表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スピンオフ置き場  作者: 土広 真丘
第1章
12/17

3.打開策が浮かばない

お読みいただきありがとうございます。

『アーディエンスは本当に獰猛な猟犬のようだな』

『うっかり手を出せば骨まで噛み砕かれそうですね』


 小声で囁き合うアルシオとシルファールは、大精霊の頃のアーディエンスと直に対面したことはほとんどない。ミスティーナも然りだ。ウォーロックが出て来やすいようにと、彼らのいる場所が重ならないよう神々が配置や時間を調整していたからだ。

 ミスティーナはともかく、最高神の従神であるアルシオとシルファール、やはり最高神の使役であったアーディエンスは行動範囲の多くが被っているため、バッティングを避けるのは至難の業であったはずだが、天の神々の手腕にかかればそれも可能となる。逆に言えば、ウォーロックはそこまで神々に配慮され、大切にされていた。


 と、そのような事情があったため、アーディエンスが噛み付き犬のごとき苛烈な大精霊だという評は耳にしていたアルシオだが、実際にそれを見たことはなかった。彼らが再び直接見えるようになったのは、ウォーロックとアーディエンス、そしてイルーナが神成した後だ。


『……とにかく、処置が無理なら下手に弄んな。お前はそっちで使役たちの統制を取れ。俺らの方でも何かできねーか考えてみるから。――だから泣くなっての、一番落ち着いてるべきお前が慌てふためいてどーすんだ、しっかりしろ!』


 最後に発破をかけて念話を終えたアーディエンスがウォーロックを見遣り、苦り切った顔で首を横に振る。


『当代は完全にパニックになってます。過去最高のパニクり具合ですね。俺たちで何とかするしかないでしょう』

『困ったね、彼女は実力はあるんだけど焦りやすいから……』


 ウォーロックが眉を下げて腕を組んだ。


『大精霊の神威でも神器を修理できないの?』


 おすおずと聞いたのは、ミスティーナの陰に立つイルーナだ。繊細な美貌ときめ細かい薄紫のロングヘアに、優しげな赤眼。ほっそりした肢体は少し力を入れれば折れてしまいそうなほど儚い。現在ではすっかり調子も良くなり、ミスティーナと茶飲み友達になっている。


『あの神器は、使役界ができた時に神々と精霊が共同で創生した特殊な物なんです。基幹部から破損したとなると、大精霊の力でも修復は難しいかと。正規の神であり、かつ神器の構造に精通している者でなければ厳しいでしょう』


 アーディエンスが礼儀正しい口調で答えた。父母への態度は丁寧なのだ。


『あなた方の御稜威で直してあげられませんか?』


 ミスティーナがアルシオ、ウォーロック、アーディエンスを順繰りに見た。この三神は大精霊ないし副大精霊の経験者だ。彼の神器についてもよく知っているのではないかと、その目が言っていた。だが、全員が首を横に振る。


『それは難題だな、メア。確かに私たちはあの神器の基本的な構造や操作方法などについての情報を受け継いでいる。だが、最も根本を成す基幹部分の詳細設計までは分からない』

『兄さんの言う通りだよ。解析するにしても時間がない。同じ神が創った物だから、神眼を以ってしても時間がかかるし、その前に使役界が潰されてしまう』


 難色を示す兄弟に、アーディエンスも眉間に皺を寄せて補足した。


『一時的に崩壊を抑えようにも、膨大な御稜威が満ちる表の気を長時間押し留めることは困難を極めます。使役界だけを一時別空間に退避させようにも、領域自体が揺らいでいる中でそんなことをしては逆に崩壊させてしまいかねません』


 シルファールが顔をしかめて目をさ迷わせる。アルシオたちが門前に突っ立ったまま入ろうとしないのは、今ここで完全なる神である自分たちが足を踏み入れてしまえば、その神威で使役界の崩壊を内側から促進してしまいかねないからだ。


 何とか事態の打開方法がないかと高速で検討している息子を尻目に、アルシオはこの場に駆け付けた顔ぶれを見回した。


『元使役であった他の神は来る気配がないな』

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ