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冴えない僕の転生ライフ ~スキル〈認識阻害〉で成り上がる!~  作者: 天坂つばさ


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第27話 天使のような女の子

 馬車の奥に座っていた天使のような少女が立ち上がった。

 可愛らしい白いドレスを身に纏った少女だ。立ち上がるだけで神々しい光が天から降り注いだような気がした。この少女なら背中に白い翼が生えていても僕は何も驚かないと思う。


 その少女がほっぺを赤くして両手を丁寧に揃えた。


「こ、このたびは助けて頂き、ありがとうございます。こ、心から感謝いたします」


 瞳がきらっきらに輝いている。あまりにも澄みきった綺麗な輝きの瞳だったから、僕は吸い込まれるようにその少女と目を合わせてしまった。


 年齢は僕と同じか少し上だろうか。プラチナブロンドの長い髪が魅力的な本当に可愛らしい少女だった。前世から考えてもこのレベルの美少女は見たことがないよ。テレビの向こうだとしても見た記憶はなかった。


 この世界は凄いな。こんなにも美しい少女が存在するだなんて。驚いたどころじゃないよ。


「あ、あの、わたくしはソフィー・ヴァレリーと申します」


 スカートを少し持ち上げて膝をちょこんとする貴族らしい挨拶をしてくれた。


「も、もしよろしかったら、あなたのお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「え? は、はひっ」


 緊張してちょっと噛んでしまった。しっかりしろ、自分。40年生きてきてるだろ。

 僕は背筋を伸ばして父母と一緒に練習した貴族らしい挨拶をした。右足を引いて片方の肘を曲げ、ぺこりとお辞儀をする。


「僕はウィリアムと申します。ウィリアム・ストラトスです」

「まあ、ウィリアム様! すてきなお名前です」

「そ、そうですか? ははは、嬉しいです」


 まっすぐに名前を褒められると、照れるし恥ずかしいし嬉しいしで感情がごちゃごちゃになってしまうな。


「はいっ、とってもすてきなお名前ですっ」

「あなたも可愛い名前だと思いますよっ」

「うふふっ、ありがとうございますっ」


 にこりと可憐にほほえんでくれる。背景に可憐な花々が咲き誇ったようだった。


「わたくし、ずっと女神様にお祈りを捧げていたんです。どうか素敵な騎士様が、悪い人たちからわたくしを助けてくださいますようにって。そうしたらウィリアム様が急に目の前に現われたんです。ですので、きっとあなたは女神様の使いの騎士様ですねっ」


 心からそう信じ切っているようだった。


「え、えーと。どちらかというと、僕よりもパパの方が救いの騎士様って感じだと思うんですけど」


 女の子が可愛すぎる顔をぐいっと近づけてきた。世界中でウィリアム様のことしか見えてません、ってくらいに僕のことをまっすぐに見つめてくれる。


「いえっ、絶対にウィリアム様が運命の騎士様ですっ。きっとわたくしとあなたは、これから何度も何度も出会い、共に苦難を乗り越えていき、そしていつの日にか結ばれて最高の幸せを手にする。そんな運命が待っていると思います」

「は、はあ……」


 そう信じ切っているみたいだし、もうそれでいいかなって思う。きっと思い込みの激しい子なんだと思う。


 メイドさんたちがハッとしてバタバタと馬車を降りていった。ドアのところに父が来ているから慌てたんだと思う。


「も、申し訳ございません。動転しておりました。このたびは我々の命を助けてくださり、本当にありがとうございました」


 父はとても優しい感じの紳士的なスマイルで応対した。


「いえいえ、ご無事で何よりです。どなたかお怪我はございませんか?」

「おかげさまで全員無事です。あ、御者の方が放り捨てられるように馬車から降ろされてしまいまして」

「安心してください。彼ならうちの馬車で保護していますから」


 メイドさんたちがホッとしていた。

 僕は馬車の中を移動して父と会話しやすい距離に立った。


「パパ」

「ウィリー、大活躍だったね」

「パパほどじゃないよ。それよりこちらのお嬢さん、ヴァレリー家のお嬢さんだって」


 ソフィーがぴょこっと僕にくっつくように隣に立った。


「ヴァレリー卿のお嬢さん? うわぁ、可愛らしいお嬢さんだね。失礼、申し遅れました。私はエルヴィス・ストラトスと申します。以後、お見知りおきを」


 さすが父だ。挨拶が優雅でゆっくりとしていつつ、堂々としていてかっこいい。僕なんてかなりパッと終わらせちゃったよ。

 ソフィーさんが膝をちょこんとして挨拶をした。


「わたくしはソフィー・ヴァレリーと申します。ストラトス様、このたびはわたくしと従者を助けてくださり、本当にありがとうございました。心よりお礼を申し上げます」


 うわぁ、同世代とは思えないくらいにしっかりとした対応をしてる。この子……可愛いだけじゃなくて頭の凄く良い子かもしれない。父もソフィーを見て感心していた。


「うわー、ヴァレリー家は教育がしっかりしているなぁ」

「うぐっ。僕も精進します……。あの、ソフィーさんって何歳ですか?」

「こらこら、ウィリー、女性に年齢を聞くものじゃないよ?」


「大丈夫です、ストラトス様。わたくしは6歳です。あの、ウィリアム様は?」

「僕は5歳です」


 右手をパッと広げて五本指を見せた。


「今、運命を感じました」

「同い年ではなかったのに?」


「誤差の範囲です。ね、ウィリアム様」

「は、はいっ」

「これから、わたくしといっぱいいっぱい仲良くしてくださいねっ」


 甘えきった感じのスマイルをくれた。ぐあーっ、天使のスマイルだった。心臓にずきゅーんと来たよ。こんなのずるい。イヤだって絶対に言えないじゃないか。……まあぜんぜんイヤじゃないどころか、嬉しいばっかりだからいいんだけどさ。


「お友達になってくれたら、僕も嬉しいです」

「なるほど。お友達からということですね。どうぞ末永く、仲良くしてくださいませね」


 両方の手を優しく握ってもらえた。僕は両目がハートマークになってしまったかもしれない。あんまりデレデレしたらかっこわるい。でも、デレデレしてしまう。男ってそういう生き物なんだよなぁ。


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