8.とある兄弟たちの未来の話⑧
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『アーディエンスも従甥姪には優しいだろう』
ウォーロックが兄だけでなく甥とも関係を再構築させ始めた時、アーディエンスはそれを見守りつつも、シルファールに対してそこはかとなく嫉妬心と警戒心を見せていた。結局は叔父を慕っているシルファールに、大好きな父親を取られるかもしれないと思ったのだろう。
ウォーロックが『僕の掌中の珠はイルーナとアーディエンスだよ』と断言したことで落ち着いたものの、今でもシルファールとウォーロックがほんわかと会話をしている際は、悔しげな顔で陰からシルファールを睨んでいる。それは、使役たちに囲まれていたウォーロックを遠くから見ていた、かつてのアルシオの顔とそっくりだった。
弱みを持ちたくないから大事な者など必要ない。アルシオはそう豪語しながらも、密かに弟の様子を窺っていた。いつか自分にも声をかけてくれるのではないかと思って。じっとウォーロックを注視するアーディエンスの目は、笑ってしまうほど過去のアルシオに似ている。
だが、そんなアーディエンスも、シルファールの御子神にはめっぽう甘い。自身にとっては従甥姪となる雛神たちを、せっせと可愛がっている。
『そうだね。あ、この前、ルゥとロンと一緒に遊んだよ。シルファールの邸で宝探しをしたんだ』
孫神たちの愛称を呼び、ウォーロックが目を細める。
『僕のために宝物を用意してくれたんだって。大広間のどこかに隠してあるから見付けて下さい、もちろん神威の使用は禁止ですよと言われてね。一生懸命探しても中々見付からなくて、苦戦したんだ』
『きちんと見たのか? 調度品の配置が不自然になっている所や、何かを動かした形跡がある場所はなかったのか?』
『ううん、なかったと思う』
自信なさげに言ったウォーロックが、ポンと手を打った。
『そういえば、不自然な所はなかったけど、不思議な物はあったよ。大広間の一番目立つ壁際に、宝箱の絵が書かれた巨大な矢印が貼ってあるんだ。前にお邪魔した時はなかったと思うんだけど』
『…………』
『おかしいな、この矢印は何だろう。綺麗な宝箱だなぁと思いながら、取り合えず通り過ぎて隅の方から順に探していったんだけど』
おかしいな、じゃねえよ。その矢印が宝物とやらへのガイドだろ。というか宝箱が描いてあるの思いっ切り目にしてるじゃねえか。内心でツッコむアルシオの胸中など知らず、ウォーロックはのほほんと続ける。
『そうしたら、後ろでルゥたちがコソコソ話してるんだ。これだけ分かりやすくしてるのに気付かないって、お祖父様ってある意味すごいねって。何のことだかよく分からないけど、すごいって褒められていたみたいだから、嬉しくなったよ。でも、あの子たちは一体何の話をしていたんだろう?』
驚異的な鈍感力を遺憾無く発揮する弟に、返す言葉もないアルシオ。兄の様子に気付かず、ウォーロックは再びあっと声を上げた。
『今思えば、やっと見付けた宝箱はあの矢印の先にあったんだ。わぁ、すごい偶然だ。兄さんもそう思うよね?』
『……お前……その体たらくでどうやって副大精霊なんぞを務めていたんだ……?』
兄としてきちんとウォーロックと向き合うようになってから、アルシオは驚愕の事実に直面した。アルシオに迫るほどの有能さだと評判だったはずの弟の思考は、一皮剥けば信じがたいほどポンコツだったのだ。
かといって、使役時代のウォーロックの評判が詐欺だったとは思えない。アルシオとて弟と業務上のやり取りはしっかりしていたため、その手腕が本物であったことはよく知っている。幾多の使役も、神々ですら、彼の仕事ぶりを評価していた。優秀であることは真実だったはずだ。なのに何故、今こうなってしまったのか。
頭を悩ませたアルシオは、さらにウォーロックと交流を重ねた末、驚愕の答えに辿り着いた。
……おそらく、精霊の時は気を張っていただけで、本当はこちらのパッパラパーモードの方が素なのだと。
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