表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/18

第3話 新しい朝

 転生したことに気がついてから一晩が経った。

 昨日は一日中ベッドで横になって過ごしたけど、両親も姉も僕を一人にさせまいと代わる代わる話相手になってくれたから退屈はしなかった。


 僕は優しい家族に恵まれたんだなってよく分かったよ。それに家族に質問攻めをすることで、自分がどういう家に生まれたのかも分かってきたよ。


 僕ってどうやら貴族の家の子らしい。

 ただ決して裕福な家ではないようだ。階級的には貴族の中で一番低くて、男爵位だと説明された。だからもちろん領地は狭いし、お金もない。ちなみに冬を越すのは毎年のように領民ともども命がけになるとかなんとか。


 バーンッ、と僕の部屋のドアが開けられた。


「あ、ウィリーくん、起きてる!」

 ニッコニコな笑顔で姉のフェリシーが部屋に入ってきた。

「朝ご飯できてるよっ。さあ、お姉ちゃんと一緒に服を着替えて顔を洗いに行こうー」


 ベッドから起き上がった僕に万歳をさせて、フェリシーが僕の服を脱がしていく。そして、フェリシーはタンスに行って今日のコーデを用意して、僕に着せてくれた。なんともしっかりした姉だと思う。


「うん、ウィリーくん、今日もかっこいいよーっ」


 姉がいると毎朝服を着せてもらえるうえに褒めてもらえるのか。前世で姉がいなかった僕には新鮮な体験だった。


「あと何年くらいしたらウィリーくんと結婚できるのかなぁ。楽しみだなぁ。うへへへへ」


 フェリシーがだらしない顔でニヤニヤする。

 ちょっとこの姉は普通の姉とは違うかもしれないなって思い始めている。どうも弟の僕と結婚する気まんまんみたいなんだよね。8歳と5歳の姉弟ってどこもこんな感じなのだろうか。いやぁ、違うと思うなぁ。


 フェリシーに手を引かれて僕は洗面所に向かった。

 お、なんか蛇口があった。思ってた異世界と違うぞ。


「あれ? まさか水道が通ってるの?」

「当たり前でしょ? ……あ、でも、街の外にはまだ通ってないところもあるから、あんまり自慢したらダメだよ?」

「分かったー」


 水道のあるなしで生活の楽さはかなり変わってくる。僕が想像していたよりもこの世界の住環境って発展しているのかもしれないな。


 ていうか、目の前に鏡があるじゃん。

 ずっと自分の顔が鏡に映っていたけど、よその知らない子が映っているんだと思っていた。


 姉のフェリシーとそっくりな美少女5歳児って感じだった。僕は男の子だけど完全なる女の子顔だった。目はパッチリしているし、髪質まで女の子みたいだ。どうやら僕は綺麗な母親の血を濃く受け継いだらしい。

 この容姿なら、成長したら綺麗な顔のイケメンに成長するだろう。


「むふふ、この顔ならモテるかも」


 前世ではまったくもって冴えない感じだったからさっぱりモテなかったけど、今回はきっといけると思う。両親はイケメンと美女だったし、そこは期待してもいいはずだ。

 鏡で様々な角度の自分の顔を見てみた。文句のつけようがない可愛さだった。


「ウィリーくん、なんで自分の顔を見てニヤニヤしてるの?」

「だって僕は自分の顔を初めて見るからね」

「あ、そうか。記憶がないんだったね。ウィリーくんのお顔はお人形さんみたいに可愛いよっ。世界一だよっ」


 そういう風に見られていたのか。それなら女の子に生まれた方がモテたのかも。いや、男性にモテても僕はイヤだな。男の子に生まれて良かったよ。


 顔を洗い終わってキッチンの方へと行き、家族みんなで朝ご飯を食べる。

 異世界だし硬いものとか味が薄いのとかそういう料理を警戒していたけど、別にそういうことはなかった。普通に温かくて柔らかくて美味しい朝ご飯だった。


「「ごちそうさまでした」」


 姉弟で一緒に言った。

 フェリシーが僕の口の周りを綺麗に拭いてくれる。どうやら子供の身体だとパンを食べるのすら上手にできなくなるらしい。我ながらけっこうひどい食べ方をしてしまったと思う。

 人に面倒を見られるのってなんだかひさしぶりだなと思いながら、フェリシーにされるがままになった。


「よーし、ウィリーくん、かっこよくなったよー」

「ありがと、フェリシー」


「うん! じゃあ、一緒に遊ぼうか」

「二人で? お友達は?」


「みんな家のお手伝いで大変だから」

「え……」


 この街の子たちは畑仕事やら家畜の世話やらで、お昼過ぎまでは遊べないのだそうだ。


「僕ってお友達はいるの……?」

「一人いるけど、あの子はかなり変わってるからなー」


 ふわふわしている子で一日中雲を眺めていたり、ちょうちょを追いかけたりしている子なんだって。あと一人遊びが好きみたいで強い剣士ごっことかを一人でひたすらやっているらしい。


 一回会ってみたいけど、本人が気乗りしないと絶対に遊んでくれないみたいなので、その気分になるときを待とうと思う。


「ということで、今日はお姉ちゃんと遊ぼう」


 嬉しそうに手をぎゅっと握ってもらえた。愛をいっぱい感じられる手だった。

 ……あと何年間くらい僕はこうやって姉から愛をもらえるのだろうか。貴族の家の娘だから、フェリシーはすぐにお嫁に行ったりするのだろうか。


 できればフェリシーがお嫁に行く時期はなるべく遅い方が嬉しいな、と思う5歳児の弟であった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ