よく手を握ってくる幼馴染の話(NTR)
俺、睦月ユウと──
如月アイは、小さな頃からの幼馴染だった。
小さい手を、恥ずかしげもなく握ってきて、
どこへ行くにもくっついてきて。
「ねぇねぇ、ユウくん、手ぇ繋ご?」
なんて、子供みたいなことを、何年経っても言ってくる。
いつまでも子供っぽいな、と思う。
でも──
そんなアイを、俺は心のどこかで「守ってやらなきゃ」と思っていた。
アイの笑顔は、俺にとって、何より大事なものだった。
──そんな、何でもない日常が、
永遠に続くと思っていた。
けれど──
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ある日、アイが急に体調を崩した。
「大丈夫だよ、ユウくん。先に帰ってて」
心配する俺をよそに、アイは笑ってそう言った。
──でも、どうしても不安だった俺は、
こっそり後をつけた。
そこで、見た。
見たくなかった光景を。
知らない男たちに囲まれて、
アイが、楽しそうに笑っている姿を。
俺の頭は、真っ白になった。
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影から聞こえてきた、男たちの笑い声。
「マジで信じてんのかよ、あのバカ(笑)」
「便利すぎるだろ、手繋ぎはダメだけど他はOKって(笑)」
──わからなかった。
──信じたくなかった。
アイは、何も知らない。
きっと、騙されているだけだ。
だけど──
俺は、すぐに動けなかった。
怖かった。
"あの無邪気な笑顔に、どうやって真実を突きつければいいのか"
考えただけで、吐き気がした。
そんな俺をよそに、
アイは、また知らない男たちと消えていった。
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──限界だった。
俺はとうとう、夜の公園に踏み込んだ。
暗がりの中、アイは、
男たちに囲まれて、笑っていた。
その光景が、脳裏に焼き付く。
気づけば、叫んでいた。
「アイ!!」
男たちは、うんざりした顔でアイを手放して、逃げるように去っていった。
取り残されたアイは、きょとんとした顔で俺を見上げる。
「ユウくん……どうしたの?」
──何も、わかっていない。
「アイ……あいつらに、何をされてたんだ?」
俺の声は、震えていた。
アイは、少し恥ずかしそうに笑って──
ぽつり、ぽつりと語りだす。
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「えっとね、ユウくん」
「恋人と、もっと仲良くなるためのおまじない、だって」
「だから、アイ、がんばったんだよ」
顔を真っ赤にしながら、
それでも誇らしげに、嬉しそうに──
「ちょっと恥ずかしいことも、いっぱい手伝ったの」
「でも、それも全部、ユウくんと手を繋いで、赤ちゃんを授かるためなんだよ」
アイは、ぽんぽんと自分のお腹を撫でた。
「きっと、できたと思うんだ」
「もうすぐ、ユウくんと家族になれるの」
無邪気な笑顔だった。
その言葉を聞いた瞬間、
俺の世界は、音も色も、すべてが消えた。
──あぁ、終わった。
目の前が暗くなり、
俺はその場に崩れ落ちた。
「ユウくん!? ユウくん!!」
アイの悲鳴が、遠く、霞んでいった。
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──それから。
俺は、人と触れ合うことができなくなった。
黒い手袋を外すことは、二度となかった。
以下直接的な胸糞が欲しい人への蛇足
男たちの語り:
──ったく、あんなのがいるなんてな。
最初はただの冷やかしだった。
駅前で暇そうにしてたガキをからかってみたら──こっちの言うこと、素直に信じちまってさ。
「恋人とうまくいくおまじないだよ」
「これも、仲良くなるための特別な方法」
適当なことを並べたら、あっさりやらせてくれた。
しかも、まったく疑いもせず、嬉しそうに。
笑えるよな。
こっちはお遊び感覚だっつーのに、本人は『これで好きな人と赤ちゃんできる』とか信じちゃってんだもん。
しかもさ、
一応『手繋いだら赤ちゃんできる』とかいう変な迷信だけは信じてるから、
手を握ろうとするとガチ拒否するんだよ。そのくせチンポ握るのはOKなのはマジで笑ったわ。
手はダメだけど、別のことは平気。
そんな都合のいい玩具、他にいるか?
おかげで、しばらくは楽しく遊ばせてもらった。
金も大してかからなかったしな。
「お小遣いあげるね」って言っとけば、ニコニコついてくるんだから、チョロすぎ。
あー、
でも最後の方はちょっと面倒だったな。
あいつ、腹でかくなってきてたし。
多分──いや、ほぼ確実に、誰かの子種が当たったんだろうな。
ま、俺たちには関係ねーけど。
そもそも、全部あのガキの彼氏君の責任だろ。
ちゃんと見張っとかないから、俺たちが拾っちゃっただけだし?(笑)
「悪いね、彼氏君。お前の女、ちょっと借りたわ(笑)」
「ま、ありがとさん。いい暇つぶしだったよ」
──誰かが、そう言って、笑った。
俺たちは、何も背負わない。
馬鹿な女と、それを守れなかったガキに、全部押しつけたまま。
今日も、別の女を探しに行く。