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冴えない僕の転生ライフ ~スキル〈認識阻害〉で成り上がる!~  作者: 天坂つばさ


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第33話 救出

 スキル〈認識阻害〉をオンにしたまま誘拐犯とソフィーに近づいていく。

 ソフィーの誘拐に関わった男は二人。どちらも怪しい黒服を着ていて顔も隠している。年齢はたぶんだけど二十代くらいかなぁ。けっこう若いと思う。少なくとも中年って感じではないかな。


「はあーあ、つまんねーな」


 誘拐犯の二人が会話を始めるようだ。


「何がだ? 無事に仕事が終わったじゃねーか。あとは親分に引き渡しをするだけだぞ。あとでパーッと上手い酒でも飲みに行こうや」

「いやあ、せめて誘拐したのが十代とか二十代の女だったらさ。親分たちを待つ間にもうちょっと楽しめたと思わないか?」


「おい、勝手に手をつけると怒られるぞ。大事な金づるの人質だぞ?」

「世の中には傷ものにせずに楽しむ方法ってのもあるだろう? つーか、この年代でもいちおう女か? 試してみるか?」


 ソフィーが怯えた表情に変わってしまった。まだ6歳でも自分がどういう目で見られているのか分かってしまったのだろう。

 ソフィーが少しでも誘拐犯から遠ざかろうとお尻で移動を始めた。


「ぐへへへ」

「お前、趣味悪いな」


 まったくだ。これはきついお仕置きが必要だと思う。

 この男たちの大事なところがしもやけにでもなるように、いつもよりも冷たい氷づけにしてやろう。


「お嬢ちゃん、怖くないからちょーっとスカートをめくらせてね。ギヒヒヒヒ」

「い、いや、パンツは……、パンツだけは……ウィリアム様だけにしか見せないって決めているんです」


「お、いいね、そういうの。俺みたいなダメな男を興奮させるには、最高のセリフだぜ。ぎゃははははははっ」

「い、いやああああああっ、ここに変態がいますっ。ウィリアム様、ウィリアム様あああああああああああああっ!」


 男の手がソフィーのスカートに伸びる。そこで僕は魔法を撃ち放った。


「【マジカルブリザード】!」

「……? うおっ、冷たっ! な、なんだよこれっ、身体がどんどん凍えて……、いや、氷漬けになっていく! 動けねえ! なんなんだよこれはああああああっ!」


 今さら慌てたってもう遅い。

 誘拐犯の男は足下から氷漬けになっていき首のところまで凍った。これでもう動けないだろう。


「こ、これは見たことがあるぞ。氷の魔法だ。しかし、こんなに強力な魔法をいったいどこから撃ったんだ。魔法使いが見当たらないんだが」


 もう一人の誘拐犯が立ち上がり、剣の柄に手を当てる。周囲を警戒するけど、今さら慌ててももう遅すぎるんだよね。


「【マジカルブリザード】!」

「ぎゃあああああああああああああっ! 俺もかよおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 誘拐犯の身体がみるみる凍っていく。よし、これで一件落着かな。

 僕はスキルをオフにして姿を現した。できる限り頼もしい表情を作ってソフィーの正面へと行く。


「ウィリアム様!」


 ソフィーが安心しきった顔になってくれた。


「ソフィー、もう大丈夫だよ。遅くなってごめんね」

「はいっ、絶対に……絶対に来てくださると信じていました。やっぱりあなたは、わたくしの運命の騎士様ですっ」


 安心したからか、ソフィーの両目の端から涙がこぼれ落ちていた。その涙を僕が指で拭ってあげたら、ソフィーは恥ずかしそうにしていた。

 大人たちが駆け込んでくる。そしてすぐに状況を確認してホッとしたようだ。


「よくやったよ、ウィリー」


 父に褒めてもらえた。


「ソフィーちゃん、今ほどいてあげるからね」


 父が剣でスパッと縄を斬ったようだ。すると綺麗に縄だけが斬れてソフィーが自由になっていた。

 ソフィーが笑顔で立ち上がって僕に抱きついてくる。わあ、良い香り。しかも、体温が凄く温かい。


「ウィリアム様、本当にありがとうございますっ。これはほんのお礼の気持ちですっ。ちゅーっ」

「ひゃーっ」


 ソフィーが僕のほっぺに可愛いキスをしてくれた。僕はいっきに身体を緊張させてしまって手足をピーンとしてしまったよ。


 うわぁ、まるで天使の祝福みたいな可憐なキスだよ。キスをしてくれた瞬間、僕は可愛いお花畑に飛ばされて、裸の天使たちに祝福のラッパを吹いてもらった気分になってしまった。


 美少女のキス、最高です。

 ああっ、父がにやにやしながら僕を見ている。なんでか知らないけどウインクしてサムズアップしたぞ。


 別に僕はデレデレしていない。決してデレデレなんてしていないんだからねっ。

 おや、フェリシーが来たぞ。フェアリーマウスの目を通して状況を見ていたから、もう安全だと判断して倉庫に入ってきたんだろう。


 しかし、ソフィーが僕にキスをしている現場までは確認できていなかったようだ。今まさにそのシーンをバッチリ肉眼で見てしまい、驚愕に目を見開いていた。


「う、うああああああああああああああああああっ! ウィリーくんがっ。私のウィリーくんが寝取られちゃってるううううううっ!」


 姉よ、どこでそんな言葉を覚えたんだ。まだ8歳なのに……。


「上書きっ! すぐに上書きをしないとっ!」


 ソフィーと反対側から濃厚なキスをぶちゅーぶちゅーと何度もしてくれた。

 ちなみにソフィーはまだまだ長いキスをほっぺにしてくれている。


 な、なんだこれ……。幸せなのは間違いないんだけど、僕の将来にはたくさんの修羅場が待っているんじゃないか? そんな未来がはっきりと想像できてしまったんだけど。


 いやまあ、それでもいいか。だって、僕はこの2回目の人生ではモテたいんだからね。

 とにかくソフィーが無事で良かったよ。モテることについては、これからの人生でゆっくり考えればいい。今はそう思うことにして、美少女たちの熱いキスを堪能することにした。


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