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第35話:騙されたマルクス



温室へ二人で行った日から彼が優しいと感じるのはやっぱり気のせいじゃないような…?

あれからマルクスは忙しそうなのに、食事は必ず一緒に取り、夜も執務室に篭る事無く早く部屋へやって来る。

仕事を部屋に持ち込んでしている事もあった。


それだけなら義務としてそうしているようにも見えるが、違うのだ。

多分今までの彼だったらきっと同じ部屋に居ても会話も無く一緒に居るのも辛かったと思う。


だけど、今の彼はピリピリとした感じも無く、以前より話しかけやすくなった気もするし、時には笑ったりとまるで別人のようで…。

本来はこんな人だったのだろうか?

いい事なんだろうけど、そうされればされるほど辛い。

もしかして?と期待しちゃいけないと思っててもしてしまうの繰り返し……。


「はぁ……」

「どうかしたんですか?」


本日何度目かのため息を付いた所でリリーに声を掛けられた。

今この部屋にはリリーと二人っきり。

常に他の侍女が居たり、マルクスが居たりしたからリリーと二人っきりになるのは久々かもしれない。


「何か悩み事ですか?」

「悩みというか……ねぇ、最近マルクス様、変じゃない?」

「え?変…ですか?」

「何ていうか、そうね…今までの冷たい態度が急に柔らかくなったと言うか…」

「うーん…言われてみれば確かに雰囲気が変わったような気がしますね」


ミレーヌはやっぱりと思った。

マルクスが変わったと思うのは自分だけでは無かった。


「どうしてだろう?」

「何かいい事があったとかでしょうか?」

「うーーん」





--------------------------------------------------




ミレーヌとリリーが首を捻っている頃、マルクスは執務室で仕事に没頭していた。


最近は早めにミレーヌの待つ部屋へと戻るため、いつもの倍のペースで仕事をこなす毎日だった。


「マルクス様、少しは休憩なさったらどうです?」

「………」


ダラスが気を遣って声を掛けてもほぼ無視でずっと机にかじりついている。

仕事以外の話は全く聞いてない…。

だが、以前と比べるとイライラしている様子は無い。


これはもしや?


「そんなにミレーヌ様にお会いしたいんですか?」


そう言った瞬間、今までどんなに声を掛けようとも顔を上げなかったのに、マルクスは勢い良く顔を上げて「ち、違う!!」などと慌てふためく。


今の反応でダラスは確信した。

大体、顔を真っ赤にして言われれば誰が見てもそれが嘘だとわかる。

ちょっと鎌を掛けてやろうとダラスは心の中でほくそ笑んだ。


「はいはい。では、そういうことにしときます」

「なんだ?それが、主人に対する物の言い方か?」

「マルクス様が素直じゃないからですよ」

「は?」

「で、気持ちは伝えたんですか?」

「な、何の話だっ!」

「もちろん、マルクス様の想いをミレーヌ様に言ったのかって事ですよ」


そう言われた瞬間、マルクスの動きがピタリと停止した。


(なっ、なんでこいつ、俺の気持ちを知ってるんだ!?)


まさかダラスに鎌を掛けられているとも知らずにマルクスは焦る。


「……まだ、言ってない」

「何も?」

「あぁ、そうだ!!」

「どうしてですか?早く言った方が…」

「はぁ!?そんな、いきなり好きだなんて言えるか!!」


そう大声で叫けべば、水を打ったように静まり返った。


「………」

「お、おい…なんで黙るんだよ?」

「いえ…まさか貴方がミレーヌ様に好きだと言おうとしてるとは思いませんでした」


ダラスは、そう口では言いつつ心の中では「やっぱりね」とニヤつく。

一方マルクスはダラスの言葉に騙されたんだと気が付く。


「あ、ああっ!!!?」

「そうですか…マルクス様が…ミレーヌ様をねぇ…ふーん」


と、ブツブツと言ってみればマルクスが面白いほど反応する。


「いいい、いや!!今のは忘れろ!!」

「何言ってるんですか?貴重なマルクス様の愛の告白をそう簡単に忘れられる訳が無いじゃないですか?」

「あ、あのなぁ!!」

「まぁまぁ、そう照れなくても」

「………っもういい!!資料を取ってくる!!」



何を言っても墓穴を掘りそうな状況に、ついにマルクスは逃げ出した。

執務室を出ると、後をついてこようとする護衛を説き伏せ彼は一人で書庫へ向かったのだった。

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