃を仕掛けないのか天地には分からなかった。


「くっ!仕方ない!目覚めよ!火龍神!」


五龍神の刃の龍が赤く光、一瞬にして火龍神へと変わった。

しかし、火龍神に変わっても、天地はオウガの斧を防いでいるので精一杯だった。


「グヘヘヘヘッ!早ク諦メテ、ミンチニナレ!」(グヘへへへッ!早く諦めて、ミンチになれ!)


斧を振り下ろす力を徐々に強くしていき、天地を端の方に追い込んでいった。

天地が五龍神を火龍神にしたのには訳があった。そして、その機を待っていた。

鉄柵まで追い込まれた天地に、オウガは勢いよく斧を振り上げた。

その時、斧はシューッと音をたてながら砕け散った。斧の刃の破片がオウガの下に落ちた。

どの破片からも白い煙が出ていて、少し溶かされたような後があった。


「はぁ・・・はぁ・・・・。残念だったな・・・・。」


だが、天地の体も限界だった。揺れていた視界は次第に暗くなり、そのまま倒れこんだ。

火龍神も五龍神に戻ってしまい、動かなくなった。


「グヘへへへッ!後ハ、トドメヲ刺スダケダ!」(グヘへヘヘヘッ!後は、トドメを刺すだけだ!)


オウガは雄叫びを上げて天地の体を踏みつけた。

その瞬間、魁人の中で何かが弾けた。そして、自分への怒りがこみ上げてきた。


「その足を退けろ!」


「何ダ?マダ、生キテタノカ?」(何だ?まだ、生きてたのか?)


オウガは天地を踏みつけながら、魁人の方に顔を向けた。

俯いて顔が見えなかったが、魁人の体からは凄まじい闘志が湧き出ていた。

今まで、こんな事は無かった。

冷静沈着で頭脳派の魁人は、天地の様に戦いに熱くなる事はなかった。

しかし、今の魁人は闘志が流れ出ていた。


「オ前ハ、弱過ギテ楽シクナイ!」(お前は、弱すぎて楽しくない!)


そう言ってオウガが魁人の方に体を向けた瞬間、魁人が視界から消えた。

宙に舞ったと思ったオウガはすぐに、上を見たが魁人の姿は無かった。

何時の間にか、背後に回っていた魁人が、オウガの頭部を槍の柄で殴り飛ばした。

2・3歩前のめりに進みすぐに、後ろを振り返ったがそこには魁人の姿は無く、倒れていた天地の姿もなくなっていた。

オウガの後ろで着地すると、魁人は天地をおろした。

魁人は水鮫神を使って、宙を素早く移動していたのだった。

ゆっくりと、水鮫神を構えてオウガに向って対峙した。


「オ前、何時ノ間ニ!」(お前!何時の間に!)


「・・・・。」


オウガの言葉に魁人は答える気はなかった。


「ウウーッ!先ニ、オ前ヲ殺シテヤル!」(ウウーッ!先に、お前を殺してやる!)


そう叫ぶとオウガは魁人に向って突進してきた。突進してくるオウガに、魁人は水鮫神を構えたまま突っ込んでいった。

そして、突進してくるオウガが、踏み込んだ右足の太ももを水鮫神で突き刺した。

岩の様に硬かったオウガの体だったが、オウガの突進の勢いが凄かった為、水鮫神の刃は簡単に突き刺さった。

すぐに刃を抜き、オウガの突進を右に避けて体勢を整えて、すぐに水鮫神を構えなおした。

オウガの右の太ももからは、真っ赤な血が噴水の様に吹き出ていた。


「グオオオオオッ!!」


オウガは叫びながら、痛みに苦しんでいた。オウガの右足は震えて力が入らなかった。

そんなオウガに魁人は、水鮫神の刃先を向けた。


「次は、胸を貫く!」


「フ、フザケルナ!俺ハ、コンナ所ジャ死ナナイ!」(ふ、ふざけるな!俺は、コンナ所じゃ死なない!)


地を蹴り、魁人に向って突進してきた。しかし、先ほどより勢いは無かった。

右の太ももをやられたせいだろう。そんなオウガの左の太ももを水鮫神で突き刺した。

オウガの突進を今度は左に避けて、体勢を整えてオウガを見た。

下に膝を付き、オウガは苦しんでいた。両太ももからは血が流れていた。

魁人は腰を落とし、水鮫神を引き低く構えた。水鮫神の刃の周りに、霧状の水滴が集まり渦巻いていた。


「喰らい付け!霧鮫連牙むこうれんが


槍を一気に突き出した。集まった霧状の水滴がいくつかにまとまり、そのまま鮫の形になり、オウガに喰らいついた。


「グオオオオッ!!」


オウガの悲鳴が響いた。何匹もいる霧状の鮫が、オウガの血で真っ赤に染まった。

そして、そのままオウガと共に消滅した。






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