表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/40

第9話:庭師登場

昼食も食べ終わり、暇を持て余したミレーヌは早速庭へ出てみる事にした。


「ねぇ、許可も貰った事だし、ちょっと庭に出てみましょうよ」

「はい。では、お茶は外のテーブルに用意しましょう」


セレナはそう言うとお茶の用意をするためか一旦部屋を出て行った。

リリーはミレーヌと一緒に付いてきた。

外へ出てみると、暖かな日差しが照りつけてとても気持ちがいい。

花壇へ近づき腰を屈めて色とりどりの花たちを眺めた。


「見ない顔じゃの?」


突然話しかけられ、声の方へ振り向くとそこには、六十代ぐらいのひげを生やした小柄なおじいさんが立っていた。

慌てて立ち上がり、突然現われたおじいさんに困惑していると…


「えと…」

「あぁ、すまない。わしはこの城の庭師をしてるんじゃ」

「じゃあ、ここの花たちはおじいさんが?」

「そうじゃ。ここはわしの自慢の庭じゃ。どうだね?」

「はい!とっても素敵です。気に入りました」


笑顔で言ったミレーヌに気を良くしたのか、庭師だというおじいさんはにこにこしてしながら屈むと花の周りにある雑草を抜き始めた。

ミレーヌもその隣に屈んだ。

黙々と作業をしているおじいさんに、そういえば自己紹介をしていなかったなとミレーヌは話しかけた。


「わたくし、アナタリアから来ましたミレーヌと申します」

「そうでしたか…」


うんうんと頷きながら手を休めることなく次々と雑草を抜いていく。

そんな様子のおじいさんにミレーヌは勇気をだして、自分も手伝いたいと言うと、一瞬ポカーンとしていたが、「じゃあ、そっちを頼みますぞ」と言うとまた作業に戻った。

きっと手伝いたいだなんて言われた事が無いんだろうなとミレーヌはくすっと笑った。



----------------------------------------



セレナはお茶の用意をして戻ってくると、そこにはびっくりする光景が広がっていた。

なんと、あの気難しいと有名な庭師に混じってなにやらやっているミレーヌを見てさらに驚いた。


ミレーヌと共にやってきたリリーと言う侍女に慌てて近寄ると、彼女は「いつもの事ですから」と平然としていた。


「いつもの事って…止めなくて良いの?」

「ミレーヌ様はアナタリアに居た時から、あんな感じで…言っても聞いてくださらないの」

「そうなの?か、変わった方なのね…」


「変わっている」というのはセレナの正直な感想だった。

大体が、部屋で大人しくしているか、庭へ出てもお茶を飲むぐらい。

貴族の令嬢や、ましてやお姫様が庭で雑草を抜いたりなんてありえない。

しかも、気難しくて普段人を寄せ付ける事のない庭師が、これまた見たことも無い笑顔でおしゃべりしているのを見てミレーヌと言う人柄に興味を持った。



-----------------------------------------



「お嬢さん、今日はこれぐらいにしようかね」


雑草がいくつか持ってきたバケツいっぱいになっているのを見て、ミレーヌは手を止めた。

気が付くと、真上にあった太陽がいくらか移動していた。


「夢中で気が付かなかったわ…結構時間がたっていたのね」

「いやー助かったよお嬢さん。二日かかる所を今日一日で終わらせられた」

「わたくし、お花を見るのも育てるのも大好きなんです。だからとっても楽しかったです」

「そうかい…じゃあ今度温室に案内しよう。約束じゃ」


温室と言う言葉を聞いて、ミレーヌは顔をほころばせた。

ここの庭同様、きっとすばらしい温室に違いない。


「えぇ。楽しみにしています」

「お嬢さん。じゃ、また」


そう言って片手を上げるとおじいさんは去っていった。


「ミレーヌ様…、部屋へ戻りましょう。着替えないと…」


リリーに言われて着ているものに視線を向けると、ドレスの至る所に土がこべり付いていた。

しかも、庭のテーブルの上にあるティーセットが目に入り、ただ花壇を眺めるだけのつもりだったのに、ついつい庭師と一緒に雑草を抜いてしまっていた自分を思い出し、恥ずかしくなった。


「そうね。せっかくお茶の用意してくれたっていうのにわたくしったら…セレナごめんなさいね。着替えたら飲むわ」


急に謝られたセレナはぶんぶんと手を振り、「い、いいんですよ。じゃあ新しいお湯貰ってきます」と言って部屋を出て行った。

残されたミレーヌとリリーは、汚れたドレスを着替えるため寝室へ移動した。


着替えも終わり、応接室へ顔を出すと、セレナがお湯が入ったポットを持って戻ってきていた。


お茶を飲んで一息付いた所で扉がノックされた。


「誰でしょうか?」


そう言ってセレナは扉を開けて訪問者を中に入れた。

「失礼致します」と言いながら入ってきた人物はミレーヌが会った事のない男性だった。


「ミレーヌ様、はじめまして。私、陛下の秘書をさせて頂いております、ハンクと申します。陛下より伝言をお伝えしに来ました」

「伝言を?」

「はい。陛下とのご面会は三日後、午後との事です」

「三日後、午後ですね?わかりました」

「はい。それでは私はこれで…」

「えぇ。ありがとう」


ハンクは一礼すると部屋を出て行った。

扉がきっちりと閉まるのを見届けると、セレナは「陛下とご面会なさるんですか?」と聞いてきた。


「えぇ…リリーに陛下と面会が出来るか頼んでいたの」

「そうだったんですか」


セレナは納得したのかそれ以上は何も聞いてくることは無く、ミレーヌはお茶を飲みながら、陛下との面会の事を考えていた。



庭師のおじいさん登場しました。

これからちょくちょく登場予定です。

お話自体はすこーーーし進んだ程度になってしまいました。

さて、3日後は陛下と面会です。

次は陛下(マルクスのお父さん)が登場します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ