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冴えない僕の転生ライフ ~スキル〈認識阻害〉で成り上がる!~  作者: 天坂つばさ


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第36話 伯爵様の早馬

 朝、少し早起きをしたら父が何やらドタバタしていた。明らかにいつもと違うって感じの朝だと思う。


「パパ、なんかあったのー?」

「ああ、ウィリー、おはよう。伯爵様の早馬が来たんだ」


「え、緊急の話?」

「そうだね。このあいだの盗賊団だけど、兵士の包囲網を100人ほどが突破したそうなんだよ」


 いっきに目が覚めた。


「え、盗賊団ってそんなに強かったの? たしか2500人の兵士さんが盗賊のアジトに攻め込まなかったっけ?」

「元騎士ばかりの盗賊団だし、よく鍛えられていたんだろうね。包囲されたと分かったと見るや、全員でひとかたまりになって一点突破を図ったらしい」


「なるほど……。2500人をぜんぶ相手にするのはムリだけど、どこか一箇所をこじ開けて逃げるのは可能ってことか……」

「そういうことだね。完全に盗賊が一枚上手だったわけだ」


「それは分かったけど、なんでパパが忙しそうなの?」

「逃走経路を考えると、今日の昼頃には盗賊たちが、私たちの住むこのストラトス領に到達してしまうのだそうだ。それで伯爵様は、ストラトス家に兵を出して迎え撃つよう依頼を出されたんだ」

「えっ、こっちに来ちゃってるんだ」


 100人もの盗賊がこの領地に入り込んだら絶対に荒れるだろうな……。心配だ。

 父がしゃがんで僕の両肩に手を置いた。


「何も心配しなくて大丈夫だよ。私が盗賊をぜんぶやっつけるからね。それに伯爵様とヴァレリー卿の兵も盗賊たちを追いかけてきているから」

「挟み撃ちにできるんだ」


「そういうことだね。ウィリー、パパは盗賊退治に行くから、ちゃんといいこにして待ってるんだよ」

「うん、分かった」


「あと、早馬で夜通し駆けてきてくれた兵士さんに挨拶をしておこうか」

「え?」


 横を見ると疲れ切った顔をして椅子に腰掛けている兵士さんがいた。母がご苦労様ですと水と朝ご飯をお出ししているところだった。30代後半くらいの無精髭で細顔の人だった。人が良さそうな感じの男性だ。


「わっ、申し訳ありません。挨拶が遅れました。エルヴィス・ストラトスの息子、ウィリアムです。このたびは遠路はるばるのご連絡、ありがとうございました」


 おお、なんとしっかりしたお子さんなんだと感心されてしまった。ふふふ、だてに40年間も人生やってないですよ。




 父がパンを口に詰め込むようにして食べた。そしてすぐに戦いの準備をして家の前へと出る。

 そこには武装したアルフレッドさんを始め、うちに士官してくれている兵士が35名も集合してくれていた。本当はうちの兵士の数はもう少し多いんだけど、残りは守備として残しておくらしい。


 父が外へと出て行くと、全員が父の前で膝立ちをした。一番先頭はアルフレッドさんだ。


「エルヴィス様、戦の準備は整いました。いつでも行けますぜ」

「うむ。みんな、緊急な招集にも関わらず来てくれてありがとう」


 父が兵士それぞれの顔を見る。みんなギラギラしている感じだった。戦いを今か今かと待っている感じ。

 父が頼もしそうにする。


「では、我々はこれより、世間を騒がせる大盗賊団の討伐へと向かう。相手は子女を連れ去るような卑怯者集団だ。一切の容赦はいらない。我らストラトス軍が必ずや盗賊を討ち滅ぼし、一番の手柄をとって帰ろうじゃないか!」

「「「「「おう!」」」」」


 おおおっ、凄い迫力だ。これから命のやりとりをする人たちの迫力ってたまらないね。かなり野太い声だったけど、レノアさんを始め女性兵士も何人か混じっている。この世界では男女関係なく兵士になることはできるようだ。


 全員が一斉に立ち上がった。武装した兵士たちはみんなかっこよかった。

 父が家のドアの前に立つ母を振り返った。


「では、行ってくる。留守を頼んだよ」

「はい。あなたもみなさんも、どうか無事にお戻りくださいね」

「ああ、必ず武勲をあげて全員で帰ってくる。では、行こう。進軍だ!」


 アルフレッドさんが最初に立ち上がった。そして気合いの入った声をあげる。


「ストラトス軍、進軍開始ー!」


 アルフレッドさんが先頭に立ち、全員でかっこよく歩いて行く。

 大柄な男性が薔薇と剣の家紋が描かれた旗を持ち上げる。あれはうちの家紋だったね。


 レノアさんは父の隣を歩いていた。たぶん護衛役かな。早馬で来てくれた人も父と共に戦うようだ。馬と一緒に歩いていった。

 ちなみに、うちの兵士たちの中には馬を持っている人は何人かいるけど、今回は徒歩で戦いに行くらしい。山中での戦いになるから馬では不便なんだそうだ。


 兵士たちの背中が遠くなっていく。本当に全員無事に帰ってきてほしいって思った。

 顔見知りが多いからね。僕が散歩中に笑顔で話しかけてくれたり、畑でいいのが取れたからと野菜を持ってきてくれるような人たちばかりなんだ。


 僕は女神様にみんなの勝利と無事を祈った。

 相手は100人の盗賊団だ。たったの36人で相手をするのは大変だろうけど、どうかみなさんご無事で帰ってきてください。


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