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第12話:ミレーヌの悩み

あれから数日がたった。


ミレーヌはどうしたら良いのか行き詰っていた。

陛下より三ヶ月の滞在を許されたが、マルクスの態度は依然変わらずむしろ避けられている。

自分を嫌っている相手にどう接したら良いかなんて知らない。

大体、そこまで人に嫌われたことも無ければ、嫌った事もないのだ。

恋愛初心者のミレーヌにはアプローチの仕方などまるでわからないのが現状だった。


「はぁ…」


ここ数日でため息も板についてしまい、リリー達から心配されてしまっている。

気を使ってか何も聞いては来ないが…。


「ミレーヌ様今日は良い天気ですよ…外へ出てみませんか?」

「う……ん…」


そうして外へ出てみても、一向に気分は晴れない。

視線は無意識に南塔のマルクスの執務室へと向けられチラッとでも良いからマルクスの姿を見る事は出来ないかと考えてしまう。


(見てるだけじゃこれまでと何も変わらないじゃない…)


「お嬢さん、何か悩み事かね?」


そう言われてやっと自分が今庭師(名はヨダンさんと言うらしい…)のお手伝いをしているんだったと気が付いた。

今日は新しい種を植えるのに土を掘り返す作業を頼まれていた。


「いえ…お手伝いしているのにぼーっとしてしまってごめんなさい」

「それは別にいいんじゃ。でも、何かあるなら話してみてはどうじゃ?まぁ、こんな老いぼれに話した所で解決できるとは思わないが…」

「えっと…その………、わたくしある方に嫌われてるみたいで…」

「嫌われてる?」

「はい。そんな相手にどうやって接して良いのかわからなくて…」

「そうかぁ…それは大変じゃな…」


そう言ってヨダンは顎に手を置いて何かを考えこんでしまった。

そんな姿を見てミレーヌは少し申し訳なくて黙々と作業を続けた。


「お嬢さんは…その相手が好きだから悩んでいるんじゃないのかい?」

「えっ!?」


どうしてわかったのかと言う顔をすると「やっぱりな…」と彼は笑顔を浮かべた。

別に隠す事でもないのだが、なんだか照れくさくて顔が熱くなった。


「好きじゃなきゃそんなに悩む事もないだろう?嫌いならどうでもいい話じゃ」

「…まぁ…そうですね…」

「相手には好きと伝えたのかい?」

「……いえ…言っても信じてくれないと思います」

「どうして?」

「どうしてでしょうね…そんな気がするんです」

「そうか……」


しゅんとしてしまったミレーヌにヨダンはそれ以上何も言わなかった。



こうしてミレーヌが悩んでいる間にも王妃アリスは着々と次の計画を進めていた。


「ミレーヌは今どうしているのかしら?」


部屋の中央に置かれた長椅子に足を組んで座りながらアリスは尋ねた。


「今の所マルクス様に避けられているのか、お会いしているという事はないようです」

「そう…マルクスの気が変わる前に何とかしないとね…もし、気が変わる様な事があれば…消えてもらうしかないわね」

「はい…仰せのままに…」


---------------------------------------------------


ミレーヌは中庭から部屋へ戻る途中の回廊を歩いていると、突然曲がり角から誰かが現われ出会い頭にぶつかってしまった。


「ごめんなさい」


言ってから顔を上げて固まった。

目の前にはマルクスが顔をしかめて立っていたからだ。

マルクスは腕を払いミレーヌを睨み付けた。


「気をつけろ。……それになんだ?その格好は…」


そう言われて、視線をマルクスから自分の服装へ向けると顔が真っ赤になるのがわかった。


「こっ…これは!」


そう…ミレーヌの服は侍女が着るようなワンピースで、しかもそれは土で汚れたもの。

必死に土を払おうとしたが、もう遅い。

マルクスは更に顔を歪めた。


「お前は一体何をしにきたのだ?まさか土を弄りにわざわざやって来たんじゃないだろうな?」

「………」

「また、だんまりか…」


俯いてしまったミレーヌにマルクスはため息を吐くとそのままミレーヌの脇を通って奥へ去っていってしまった。


何も言い返す事できず、呆然とその場に立ち尽くしていたミレーヌだったが、リリーに声を掛けられ我に返るとその場を離れ部屋へと歩き出した。

そんな姿をマルクスに見られているとも気づかずに---------。



部屋へ戻ってきたミレーヌは自分の姿を鏡に映し更に落ち込んだ。

土で汚れているのは服だけじゃなく、頬まで…。

なんと不様な格好を晒してしまったのか…思い出しただけで、恥ずかしい…。

もう恥ずかし過ぎて、穴があったら入りたいとはこのことだろう。

これでは言われた事を否定する事なんかできはしない。


でも何かに没頭していなければ、マルクスのことばかり一日中考えてしまい気が滅入るばかりなのだ。


(どうせ、嫌われてるんだから…もういいのよ)


そう自傷気味に笑うしかないミレーヌだった。

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