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第30話:声の正体

「じゃあそろそろ出ましょうか?」

「そうですね…」

「あぁ」


マルクスもダラスも仕事が山のように残っているし、いつまでも三人でこんな所に居たらまずいという話になり、後日話の続きをしようということになった。


「ちょっと待てダラス」


そう言って廊下へ続く扉を開けようとしていたダラスはドアノブへ伸ばしていた手を下ろし振り返った。


「なんですか?」

「足音が聞こえる」

「「え?」」


ミレーヌが耳をすませると確かに廊下側から足音が聞こえる。

その足音は目の前にある扉の前まで来るとピタリと止まった。


「ど、どうするんですか?」と声を潜めてすぐ後ろに居たマルクスに問いかける。


マルクスが口を開けようとした瞬間、コンコンと扉が叩かれる音が部屋に響いた。

ドキッとした。

ここへ来る途中に誰かに見つかったのか?

それがもしアリス側の人間だったら…。

そう思うとミレーヌは居ても経ってもいられない。


「誰だ」


ソワソワしているミレーヌと違い、落ち着き払ったマルクスの声と表情。

ダラスに視線を向けてみれば特に焦りもせずこちらも落ち着いているように見える。

そんな二人を見て、焦っているのは自分だけなんだと思うと少し恥ずかしかった。


「リリーです」


(リリー!?え?)


扉の向こうに居るのはリリーだったと一瞬安心したものの、何故ここに?と疑問が湧き出てきた。

三人で顔を見合す。


「あのっ、開けてもよろしいですか?」


何だか切羽詰ったような様子にダラスは扉を開けた。

するとリリーはサッと身体を部屋へ入れると扉を静かに閉めた。

ミレーヌが駆け寄ると若干リリーの顔色が悪いように見える。


「ど、どうしたの?なんでここが?」

「えと…その…さっき廊下で見かけて…それよりお話が!」

「とりあえず奥行くぞ…」


リリーの様子がおかしいと判断したマルクスはまた元居た寝室へ来るように促す。

全員が寝室へと入った事を確認するとリリーは口を開いた。


「あの、さっき書庫室にいたんですけど…」


そう言って切り出された話に三人は黙り込んだ。

最初に口を開いたのはマルクスだった。


「そうか…早速動き出したという訳か…」

「………」

「で、女の声に聞き覚えがあると言ったが、誰だ?」

「顔を見たわけではないので確信は持てませんが…声はクラリスのものでした」

「え!?ク、クラリス!?」


ミレーヌが驚くのも無理は無い。

正直ここに居る誰もが信じられないという表情を浮かべている。


「おい、ダラス…今日中にも身元を調べろ」

「わかりました」

「ただ、まだ確信は持てない。泳がす為にもこのままミレーヌに付いててもらう」


いいな?と言う目線をミレーヌに向け、彼女が頷くのを確認するとマルクスはリリーに向き直った。


「ここに来るまでに誰かに見られはしなかったか?」

「はい。大丈夫だと思います」

「そうか…とりあえず教えてくれてありがとう。これで対策も練りやすくなった」

「あ…いいえ…」


リリーは若干俯いていたから気が付かなかった様だが、ミレーヌは見逃さなかった。

マルクスが見た事も無い優しい微笑をリリーに向けたその一瞬を…。

この場に相応しくない、自分の中に湧き出てくる黒い感情にミレーヌは必死に蓋をした。


「ミ…ヌ、ミレーヌ」


何度目かの呼びかけにやっとミレーヌは俯いていた顔をパッと上げた。

その表情は少し暗かった。


「大丈夫か?」

「え?なぜ?」

「何だか…」


自分から大丈夫かと問いかけておいて、なぜ?と言われても、マルクスは表情が暗いからとは言えない。

それじゃ、まるで自分がミレーヌを気にしていると思われてしまうし、そんなのは認めたくない。


「?」

「いや、何でもない」


まぁ、自分を狙っている人物が身近の人間だと知ったからだとマルクスは自分に言い聞かせ、そっぽを向くと、皆を部屋から出るように促した。


ダラスが横でマルクスの言動に口の端を上げているのにも気づかずに…。



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