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第39話:告白

ミレーヌはマルクスが執務を終え、部屋へと戻ってくるのを今か今かと待っていた。


昼間ダラスから聞かされた舞踏会の話…。

侍女達は大々的に行われる久々の舞踏会とあって目を輝かせダラスの話を聞いていたが、ミレーヌはいくら両親が参加すると言われても素直に喜べなかった。


書庫で知らない男に言われた「殺されたくなければ、国に帰れ」という言葉に不安が無いと言えば嘘になる。

だが、一番の気がかりはマルクスが何を考えているのかが分からない事だった。


「まだ起きてたのか?」

「………!!」


声を掛けられハッとして顔を上げると、いつの間にかマルクスが目の前に立っていた。

考え込むあまり、彼が戻ってきた事にも気が付かなかった。


「お疲れ様です…あの…」

「なんだ?」

「舞踏会の事ですけど……」

「……あぁ…ダラスに伝えるように言ったが、聞いたか?」

「はい…あの、でも…いいんですか?」

「いいって?」

「このままだと、婚約が本当に公のものになってしまうのではないですか?」

「………」

「わたくしは…」

「仕方ないだろ?親父が招待状も出して……」


一瞬、聞き間違えたのかと耳を疑った。

でも彼は確かに「仕方ない」と口にした…。

あれだけ自分を否定してきたのに!!


「”仕方ない”で済ませるのですか?なら、あなたにとっては特に何とも思わないと?」

「そんなこと言ってない!!」

「じゃあ、何だと言うんですか!?わたくしは…正直あなたが分かりません!」

「…え?」

「今のわたくし達は偽りの婚約をしている状態のはずです…あなたが結婚はしたくないと…わたくしを妃と認めないと言って…それでも、あなたの事情を汲んで偽りの婚約者になると決めたのに…それなのに…」

「………な…にが言いたいんだ?」

「……わたくしの事…嫌いですか?」



真っ直ぐと目を見てそう言えば彼は一瞬うろたえた後ミレーヌから視線を外した。

それでもミレーヌはもう一度言い聞かせるように言った。


「嫌いですか?」

「…急に何を言い出すんだ?そんな事聞いてどうする?」

「誤魔化さないで下さい!」

「別に誤魔化してなんかいない…」

「じゃあ、答えてください」


上目遣いに睨みながら言うと、マルクスは小さくため息を吐き出すとボソッと言った。


「……嫌ってなど…いない」

「………」

「………」

「…………じゃあ、わたくしの事をどう思ってるのか教えてください」


ミレーヌは今まで聞くのが怖くて避けてきた事をマルクスに問いかけた。

彼は戸惑いの表情を浮かべるとそのまま黙り込んでしまった。




マルクスはミレーヌの問いかけにどう答えるべきなのか迷っていた。

どう思っているかと問われれば”好き”に決まっている。

そう思うのに、本当の気持ちを伝えたところでそれを信じてくれるか不安で、その二文字を口にすることが出来ないでいた。


「答えられませんか?」


黙ったままのマルクスに痺れを切らしたのかミレーヌは悲しい表情を浮かべるとそう口にした。

それでも何と言っていいのか分からないマルクスは視線を逸らし尚も黙ってしまう。


「最近のマルクス様は黙ってばかりですね…嫌いでなければ、何ですか?昼間は同情でもないとも…では、特に何とも思ってなくて、興味も無いという事でしょうか?そうならそうとおっしゃってくれればよろしいのに…ここでお会いした時わたくしの事を否定なさったのなら、変な優しさなんて見せないでそれを突き通して下さい!…じゃなきゃ……あなたを…諦めるどころか…」


マルクスにぶつける様に言っているうちに、これまでの事が次々と頭の中に思い浮かんで、胸が苦しくなった。

もう感情を抑えることができない…自分の気持ちが溢れすぎて苦しくて仕方がない。

この苦しさから逃れるためにはもう………。


「……好きです」




そういった瞬間、驚いたようにマルクスは彼女に目を向け、始めて二人の視線が絡み合う。

彼は驚いた表情のまま固まっている。

驚き以外の反応をしめさないマルクスに強い不安を感じ、ミレーヌは彼を見ていられなくなり瞼をギュッと閉じて視界を遮った。


勢いでいってしまったけど…もし拒絶されてしまったら-------。



そんなミレーヌの不安を余所に、突然告白されたマルクスは顔に熱が集中していくのを自覚していた。

端から見れば、きっと耳まで真っ赤だろう。

目をギュッと閉じて何かに怯えているようなミレーヌに愛しさが込み上げる。

力いっぱい抱きしめたい衝動にかられた。

だけど、初めて聞いた彼女の気持ちを確かめたい気持ちが勝った……。


「ほ…本当か…?」


そうぼそりとつぶやくように言うと、「えっ!?」とミレーヌは閉じていた目をパッと開きマルクスを凝視した。

顔を真っ赤に染め、熱っぽい視線を送っていたマルクスは、突然顔を上げたミレーヌに反応が遅れた。

しまった!と思った瞬間、これ以上ないほどの恥ずかしさが込み上げ、マルクスは掌を顔にやり、無理やり表情を隠そうとした。

だが、すばやく伸びてきたミレーヌの手がそれを阻止しようとする。


「どうして隠すんですか!?」


そう言って手を抑え込まれたマルクスはせめてもの抵抗に顔をそむけた。

ミレーヌは今までにない彼の反応を見て、更に期待の籠った目をマルクスに向けた。

そんなミレーヌの視線に一瞬たじろぐ。


「ミ、ミレーヌ…?」

「マルクス様……もしかして…わたくしの事を……」


確信めいたミレーヌの物言いにマルクスは慌てて彼女が先を言うのを遮った。


「やめろ!それ以上言うな…!!」

「あ……」


もう、ミレーヌの胸は期待感ではち切れそうだった。

これ以上は自分で言いたい。

けど、期待の籠った視線を向けられたマルクスは心の中でため息を付いた。



「……………あぁ…くそっ!そうだ…お前が好きだ!これで満足か!?」

「………」


やけくそ気味にそう言った彼はふて腐れた様にドカリと音を立てて長椅子に座り込みそっぽを向いた。

そんな彼を呆然と見つめ続けるミレーヌ。

ついさっきまで期待の籠った視線を向けてたくせに、なんの反応も示してこないなんて。

マルクスはそっぽを向いていた顔をミレーヌに戻し不審な目を向けた。


「…………おい」

「ご、ごめんなさい…あまりにも嬉しくて…」

「はぁ……まぁいい…」


そう言うと徐に立ち上がったマルクスはミレーヌに近づき、抱きしめようと手を伸ばしたその時だった----------。




ドンッドンッドンッ


部屋の扉を勢いよく叩かれ。突然の事に驚き固まる二人。


「夜分遅く申し訳ありません!ここを開けてもらえませんか!?」


と緊迫したような声が部屋に響き、我に返ったミレーヌとマルクスは慌てて扉を開けた。

すると入ってきたのは青い顔をしたセレナだった。


「大変です!!リリーがどこにも居ないんです!!」


あまりの急展開でびっくりですよね…?

書いてる本人が一番驚いてます。


更新も滞ってしまって待っていてくださった方には本当に申し訳なかったです。

最後まで書き上げてからUP予定でしたが、これ以上お待たせするのも悪いと思い更新させてもらいました。

これからもお付き合い頂けたら嬉しいです。

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