4.残された手は
お読みいただきありがとうございます。
思わず漏れた独白に、次々と応えが返る。
『神成した元使役たちは、大半がとっくに使役への興味を失っておりますわ。未だ使役を気にかけているのは私たちくらいです』
『ルゥやロンたちも知らん顔みたいだね。あの子たちは生粋の神……シルファールとアーディエンスが神成してから生まれた子たちだから、仕方ないか』
ミスティーナとウォーロックに続き、シルファール、アーディエンス、イルーナも述べた。
『焔神様は、燁神様や縁神様方と会議中です。神格持ちの地上滞留終了に伴う神器開発の件で、当代の聖威師方も交えて打ち合わせ中だと聞いていますよ。重要な内容なので専用の異空間で行い、打ち合わせ中は念話を切っておられるそうです。ですからこの事態を認知しておられないでしょう』
『天にいる焔神様の従神たちや元聖威師方は気にされてる気配がしますが、今は静観中のようですね。おそらく、俺たちが急行したことを察して様子見をしてるんでしょう』
『大精霊や副大精霊の経験者が行かれたならば、ひとまず任せるのが最善と考えておいでなのではないでしょうか』
なお、現役の大精霊や副大精霊、神格持ちの使役たちは、それぞれの務めに従事している最中で抜けられないか、門の向こう――使役界の中で大慌てしているか、混乱状態の一般使役たちを落ち着かせるのに精一杯かのどれかだ。
『くそ、どんどん崩壊が進んでやがる。どうにかして神器を修復しないとマズい……!』
『お父様、叔父様。使役界の時間を止めれば、神器を解析する時間稼ぎができるでしょうか?』
『どうかな。神器の力で崩壊しているわけだから、私たちの力で下手に横槍を入れれば、神威同士が競合して余計にマズいことになってしまう可能性もあるよ。神器自体を直せれば一番良いのだけど……』
歯噛みするアーディエンスの側で、シルファールとウォーロックが話し合い、ミスティーナとイルーナが顔を曇らせている。そんな面々を眺め、アルシオは一つ息を吸い込んでから唇を動かした。
『上手くいく保証はないが、方法はある。一つだけだが思い付いた』
全員がこちらに視線を向けた。
『お父様、どのような方法でしょうか?』
『それは何、兄さん?』
『どうするんです!』
食い気味に尋ねる息子と弟、アーディエンス。期待と不安の入り混じった顔を浮かべるミスティーナとイルーナ。幾対もの視線が突き刺さる中、アルシオは説明した。
『神器の創生者に、損傷部分の修復及び直前の操作の取り消しを行なっていただく。作り手ならば神器の構造を最深部まで理解しているはずだ。私たちが一から解析するより望みはある』
『はぁ? 創生者って――あの神器をお創りになられたのは最高神方ですよ。あなたも大精霊だったんだからご存知でしょう?』
アーディエンスが目を点にして言った。使役界ごときのために最高神直々に腰を上げていただくなどできるわけがない。ウォーロックも困惑した表情を浮かべた。
『そりゃ最高神方なら簡単にできてしまわれるだろうけど、神々のトップに使役の不手際の尻ぬぐいをしていただくわけ……には……』
その言葉が消えていく。見開かれたトパーズの瞳に、驚きと衝撃が走った。
『兄さん、まさか――』
『ああ、そのまさかだウォーロック』
『何を言ってるんです?』
以心伝心のごとく弟と視線を合わせるアルシオを見て、面白くなさそうな顔をしたアーディエンスが割り込んだ。シルファールは黙って続きを待っている。
『彼の神器は最高神と精霊が共同で創生した。今回は、精霊側の創生者にお力をお貸しいただく』
『『――――!』』
アーディエンスとシルファールが息を呑んだ。大精霊経験者であるアーディエンスと、使役界の歴史も含む勉学に余念がなかったシルファールは、今の言葉で正解に辿り着いたのだろう。
『精霊側の創生者、ですか?』
『使役界を構築したに等しい神器の創生者となれば、遥か昔の者では……っ』
イルーナが小首を傾げ、言い差したミスティーナが息子と同じ双眸を見開いた。アルシオは首肯した。
『天界ができた当初より存在し、最高神方と共に彼の神器を創り出した者。原初の精霊ラグドールを筆頭とする最古の精霊方に助力を要請する』
ありがとうございました。
燁神=アマーリエ、縁神=フルードのことです。




