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激闘戦鬼  作者: 閃天
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第十二章 遊園地

あれから何日か過ぎた。

暫く、オウガも現れず平和な時が過ぎていた。

相変わらず、静かな寮の前の街道だが、寮の中は相変わらず騒がしかった。

一時期、由美が居なくなり天地も元気が無かったが、今ではすっかり元気になっていた。

休みの日も朝のジョギングをしていた天地は寮の入口で倒れていた。


「グオオ・・・・。つ・・疲れた・・・・。」


「まぁ、まぁ。お疲れ様。」


管理人は冷たい麦茶を天地に渡した。麦茶を飲みほして立ち上がると軽く伸びをした。

そこに、やって来た歩美は横を通り過ぎる時に天地に一言言った。


「汗臭いから、私には近寄らないで。」


「お前に言われなくても、近付かねぇよ!

 大体、こっちからお断りだ!」


そう言い終った時、天地の頭に歩美の回し蹴りが炸裂した。回し蹴りをくらい、意識が吹っ飛び一瞬気を失った。

意識を取り戻し振り返った時には、歩美の姿は無かった。


「くっ!あの野郎!オウガより素早いな・・・・。」


「凄い回し蹴りだったわね。でも、少し踏み込みが甘いかしら。」


頬に手を当てながら管理人はそう言って、奥に歩いていった。苦笑いを浮かべながら管理人を見送った。

管理人と入れ違いに魁人と裕二がやって来た。二人は天地を見て笑った。


「また、歩美さんにやられたの?」


「まぁな。よくわかったな。」


「いや〜。凄い音がしてたからな。」


「今日は何されたの?」


「回し蹴り。」


「回し蹴りか・・・・。」


裕二は腕を組みながら頷き、その横で魁人が笑っていた。天地はむしょうに腹が立った。

鋭い視線を感じた魁人は天地が睨んでるのに気付いて笑うのを止めた。

頷いていた裕二も頷くのを止めて天地を見た。

その時、昴がやって来た。天地達の所で立ち止まり会話に参加した。


「ねぇ。何の話してるの?」


「別に、何にも話して無いけど?」


「本当に?」


「お前に嘘ついて何になるんだ?」


裕二はそう言って呆れ顔で昴を見た。その瞬間に昴の鉄拳が裕二の顔面を捉えた。

殴られた勢いで寮の外まで飛ばされた裕二は暫く動かなかった。

天地と魁人は驚きのあまり唖然とした。

一方、裕二を殴った昴は清々しい顔で鼻歌を歌いながら階段を上って行った。

動かない裕二にゆっくりと近付き、二人は顔を見た。顔は少し腫れて赤くなっていた。


「だ、大丈夫か?」


「そう・・・・。見えるか?」


「見えねぇ・・・・。」


天地と魁人は顔を見合わせて苦笑いをした。

天地の部屋に裕二と魁人は集まった。昴に殴られた所をしっかりと、氷水で冷やしながら裕二はため息をついた。

ベッドに座りながら天地はテーブルの向こう側の裕二を見ていた。

その間に挟まれ魁人が座っていた。


「なぁ、何でお前ら俺の部屋に居るわけ?」


不満そうな表情で天地はそう聞いた。そんな天地に裕二は笑いながら言った。


「堅い事言うなって、どうせ暇だろ?」


「あのな・・・・。俺だって、一人でやりたい事もあるさ。」


「エロ本でも読むのか?」


「お前じゃねぇよ・・・・。」


呆れ顔でそう言った天地はため息を吐き二人の顔を見た。魁人は相変わらず笑顔を絶やさなかった。

しかし、男三人で部屋に居ると変だと思った天地は何か無いかと考えた。

暫く考えた結果を二人に伝えた。


「お前ら、昴と歩美と一緒に映画でも見て来いよ。」


「何で、俺らが昴と歩美と映画に行かなきゃ行けないんだ?」


「どうせ、暇なんだろ?男と居るより、女と居たほうがいいだろ?」


「暴力女と居たら命がいくつあっても足りないぜ・・・・。」


「誰も、昴と何て言ってねぇよ。歩美も居るだろ。」


その時、玄関をノックする音が聞こえた。その音に裕二は飛び上がり身を隠した。

もし昴だったら、もう一発鉄拳を貰う事になるかもしれないからだった。

そんな裕二を苦笑いしながら見ていた天地は、二回目のノックで玄関に向った。

玄関の前に立っていたのは管理人だった。

管理人はニコヤカに笑みを浮かべながら優しく言った。


「あなた達にこれあげるわね。」


「これって・・・・。」


管理人が天地に渡したのは遊園地のチケットだった。


「近くに新しく遊園地が出来たのよ。

 そのチケット貰ったんだけど、私はもう遊園地って歳でもないし・・・・。

 ちょうど五枚あるし、昴ちゃんと歩美ちゃんにも渡しといたから、一緒に言ってきてね?」


「でも・・・・。」


「大丈夫。弁当も準備してあるし・・・・。行ってくれるわよね?」


そう言って管理人は天地を優しい目つきで見た。しかし、天地にはその目がとても怖く、断る事が出来ず、結局遊園地に行く羽目になってしまった。

最初は乗り気じゃなかったメンバーも、いざ遊園地に着くとはしゃいでいた。


「最初に何乗る?」


「そうね。私はジェットコースターかな?」


「ジェットコースターか・・・・。」


「まさか、怖いの?」


「ま、まさか!」


天地の右横で裕二と昴がこの様な会話をしていた。一方左横では・・・・。


「最初は何処行こうか?」


「そうだね。とりあえず、歩き回って目に付いたものから入っていこうか?」


「それもそうね。」


と、魁人と歩美が楽しそうに会話をしていた。そして、それぞれのペアが散って行った。

一人残された天地はため息を吐き、座れる場所を探していた。

遊園地に男一人で居ると、とても切なかった。他の客も殆どカップルで歩いていた。

暫く歩いたが、何処もかしこもカップルだらけで、座れそうな場所は無かった。


「休みの日に何でこんな事に・・・・。」


一人でぼやきながら、近くの芝生の木の陰に座り込んだ。

もう、すっかり暑くなり夏の風格を漂わせていた。空は蒼く澄み渡り、所々に薄白い雲が浮いていた。

そんな空を見ていると、心が落ち着いた。そして、眠くなった。


ジェットコースター乗り場に向った裕二と昴の二人は列に並んでいた。結構人気があるらしく、列は長かった。


「凄い列だな・・・・。」


「そうね。人気なのね。」


「止めないか?ジェットコースター。」


「ここまで、来たら絶対乗るわよ。」


「俺、高所恐怖症なんだが・・・・。」


「大丈夫よ。死にはしないわ。」


「だと、いいが・・・・。」


高所恐怖症の裕二をよそに、昴は楽しそうにジェットコースターを見上げた。

そして、遂に裕二達の番が回ってきた。

席に座った裕二は足をガクガクさせていた。昴はそれを見て笑った。


「あんたにも怖いものってあるのね。」


「そりゃ、人間だからな・・・・。」


「まぁね。」


その時、遂にジェットコースターが動き出した。ゆっくり、音を鳴らしながら上がって行った。

裕二は声を震わせながら言った。


「ほ、本当に大丈夫だよな・・・・。」


「大丈夫よ。」


そして、坂の上まで来ると一気に急降下した。その瞬間に、裕二は意識を失った。


一方の魁人と歩美のペアはと言うと・・・・。


「結構、迫力あったね。」


「そうだね。最近のお化け屋敷は凄いね・・・・。」


「若いんだから、そんな年寄りみたいな事言わないでよ。」


「そ、そうだね。」


そう言って笑い出した。


「次は、どこに行こうか?」


「そうだな・・・・。」


魁人と歩美は辺りを見回して、次の場所を探した。

そして、次の場所を決めるとすぐに歩き出した。


眠っていた天地も騒がしい声で目を覚ました。目を覚まして体を起こすと、目の前に何人かの男が一人の少女を取り囲んでいた。

少女は小さな体で、幼い顔をしていた。胸は結構大きかった。空色の髪を腰の辺りまで伸ばし、それを後ろで束ねていた。


「ねぇ、俺達と一緒に遊ぼうぜ!」


男達の内、一番ガラの悪い男がそう言った。少女は怯えながら答えた。


「私・・・・。」


怯えている少女の腕を掴み、無理やり連れて行こうとする男達を見ていた。

そんな少女をほおっておく事が、出来なかった天地はゆっくり立ち上がった。


「嫌がってるじゃないか。離してやれよ。」


「何だと!」


男達は天地の方を見た。天地は男達を睨みつけた。

ガラの悪い男が他の連中に合図を送った。そして、男達は一斉に天地に襲い掛かった。

殴りかかってくる男達の拳をかわしながら、天地は一撃ずつ鉄拳をいてれいった。

あっと言う間に男達は倒れていき、最後にガラの悪いのが一人残った。


「お!覚えてろよ!」


ガラの悪い男はそう捨て台詞を言って逃げて行った。天地は息を吐き少女の方を見た。

少女は天地に頭を下げた。


「ありがとうございました。」


「あぁ。気にする事無いよ・・・・。」


天地はそう言って笑っていた。そんな天地に少女が恥ずかしそうに聞いた。


「あ、あの・・・・。名前を聞いてもいいですか?」


「名前?俺は神野 天地。」


「わ、私は、犬山 千春です。た、助けてもらったお礼を・・・・。」


「いいって。当然の事をしたまでだから。それじゃあ。俺はこれで。」


天地は笑いながら千春に手を振って去って行った。その後ろ姿を千春は顔を紅くしながら見送った。


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