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第24話:鈍感なマルクス

マルクスは自室へ戻るつもりだったが、その途中進路を変え執務室へとやって来ていた。

今の所急ぎの仕事などないのだが…。

扉を開けると、ダラスが背を向けて長いすに座っていた。

何やら集中していて、人が入ってきたことにも気が付いていないようだ。


「何をしてるんだ?」


後ろから急に声を掛けたからか、ダラスは慌てて振り向いた。


「あ、あぁ…マルクス様でしたか…」

「おいおい、護衛でもあるお前が人の気配に気が付かないなんてある意味死活問題だぞ?」

「すいません、ちょっと問題が起こりまして」

「問題?」

「えぇ、例の橋のことなんですが…つい先日貿易商の一行がその橋を通る時にどうやら一部が崩れ怪我をしたそうなんです。これが報告書です」


渡された書類に一通り目を通すと、確かに負傷者有りと書かれていた。


「これは一刻も早く修繕しなくては大惨事にもなりかねないかと…」

「そうだな…」


本当なら本腰を入れて取り組まなくてはならないと言うのに、ミレーヌの事もどうにかしなくてはならないのだ。


「そう言えば、ミレーヌ様との食事はどうだったんです?」

「あぁ…それなんだが…」


マルクスは食事の後に話し合ったことをダラスに教えるべきか迷った。

ダラスは自分の身近にいる人間の中でも一番信頼している人物だ。

彼が自分を裏切ることはないとは思うのだが…。


マルクスは迷った挙句、彼にすべてを話す事にした。

もはや自分一人でどうにかできる問題でもないような気がしたからだ。


「実は、お前に黙ってた事がある」

「……?何を黙っていたというんです?」

「俺の母親の事だ…」

「…前王妃様?それって…まさか!?」


ダラスは前王妃が亡くなった時周りの者に異議を唱えていた。

皆は病死と信じて疑わなかったのだが、ダラスは何かがおかしいと思い必死に訴えたのだが、誰も取り合ってはくれなかった。

もちろん息子であるマルクスにも掛け合ったが、当時の彼は誰の話も聞きたくないと部屋へ閉じこもってしまい話を出来るような状態ではなく結局うやむやになってしまい今日まで至ってしまったのだった。


「……?お前何か知っていたのか?」


母親…前王妃についてダラスと何か話した覚えの無いマルクスにとって、彼の反応にはいささか疑問を感じた。


「知っていると言うか…前王妃様がお亡くなりになった時、私は何かがおかしいと周りの者に色々掛け合ったのですが、誰一人として聞いてくれる者はいませんでした。もちろん、マルクス様にもお話をしなくてはと思っていたのですが、当時のあなたは何ヶ月も部屋へ篭ってしまっていたので結局うやむやに…」


マルクスは一人で母親の事に関して悩んできた事を今更ながら後悔した。

まさか彼がそんな事を思っていたとは考えもしなかった。


「そうか…ずっと俺だけだと思っていた…」


そう言うとマルクスは鍵が付いたネックレスを首元から外すと、ある棚の引き出しの一つに鍵を差し込むとそれを回す。

引き出しを開け、中に入っていた物を取り出すと、ダラスに差し出した。


「これは?」

「ユーリの日記だ」

「?」

「この日記の最後の方に、母の事が書いてある」


「えっ!?」と驚いた声を出したかと思うと、ダラスは急いで手渡された日記のページをめくり始めた。

そして問題のページを見つけると更に驚愕とした顔つきになった。


「こ、これは…本当ですか?」

「あぁ。俺はそう思って誰の目にも触れぬよう保管してきた。下手にバレたらまずい事になりそうだったからな」

「やはり…前王妃様は病死などではなく……この、ある方って誰でしょうか?」

「俺は現王妃、アリスだと考えている」

「え!?」

「だが、確たる証拠が無く、憶測でしかないのだが…」

「まぁ…前王妃様がお亡くなりになってからのアリス様は更に積極的ではあったようですが…で、ミレーヌ様はどうなったんですか?」


ミレーヌの事を聞いたのに、前王妃の話が出てきてだいぶ話がそれてしまっていたが、それはそれで気になっていた。


「それなんだが…」


マルクスは食事の後にミレーヌに話した内容をダラスに洗いざらい話した。

すると、普段真面目な彼はマルクスの話しにどんどん顔を曇らせ…。


「マルクス様…あなたって人は…」

「何だ!何か文句でもあるのか!?」

「文句というか…ミレーヌ様が何だか不憫に思えてきましたよ」

「はぁ!?」


マルクスは自分がミレーヌに対してどんな事を言ったのか思い出してみたが、何で不憫なのかが分からず首を傾げた。


「あのですね?まず、結婚するためにこの国へ来た方に対して、結婚することにしてくれだなんてかなり失礼な話ですよ?それに、物を贈ればいいってものでもありませんよ…現にミレーヌ様は物が欲しいわけじゃないとおっしゃったんでしょう?」

「あ、あぁ…そうだが…」

「ミレーヌ様が泣き出したのもきっと…全く…鈍感にもほどがありますよ…」

「なっ!!主人に向かって鈍感だと!?おまえいつからそんなに偉くなったんだ!」

「まぁまぁ、ちょっと落ち着いてください…で、本当に分からないんですか?」

「何がだ!」

「もちろん、ミレーヌ様の気持ちですよ」


(気持ちだと?どんな気持ちが俺に対してあると言うんだ!?)


マルクスは自分に分からないことが、ダラスは分かっているみたいな言い方に腹が立った。


「ミレーヌ様はきっと、あなたの事が好きなんだと思いますよ」

「………はぁ!?」








次回もよろしくお願いします。

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