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第2話 ウィリアム・ストラトス

 ……。…………。………………。………………あれ?

 目が覚めそうだぞ。僕って死ななかったっけ。


 あれー、何か知らない空気と風を感じている気がする。ここは病院か? 部屋に差し込む陽射しが眩しいな。


 僕は目を開けてみた。

 うお、びっくりした。まるで宝石みたいに澄みきった瞳が目の前にあったからだ。小学生低学年くらいの美少女が僕の顔を覗き込んでいる。


 その美少女の髪の色は青。見たことのない髪の色だ。その髪はやたら長くて少しウェーブがかかっているだろうか。


 お人形さんみたいな女の子、と言うにはちょっと表情が明るすぎるけど容姿は抜群に整っていると思う。こんな美少女は僕の知り合いにはいない。


「……やっと。やっとウィリーくんが起きたー!」

「……はへ?」


 変な声が出てしまった。ウィリーくんっていうのがなんのことだか分からなかったし、言っている意味は理解できたとはいえ知らない言語だったからだ。


 美少女が僕にぎゅーっと抱きつくように覆い被さってくる。どうやら僕はベッドに寝かされているらしい。


 ここはいったいどこだろうか。石造りの家の中かな……? 西洋の国の田舎っぽい空気感を不思議と感じる。横を見てみると窓が開いていて、そこから明るい陽射しが差し込んでいた。

 温かな風がカーテンを揺らしながら部屋に入ってくる。


「……どこ? ここ?」


 あ、あれ? 知らない言語の発音で喋ったぞ。しかも、ずいぶんとつたない感じの口調だった。

 僕に抱きついていた青い髪の美少女が起き上がる。そして、残念そうに表情を曇らせた。


「やっぱり記憶がないんだ。すっごい勢いで階段を転げ落ちて、何度も何度も頭を打ってたもんね……。お医者さんも記憶がなくなってると思うよーって言ってたし。本当にそうなっちゃった。えーと、ここはね、ウィリーくんのおうちだよ。私が誰だか分かる?」

「え、えと……」


「将来を約束しあった美少女の――」

「え? え? まさかあなたは僕の婚約者なの?」


「その通り! 私はなんとウィリーくんのお姉ちゃんで婚約者のフェリシー・ストラトスよ。年齢はピチピチの8歳!」


 8歳だとピチピチ過ぎて婚期はまだまだ先では……。なんてツッコミは心の中に留めておこう。だって気になることがあるから。


「あの……、姉弟は結婚できないと思うんだけど……」

「なに言ってるの。そんな法律はどこにもないのよ。姉弟は結婚できるの。いいわね?」

「う、うん……」

「よし、言質を取ったわ」


 ずいぶん難しい言葉を知っている8歳児だな。

 とりあえずこの青い髪の美少女は僕の姉にあたる人らしい。名前はフェリシー・ストラトス。ということは僕の名前は――。


「僕の名前はウィリー・ストラトス?」

「ウィリアム・ストラトスだよ。ウィリーは愛称」

「ほへー」


「なんにも覚えてないの?」

「完全に記憶喪失みたい」

「ウィリーくん、5歳なのに難しい言葉を知ってるんだね」


 僕って5歳児なんだ……。そんなに幼い姿になっているとはね……。

 ふむ……、状況を整理するに、僕は日本ではないどこかへと転生してしまったようだね。まあだからといって慌てたりはしないぞ。僕は人生が終わったら次の人生が始まるって考え方をわりと信じていたタイプだからね。


 あっ、窓の向こうのずっと遠くをドラゴンみたいな生き物が飛んでいってる。

 ドラゴンは地球にはいなかったから、察するにここは異世界なんだろう。とんでもなく遠くへと来てしまったものだと思う。


 これから僕はこのウィリアム・ストラトスという少年の身体で、新しい人生が始まるようだ。

 とりあえず姉が凄い美少女だし、勝ち組に寄っている人生かもしれないな。そこは素直に嬉しい。


 ああ……、でもよく考えたら、いつかこの姉はお嫁に行ってしまうんだな。そう考えるとかなり悲しい人生かもしれないって心の中で思ってしまった。


 僕はベッドから起き上がって立ち上がってみた。

 かなりふらつく。


「僕、どれくらい眠ってたの?」

「二日間だよ」


 そんなに眠るほどのダメージを受けていたのに、身体はどこも痛くなかった。けどまあ5歳児が二日間も眠り続けたら両親は心配だろう。元気な顔を見せに行くことにした。

 そうしたら僕はすっごい驚いた。


 なにせ僕の両親はとても若いし、それに、見たことがないほどにかっこよくて綺麗な両親だったからだ。

 しかも嬉しいことに僕はかなり愛されていることが分かった。やっぱりこれは勝ち組の人生かもしれないなって思った。


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