3.とある兄弟たちの未来の話③
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その少し後、アーディエンスも神成を果たした。ウォーロックと共に、悪神へ負の念を献上する儀式の概要を固め、形にした上で今後も続くよう使役界に伝承した功績を称えてのものだった。加えて最高神全柱の従神に望まれ、それを受け入れた。
……なお、ウォーロックも同様に最高神たちの従神になることを打診されたが、自分にそんな価値はないと必死に固辞していた。同じ立場になっているアルシオとシルファールに合わせる顔も持っていないから、と。
だが、表に出ない裏方ポジションの従神にしても良いと譲歩され、アーディエンスからも一緒に従神になって下さいと泣き落とされ、仕方なく承諾した。ただし、アルシオやシルファールとは極力会わないようにして欲しいという懇願付きだったが。最高神の従神は数が多いので、そのような配置に調整することもできるのだ。
こうなると、大精霊や副大精霊の経験者で神成した者は最高神の従神となるのがスタンダードなように思えてしまうが、そうではない。まず神成させていただける者からして少数であり、めでたく神性を授かっても従神としてスカウトされることは稀だ。大抵は下位の神格を賜り、ひっそりと神々の末席に加わるのが普通だ。
つまり、アルシオ、シルファール、ウォーロック、アーディエンスは格別の厚遇を受けたと言える。言い換えれば、それだけ神々から気に入られていた、あるいは認められていたのだ。
『お前とアーディエンスの働きにより、使役界の負の念を処理する目処が立った。……あの老害共も報われたことだろう。負の念を半永続的に処理する算段が付き、お前も神成したとなれば心残りは無しなどとほざき、能天気に昇華して消えて行ったのだったな』
正式な神となった以上、ウォーロックも永久に安泰だ。本当に良かった、と心から呟き、度々夢に出たり意識の中に語りかけてウォーロックをケアしていた先達たちの残留思念は、安堵と共に完全に消滅した。
なお、ウォーロックとアーディエンスが神成した頃に激白されたことだが、どうやらあの腐れ先達共は神々から本当に特別扱いをされていたらしい。消滅してから残留思念となった後は、正真正銘の神格を以って放つ本物の神威を使えるようにしてもらっていたという。しかもアルシオたちと同等の、最高神たちの従神に匹敵し得るほどの御稜威をだ。
彼らの意思の一粒が消え果てる時まで、思い残すことなく在れるようにという神々の配慮だった。まず有り得ないレベルの、異様に異様を極めた厚遇だ。
だが彼らは、そのことをこちらに言わなかった。完全な神威を使えるとなれば、それはもう正規の神と同義だ。限定的な神格しか持たない大精霊アーディエンスの力を遥かに超越するため、彼の防御を突破してまた操られるかもしれないと思ったウォーロックが怖がってしまうかもしれなかった。
ゆえに神威のことは秘匿し、大した力は使えない思念の残り滓のフリをしながらウォーロックやシルファールと接し、傷付いた彼らの魂をこっそり治癒していた。
その甲斐もあり、シルファールは短期間で茶会に参加できるようになり、他者作の料理も食べられるようになった。ウォーロックもまた、先達たちのケアを受けたことで食欲や睡眠状況を改善させた。
そうして、ウォーロックとアーディエンスが神成し、彼ら自身も全き御稜威を手にした後に、初めてその事実を告げた。予想通り萎縮しかかったウォーロックだが、今のお前も完全な神威を使えるのだから、こちらが何か仕掛けても自身の力で相殺できると諭され、平常心を取り戻したという。
それ以降、先達たちは少しの期間、アルシオやウォーロックたちと対話を重ねた上で、これで本当に思い残すことはないと完全消滅を選択した。
いよいよ訪れた昇華の瞬間、その場に呼ばれたのはアルシオとウォーロックだけだった。ミスティーナとシルファール、アーディエンスとイルーナには先に別れを告げて来たという。
だが、最後の最後で先達の中でも最長老たる原初の精霊ラグドールが、サラリと重要な情報をブッ込んでいった。
――アルシオ、ウォーロック。お前たちの双方あるいはいずれかが心から呼んだ時、我らは復活するだろう。当初は私だけが蘇るつもりだったが、他の皆も最後まで一連托生だからと付き合ってくれるそうだ
ただし、精霊や神格持ちの使役のままで蘇るわけではない。後進の声に応えて復活すれば、その時は正規の神格を得た正真正銘の神として蘇るという。そのようになるよう、神々が采配してくれたそうだ。
それを聞いたアルシオは本気で目を据わらせた。一体どれだけ特別扱いされれば気が済むのだこの爺共は、と思ったのだ。
何よりムカつくのは、そこまで神々から目をかけられていた事実を、当事者である彼ら自身が自覚していなかったことだ。何しろ、ウォーロックを操りシルファールを傷付けた咎で神逐されると思い込んでいたのだから。
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