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冴えない僕の転生ライフ ~スキル〈認識阻害〉で成り上がる!~  作者: 天坂つばさ


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第18話 敵襲 2

 夜の敵襲は無事に治まった。母もフェリシーもレノアさんも無傷だったようだ。

 みんなの無事を確認し合ってから、母はアルフレッドさんとレノアさんに何度も何度も感謝を述べていた。


 それから改めて、アルフレッドさんが状況の確認を始める。


「なあレノア、敵はもう去ったと思うか?」

「分からないのよね。少なくともこの近辺から誰かが逃げ出す気配は一つも感じていないわ」

「ボクもそれは感じないよ」


「「アンジュは黙ってなさい」」

「えー……」


 アンジュががっかりしていた。壁際でしゃがんでいじけてしまったよ。僕はその小さな背中をぽんぽんとしてあげた。


 しかし、困ったな――。

 敵を完全に倒せていないと眠ることはできないよね。グリフォンをこの家にけしかけた連中が近くにいるはずなんだけど……。今夜のうちにちゃんと倒しておかないと、しばらく眠れない日々が続いてしまうと思う。どうにかできないものだろうか。


 レノアさんが何かを決めたように見える。


「アル、私が周囲を探ってくるわ。ここの守備をお願いできるかしら」

「それだと守備が手薄になるだろ」


 アルフレッドさんもレノアさんも少し困った様子だ。

 僕もできることなら手伝いたいけれど、守られる側だからなー。


 ……んー、姉弟だから分かるけど、姉のフェリシーが何か良いものを見つけちゃったぞって表情をしている。


「フェリシー、なんかあったの?」

「怪しい人たちを見つけたわ」

「え……?」


「お姉ちゃんのスキルって覚えてる?」

「あの白いネズミのこと?」


「そう。〈フェアリーマウス〉」

「それがどうかしたの?」


「みんなが戦っているときにね、ネズミを百匹くらい家の中とか外とかに走らせてたんだけど」

「えっ、敵に噛みつかせたりとかさせてたの?」


「攻撃はしてないわ。私、半分寝ぼけていたからネズミたちを無意味に走り回らせちゃっただけ。でもそのかいあって、変なおじさんたちを見つけられたのよね」

「フェリシー、最高の戦果だよ、それ!」


 みんなが僕らを注目した。僕が事情を説明する。するとすぐに変なおじさんたちを倒しに行こうと話が決まった。


「敵が二人だけなら私一人でじゅうぶんね」


 レノアさんが早速、外に出ようとする。


「待ってください。僕も行きます」

「ウィリー様はダメですよ。この中で一番に守られるべき存在ですから」

「いえ、将来この家を継ぐ者として、この事件の顛末を最後まで見届けたいんです。ちゃんとスキルを使って隠れていますから」


 僕はスキルをオンにした。するとレノアさんがとても驚いていた。


「まあ不思議。透明になったわけじゃないわね。気配すらまったくないわ。最初から誰もそこにいなかったような感じ」


 レノアさんにすら認識されないって凄いスキルだな。これ、将来は本格的に隠密として活躍することを検討してもいいかもしれない。


「レノア、いいんじゃないか?」

「……絶対に私の前に出ないとお約束頂けるのでしたら」


 しぶしぶと言った感じだけど了承してくれた。


 ということで二人で外に出た。僕はスキルを使っているから誰からも見えない状態だ。

 フェリシーが教えてくれた場所にはすぐにたどり着いた。近所の家の裏側だった。おそらく襲撃の結果を見やすい位置にいたんだと思う。


 怪しい中年の男性が二人だった。壁に背中をつけて待機していた。二人ともひげ面でちょっと怖い顔だ。武装していて体格が良い。戦う専門家って感じだ。


「なあ、そろそろいいんじゃないか。確認に行くか?」

「……確かに。静かになったよな」


 なんて会話が聞こえてきた。

 二人が襲撃の結果を確認しようと歩き出した瞬間だ。レノアさんとばったり対面した。二人の男は一斉に青ざめていた。


 レノアさん、静かなんだよね。静かだけど、達人の迫力がとんでもなくあるって感じだ。

 その達人の迫力を、男たちは一瞬で感じ取ったのだろう。何もやりとりをせずに、すぐに背中を向けて逃げ出していた。


 素晴らしい判断だと思う。きっと優秀な人たちだったんだろうね。ただ、相手が悪過ぎたよ。


 レノアさんが一瞬で片方の男の背中に追い付く。そして鞘に入れたままの剣を容赦なく叩きつけていた。男は強い衝撃を与えられて意識を失ったようだった。


 あっ、もう一人は足がめちゃくちゃ速い。このままだと逃げられるかもしれない。

 まあでも、僕の魔法の射程範囲内だ。


「【マジカルブリザード】!」


 逃げた男の足下を凍らせた。この魔法は父と一緒にけっこう研究をしたんだよね。だからわりと器用に使えるようになったんだ。


「うがっ、な、なんだこれっ。足が急に凍って……。ひ、ひえええええええっ!」


 足が凍って動けなくなったところに、猛烈な速度でレノアさんが迫ってきた。もうその迫力だけで、逃げた男は死を悟るくらいに恐怖してしまったようだ。


 武器を持っているのに抜きもせずに、恐怖におののいた表情を見せて気を失っていた。

 レノアさんが立ち止まり、剣を腰に戻す。


「ウィリー様? 私、前に出てはいけません、と言いましたよね?」


 僕はスキルのスイッチをオフにした。


「ギリギリ出てなかったよ」

「む……。いえ、少し出ていましたよ?」

「セーフ、セーフ。そんなことより、このおじさんたちどうするの?」


 てっきり殺すものだと思っていた。でも、二人とも意識を失っただけで、しっかり息をしているんだよね。


「とりあえず縛って動けないようにしておきます。彼らの雇い主が誰かを知らないといけませんし、他にも仲間がいるかもしれませんから情報を聞き出したいんです。なので、縛ったまま情報を吐かせる専門家に引き渡そうと思います」

「へ、へぇー……。そうなんだー……」


 なんだか怖い話になりそうなので、それ以上は聞くのをやめた。


 レノアさんと一緒に家に帰る。

 アルフレッドさんとも相談して、おじさん達はひとまずフレーズ家の倉庫に縛ったまま置いておくことになった。さらに念のため、倉庫から逃げ出さないようにアルフレッドさんが徹夜で見張ることになった。


 僕ら家族はフレーズ家のベッドで眠ることになった。うちの家はグリフォンに壊されてしまったから、ちょっと落ち着いて眠れそうにないからね。ちなみに僕はアンジュのベッドで一緒に眠ることになったよ。


 これで一件落着だ。いろいろと初めての体験だったな。

 うちはいったいなんで襲撃を受けてしまったのだろうか。どこかで恨みでも買っていたのだろうか。


 あと、忠誠を誓ってくれた騎士っていうのが、どれほど頼もしい存在なのかが身に染みてよく分かったよ。


 僕は何度も何度もフレーズ家の皆さんに感謝を伝えた。僕と母と姉を命がけで守ってくれて本当にありがとうと。

 命を張ってくれた彼らのためにも、僕はいつか出世して恩を返したいなって思ったよ。


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